ビジネスわかったランド (人事・労務)

降格・懲戒処分

各懲戒事由と処分の目安
会社が懲戒処分を行なううえで問題となるのが、「どんな(どれほどの)違反行為が、どの処分に該当するのか」ということである。

この点について、無断欠勤や業務上横領、業務命令違反など懲戒事由は多々あるが、この懲戒事由ならこの処分になる、というような「公式」はない。

たとえば、2週間以上の無断欠勤の場合、懲戒解雇処分を下す会社が大半だが、懲戒解雇よりも軽い処分とする会社もある。

同じ2週間以上の無断欠勤でも、その欠勤理由に考慮すべき事情がある場合や、本人の改悛や改善の意思が顕著と判断されれば、雇用の継続を前提とした懲戒処分も十分にあり得るだろう。

以下では、裁判例や一般的な懲戒処分規定をふまえて、懲戒事由と処分の目安をまとめた。
主な懲戒事由 懲戒処分の目安等
経歴詐称
(学歴や職歴、犯罪歴の詐称等)
判例は、採否の決定や労使関係に重大な影響を及ぼす場合には、懲戒解雇の事由となることを認めている。
職務懈怠
(無断欠勤、遅刻等)
無断欠勤が2週間以上に及ぶものは、解雇予告除外認定理由に該当することもあり、懲戒解雇としている会社が多い。これ以外の職務懈怠については、比較的軽微な処分が一般的といえる。
業務命令違反
(配転、出張、残業等命令違反)
会社の規模や組織にもよるが、配転命令違反については、会社秩序維持のため厳しい処分を課すところも多い。ただし、家庭の事情や労働契約締結時の特約など考慮すべき点は少なくない。また、残業等命令違反については、厳重注意に留めるケースが多い。
業務妨害
(職務中の政治活動等)
憲法上の表現の自由との兼ね合いもあるが、その行為によって、会社秩序をどの程度乱したかにより判断される。
職場規律違反
(業務上横領、背任、暴行等)
業務上横領は、その金額や事情を考慮しての判断となる。会社の金銭が関係する行為なので、懲戒解雇が比較的多い。暴行もその性質上、比較的重い処分が一般的である。
地位・身分に伴う規則違反
(兼業、二重就職等)
兼業禁止規定を設けている会社は、比較的厳しい処分とするところが多い。ただし、本人の生活や経済事情等を考慮しての判断となるのが一般的である。
誠実義務違反
(機密漏洩、従業員引き抜き等)
機密漏洩やデータ改ざんは、会社の屋台骨を揺るがしかねないため、懲戒解雇も比較的多い。従業員等に対する損害賠償請求にまで発展するケースもある。
私生活上の非行
(会社の名誉・信用の毀損等)
原則として、私生活上の非行は懲戒処分の対象から除かれるが、勤務先として会社名が公になるなど、会社の名誉等を著しく毀損した場合には、懲戒処分の対象とする傾向にある。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。