ビジネスわかったランド (人事・労務)

賃金制度と給与計算

給与計算事務の実務上の注意点
ここでは、給与計算事務の実務における主な注意点について説明する。

(1)固定給の変動

最初に、基本給や通勤手当などの固定給に変更があったかどうかを確認する。変更があった場合は、忘れずに反映させなければならない。

時給制のパート社員などは、「一定期間働いたので、時給を50円アップ」というように変動することがある。

固定給の変動を給与計算に正確に反映させないと、「欠勤・遅刻・早退控除」や「残業代」の計算が狂ってしまうので注意が必要である。

(2)欠勤・遅刻・早退による控除額の計算

日給、時給制のパート社員の場合は、働いた分だけ給与が支払われるので、欠勤控除を行なう必要はない。しかし月給制の場合は、欠勤した分だけ控除を行なう必要がある。

一方、遅刻・早退控除は、月給制のみならず、日給、時給制のパート社員も対象となる。

(3) 健康保険料・厚生年金保険料の控除

正社員、非正規雇用者の区分にかかわらず、健康保険・厚生年金保険に加入している従業員は、給与月額に基づいて「標準報酬月額」が設定されている。健康保険・厚生年金保険の保険料は、この標準報酬月額に各保険料率を掛けて計算する。

なお、標準報酬月額は、次の場合に上下に変動する。
  1. 毎年1回義務づけられている「定時決定」を行なったとき(結果として変動しない場合がある)
  2. 固定給の変動に伴い「随時改定」を行なったとき
標準報酬月額が変動した場合は、忘れずに変更後の標準報酬月額を給与に反映させなければならない。
注意点!
健康保険料・厚生年金保険料を給与から控除する際には、「その月の給与から控除するのは、前月分の健康保険料・厚生年金保険料」というルールがある。言い換えると、「その月分の保険料は、翌月に支払われる給与から控除する」ということになる。

(4) 雇用保険料の控除

雇用保険には、健康保険・厚生年金保険の「標準報酬月額」のようなものはなく、毎月の給与に雇用保険料率を直接乗じて雇用保険料を算出する。したがって、残業代があれば、その分だけ雇用保険料も増えるため、雇用保険料は毎月変動することがあり得る。
注意点!
労災保険料は全額が会社負担なので、従業員の給与から控除するものはない。

(5) 所得税・住民税の控除

所得税は、給与から、健康保険料・厚生年金保険料・雇用保険料を控除した後の金額を「源泉徴収税額表」に当てはめて計算する。

住民税は、毎年5月に従業員が居住する市区町村より送付される「特別徴収税額の決定通知書」に、その年の6月~翌年5月までの給与から控除する住民税額が記載されている。その通知書に従って、毎月の住民税を給与から控除する。

(6) 計算完了後の見直し

すべての給与計算事務が完了した後、確認を行なうことは非常に重要である。可能であれば、給与計算事務の直接の担当者とは別の人が確認・見直し業務を行なうのが望ましい。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。