ビジネスわかったランド (人事・労務)

賃金制度と給与計算

給与計算事務の基本
給与計算事務は、会社が従業員に対して支払う賃金を計算する事務であり、スケジュール管理が非常に重要となる。

(1)給与計算事務のスケジュール

給与は、「賃金支払いの5原則」に基づいて、毎月1回以上、一定の期日に支払わなければならない。たとえば給与支給日が休日に当たる場合は、休日の前後の平日に支給することになる。前後のいずれとするかは、会社の判断に委ねられているが、大半の会社は休日の前日に前倒しで支給している。

休日の前日としている会社では、本来の支給日が休日や祝日に当たるときは、給与計算事務のスケジュールがタイトになるため、通常月より早めに準備をしておかなければならない。

また、非正規雇用者に対して、日払い、週払いで給与を支給する場合は、支給日が次々とやってくるため、給与計算事務もスピード勝負となる。

以下のようなフローチャートを作成し、前倒しできる作業は早めに終わらせておくことも、給与計算事務をスムーズにこなすコツといえる。

給与の締切日

・昇給・降給、家族手当・住宅手当の増減など、固定給の変動があったか?
・引越し等で通勤手当が変わった従業員はいるか?
・変更後の金額が間違いなく反映されているか?

欠勤・遅刻・早退によりマイナスする金額を計算する

時間外・休日・深夜労働時間数をもとに割増賃金を計算する

健康保険料・厚生年金保険料を正しく控除しているか?(健康保険・厚生年金保険に加入している従業員のみ)
雇用保険料を正しく控除しているか?(雇用保険に加入している従業員のみ)

退職者の給与計算に間違いはないか?
(特に、健康保険料・厚生年金保険料の控除に注意する)

所得税・住民税を控除する

計算完了後、見直しを行なう → 給与計算完了 → 振込み

(2)給与計算事務のリミット

給与を現金(手渡し)で支払っているのであれば、給与計算事務は支給日当日までに終えていれば問題はない。

しかし、銀行振込みの場合には、支給日の午前10時頃までに引出しが可能となっている必要がある。したがって、銀行振込みを選択している場合は、この時間までに給与計算・振込み作業を終えていなければならない。

また、従業員に対しては給与明細を交付する必要がある。振り込まれた金額だけでは、社会保険料、所得税、住民税等がいくら控除されたかが不明である。したがって、給与計算のスケジュールを立てる際には、給与明細を作成し、従業員各人へ渡すために必要な時間も考慮する必要がある。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。