ビジネスわかったランド (人事・労務)

休職

復職の判断(その3)

(1)復職できず退職する場合の傷病手当金

傷病により休職している従業員は、会社から賃金が支給されない期間については、加入している健康保険から傷病手当金を受給できる。

ここで問題となるのは、休職中の従業員が、傷病が治癒せず(復職できず)に退職する場合の傷病手当金の扱いである。

退職しても、健康保険の資格を喪失する日の前日までに継続して1年以上、被保険者であった者は、資格を喪失したときに現に受けていた傷病手当金を引き続き受給できる。

傷病手当金は、最長1年6か月間にわたって支給されるので、この期間から被保険者である間に支給を受けた分を除いた残りの期間分が支給される。

(2)復職できずに退職した場合の失業手当

失業手当は、就労可能な者が求職活動中に受ける給付であるため、療養中であり就労不能な場合は受給できない。

(3)失業手当の受給期間の延長

失業手当を受給できる期間は、原則として、離職した日の翌日から1年間となる。ただし、その間に病気、けが等の理由により引き続き30日以上働けなくなったときは、その働けない日数だけ、受給期間を延長できる。この延長できる期間は、最長で3年間である。

この措置を受けようとする場合には、病気、怪我等により引き続き30日以上職業に就けなくなった日の翌日から延長後の受給期間の最後の日までの間に、住所または居所を管轄するハローワークに届け出なければならない(代理人または郵送でも手続きが可能)。
但し、受給期間内であっても、延長の申請が遅く受給期間の残存期間が所定給付日数に満たない場合は所定給付日数の全てを受給できない可能性がある事に注意が必要である。

したがって、人事担当者は、復職できずに退職する者に対して、将来、失業手当を受給する意思がある場合は、期間内に延長手続きが必要になる旨を伝えておくとよい。

(4)休職制度運用のまとめ

    従業員が休職事由に該当    
 
         
    従業員が会社に「休職願」を提出 従業員に休職を勧める
         
休職を認めない

前回の休職期間が通算されるため要件を満たさない場合や、証明書類に不備がある場合等

会社が休職の可否を判断      
       
休職を認め、休職期間中の取扱いを決める     従業員が休職を拒否
     
従業員に「休職発令書」を交付    
   
   
休職期間開始

会社が健康保険に対して「傷病手当金」の請求手続きを開始

               
休職期間中

定期的に従業員に近況を報告させる

           
    復職できず退職 休職期間満了      
         
        従業員が会社に「復職願」を提出

実際には、休職期間満了の2週間~1か月前までには、「休職願」を提出させる必要がある

   
         
             
        会社が復職の可否を判断

産業医の意見聴取、主治医への照会

     
             
  復職可能とは認められない   会社が従業員に「復職発令書」を交付      
             
休職可能な残余期間があれば休職を継続・延長   復職      

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。