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健康診断

定期健康診断の実施時期と海外派遣者の健康診断
会社は、毎年行なう定期健康診断の実施時期を必ずしも特定する必要はない。しかし、年1回という要件を満たすためには、実務上、ある程度特定する必要がある。また、従業員を海外へ派遣する場合は、海外派遣者の健康診断を受けさせなければならない。

(1)定期健康診断の実施時期

定期健康診断は、年に1回実施することが義務づけられている。この年1回とは、実施した日から起算して年1回ということを意味する。したがって、この要件を満たすためには、実施時期をある程度特定する必要がある。

たとえば、当年の4月に実施した場合で、翌年の実施予定を10月とすると、実質的に1年6か月の期間が生じてしまう。そのため、当年の4月に実施したのであれば、翌年も同じく4月に実施するなど、なるべく時期を特定して運用すべきだろう。

なお、雇入れ時の健康診断を実施した場合は、その実施した日から1年間に限り、定期健康診断の受診を省略できる(雇入れ時の健康診断の検査項目に相当する項目)。
注意点!
入社後すぐに定期健康診断が実施される場合であっても、雇入れ時の健康診断を省略することはできない。したがって、従業員を採用した場合には、必ず雇入れ時の健康診断を実施するか、入社日前3か月以内に受診した健康診断の結果報告書の提出を求める必要がある。

(2)海外派遣者の健康診断

会社が従業員を海外に派遣する場合には、労働安全衛生規則第45条の2により、海外派遣者に対する健康診断の実施義務が生じる。

具体的には、海外に6か月以上派遣される従業員を対象として、派遣前と帰国後に健康診断を行なわなければならない。

海外派遣者の健康診断には、次の事項を判断する目的がある。
  1. 派遣前は、対象者が海外に渡航できる健康状態を保持しているか
  2. 帰国後は、在留中に派遣地域特有の感染症等に罹患していないか
国内とは異なり、海外は特殊な状況(労働環境)にあるといえる。

持病を抱えている従業員の場合、海外では適切な治療を受けられず、病状が悪化する可能性もある。慣れない海外での生活は、精神面で大きな負担となり、海外派遣の途中や帰国後にメンタル系の病気に罹患することもある。

また、海外在留中に感染症等に罹患した場合は、国内で感染被害が拡大するおそれもある。

そうしたことから、労働安全衛生法は、本来の定期健康診断とは別に、海外派遣者を対象とした健康診断の実施を義務づけている。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。