ビジネスわかったランド (人事・労務)

賃下げ・降格等

従業員から同意を得る方法
賃下げ・降格が問題となるのは、強圧的に同意を迫るという不法行為にもつながりかねない行為は論外として、従業員の同意が得られないままに強行して労使紛争が生じてしまった場合である。会社としては、いかに説明を尽くし、代償措置等を提示して従業員の同意を得ていくかが最大のポイントとなる。

(1)従業員の同意を得る形式

従業員から同意を得る形式には特に決まりはなく、口頭、書面、電子メール等のいずれでも問題はないが、後日の紛争回避のためには書面が鉄則である。

具体的には、書面で従業員本人の署名・捺印を徴求することである。労働条件の不利益変更が、すべて訴訟をはじめとする民事上のトラブルに発展するわけではないが、最悪の事態に備えておきたい。

同意を得るにあたっては説明会を開くなど、丁寧な説明を行なうことが望ましい。

(2)代償措置としての調整給とは

給与制度変更の影響で給与額が低下する従業員に対し、変更前の金額を保証する目的で経過措置として一定期間、調整給を支給することがある。

この調整給は、労働条件の不利益変更に対する代償措置といえ、期間は個々のケースによって異なる。

従業員に対する不利益を緩和するという意味では、比較的長い経過期間を設けて調整していくべきだが、あまりに長い経過期間を設けてしまうと、新しい給与制度の運用に支障をきたす事態も懸念される。

経過期間は、一般に2~5年程度とされているが、明確な基準はない。給与の減額幅が大きく関わってくるので、一概に期間の長さだけで判断できないからである。不利益の程度が大きければ、それだけ長い期間が必要となる。

たとえば、3年という長さは、経過措置の期間としては十分な印象もあるが、減額幅が大きい場合や新制度の内容によっては適当とみなされないこともある。

大切なのは、経過期間を設定する前に、対象となる従業員と話合い(交渉)を行なうことである。

代償措置とはいえ、労働条件の不利益変更に関わることであるから、一方的に会社が判断するのではなく、従業員の意見も聞き入れたうえで、妥当な期間設定を行なうことが望ましい。

また、経過期間には、新制度の目的や内容を理解してもらうための猶予期間という意味合いもある。したがって、新制度について理解を深めるため、経過期間中も従業員との話合いの機会を設けるとよいだろう。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。