ビジネスわかったランド (人事・労務)

入社・試用

試用期間中の社会保険の適用等

(1)試用期間中の社会保険の適用

会社によっては、たとえば3か月間の試用期間中は健康保険と厚生年金保険に加入させず、試用期間満了後、本採用が決定した時点で加入させるという運用を行なっているケースがある。

結論からいうと、このような運用は違法となる。会社は、試用期間の有無に関係なく、健康保険の被保険者資格を満たす者については健康保険と厚生年金保険に加入させる義務がある。雇用保険についても同様である。

したがって、入社した日(本採用された日ではない)から社会保険に加入させなければならない。

(2)試用期間中の特約

試用期間中について、特約を設ける会社もある。たとえば、次のような特約が考えられる。

・試用期間中は特定の手当は支給されず、本採用後に支給が開始される
・試用期間中は業務成績に基づくインセンティブは支給されない
・試用期間中は持ち株会には加入できない

このような特約を設ける場合は、就業規則等に規定しておくとともに、従業員を採用する際に十分に説明しておくことが必要である。

なお、ハローワーク等で求人を行なう際に、試用期間中と本採用後で給与月額が異なる場合は、両方の金額の明示を求められることに注意する。

(3)年次有給休暇の算定に使用する勤続年数

年次有給休暇を付与する場合には、入社後6か月経過時点で10日、1年6か月経過時点で11日……というように、入社後の勤続年数に基づいて算定する。

試用期間は、この勤続年数に算入しなければならない。したがって、試用、研修、本採用などの種別を問わず、入社日を起算日として勤続年数を計算し、年次有給休暇を付与する必要がある。

なお、これは育児休業、介護休業等の法律で取得が保護されている休暇についても同様である。たとえば、会社は「入社1年以上」という要件を満たさない者からの育児休業取得の申し出を拒否できるが、試用期間は勤続年数に含まれる。
注意点!
法律に定めのない任意の制度を設ける場合は、試用期間を勤続年数に含めるか否かは会社に委ねられている。たとえば、次のようなケースが挙げられる。

・退職金の計算に使用する勤続年数に試用期間を含めるか
・慶弔休暇、慶弔見舞金の対象要件に勤続年数がある場合、試用期間を含めるか・病気休職制度を試用期間中の者にも適用するか、休職可能期間の算定において試用期間を含めるか

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。