ビジネスわかったランド (人事・労務)
残業代問題
残業の申請・承認制
残業の申請・承認制は、適正に運用することができれば、不要な残業を抑制する効果が期待できる。
参考として、以下に残業申請書と承認・不承認を通知する書面サンプルを紹介する。
残業の申請・承認制
残業の申請・承認制とは、従業員が残業をする場合は必ず会社に申請し、承認を得なければ残業を認めないという制度である。
従業員
残業の申請→ ←残業の承認
会社
→
適正な残業と認め、残業代を支払う
従業員
残業の申請→ ←承認せず
会社
→
残業を認めず、したがって残業代も発生しない
「不要な残業・無駄な残業をなくすことができる」「会社として残業をコントロールできる」といった点を考慮し、この制度を導入している会社も多い。的確に運用できれば効果的な制度といえる。
しかし、次のようなデメリットを考慮する必要もある。
しかし、次のようなデメリットを考慮する必要もある。
- 「事前承認制」とした場合、従業員から残業申請があった都度、本当に必要な残業か否かを会社(上司)が判断しなければならない。また、結果として「事前承認制」を運用できず、「事後承認制」とした場合は、すでに行なった残業を否定することは難しく、「申請・承認制」が形骸化してしまう可能性がある。
- 残業を承認しない場合であっても、残業なしでは処理不可能な業務を任せているような場合は、「黙示の残業命令がある」とみなされ、結果としてサービス残業が発生していることがある。
- タイムカードによる時間管理は、あくまでも入退場記録である。残業時間は「申請・承認制」により算出するとしている場合には、制度の仕組みを明確に定め、その方法を例外なく遵守・運用しなければならず、社内の認識の統一、管理者の研修等の周到な準備が必要である。
所定労働時間帯
残業時間
↑
従業員 | 残業申請届、残業申請簿 |
→
|
会社 |
←
|
承認または不承認とその理由 |
●決めるべき点
- 何時までに申請をさせるか?
- 承認権限をもつ者が現場にいない場合の対応は? 代理権限をもつ者を設定するか?
- 承認と不承認の基準は?
- やむを得ず事前の承認が得られない場合の対応は?
残業申請書 | |||
従業員氏名 | ○○太郎 | ||
所属部門 | システム開発部 | 承認権限者 | ○○課長 |
残業の種類 | 1. 就業時刻後(深夜含む) 2. 就業時刻前 3. 休日 | ||
申請日 | ○年4月10日 | ||
申請時間 | 18時00分~19時00分まで | ||
業務内容 | ○○社の○○システムのテストと問題点の把握 | ||
残業を申請する具体的理由 | 明日10時に発注者の○○社と打ち合わせを行なうにあたって、事前にテストランにより問題点を把握し、打ち合わせに活かしたい。 | ||
上記のとおり、残業を申請いたします。
○○太郎 印 |
|||
残業通知書 | |||
上記申請を 1. 承認 2. 不承認 する旨を通知します。 | |||
不承認の場合の理由 | |||
累積残業時間(法定労働時間超の時間外労働) | 18時間 | ||
上記のとおり、残業を承認いたします。
システム開発部課長 ○○三郎 印 |
書式ダウンロード
著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)
※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。
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