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労働時間・休日等

変形労働時間制
労働基準法は、一定の要件を満たした場合に変形労働時間制を導入・運用することを認めている。変形労働時間制を適正に運用することができれば、効率的な働き方が実現する、残業代を抑えられるなどのメリットがある。

ここでは、「1か月単位の変形労働時間制」と「1年単位の変形労働時間制」を取り上げる。

(1)1か月単位の変形労働時間制とは

1か月単位の変形労働時間制とは、1か月以内の一定の期間を平均して、週の労働時間が40時間を超えない場合は、特定の日または週に法定労働時間である1日8時間、1週40時間を超えて労働しても、時間外労働の割増賃金が発生せず、労働基準法第32条違反ともならない制度のことである。

病院、接客業、建物管理業など、シフト制で勤務している業態においては、法定労働時間を超える日または週が発生することが多いため、この変形労働時間制を導入している会社が多い。

実際の運用は、月の所定労働時間が以下の時間に収まる範囲で、あらかじめ1日、1週の所定労働時間を設定することにより行なう。
31日の月 177.1時間
30日の月 171.4時間
28日の月 160.0時間
暦日数が31日の月であれば、177.1時間に収まる場合は、特定の日、週に法定労働時間を超えて働かせたとしても、割増賃金は発生しない。

この制度を導入・運用するためには、対象月が始まる前に、1日、1週の所定労働時間が勤務シフト表などにより確定している必要がある。あらかじめ繁忙を把握できず、勤務シフトを定めることができない会社では導入する余地がない。

(2)1年単位の変形労働時間制

1年を平均して週の労働時間が40時間以下となれば、特定の月に週の労働時間が40時間を超える勤務を設定できるのが、「1年単位の変形労働時間制」である。

水産加工会社、建設会社など、1年を通じて月によって繁忙期と閑散期がある会社で広くみられる。

(3)変形労働時間制の導入手続き

1年単位の変形労働時間制を導入するためには、就業規則への規定と労使協定の締結・届出が必要となる。労働基準監督署に提出する労使協定には、「対象期間における労働日と各労働日の労働時間」を定めるとともに、年間カレンダーを添付する。

一方、1か月単位の変形労働時間制は、就業規則に規定すれば労使協定の締結・届出は不要である。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。