ビジネスわかったランド (人事・労務)

入社・試用

試用期間の意味と法的性質

(1)試用期間とは

試用期間とは、新たに採用した従業員の勤務態度、業務適性、人間性を観察し、本採用(正式採用)とするかどうかを会社が判断するために設ける期間のことである。

会社は、従業員の採用選考時に可能な限り採否の判断材料を集める。しかし、短い選考期間の中では限界があり、実際の仕事ぶりを観察しないと判断できない要素も少なくない。そのため、会社にとって試用期間は非常に重要である。

(2)試用期間の長さ

試用期間について、その取扱いを明確に定めた法律はない。試用期間を設けるか否か、またその期間をどうするかなどは、会社によってさまざまである。

ただし、従業員本人にとって試用期間中の立場は不安定で、あまりにも長すぎる期間は民法第90条の公序良俗に反して無効となる。したがって、実務上は3か月~6か月としておくのが妥当である。

(3)試用期間の法的性質

試用期間の法的性質は、「解約権を留保した労働契約」と解されている。会社は、試用期間中に従業員を観察し、本採用することがふさわしくないと判断した場合には、試用期間中の解雇または試用期間満了後の本採用拒否(=解雇)を行なうことになる。
会社
試用期間解約権留保付労働契約
従業員
試用採用した従業員が本採用にふさわしくないと判断した場合、会社は解約権を行使(試用期間中の解雇、試用期間満了後の本採用拒否)
試用期間が満了して、本採用されるということは、解約権の留保が取り外されることを意味している。

解約権の行使は労働法上は「解雇」に該当するため、労働契約法第16条の「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」という規定の適用を受ける。

ただし、試用期間中の解雇は、本採用後の解雇よりも会社の裁量の幅が広いものと解釈されている。
注意点!
試用期間中の解雇または試用期間満了後の本採用拒否は、会社側の裁量の幅が広いとはいっても、労働法上の解雇に該当し、労使紛争が生じる可能性がある。そのことを危惧し、最初の3か月間を有期労働契約とし、問題なければ当該契約期間満了後、正社員として採用するとしている会社もある。

これは、問題がある従業員については、最初の3か月が満了した時点で更新しなければ、解雇の問題も生じないだろう、という考え方に基づく。

しかし、3か月の有期労働契約の実態が、あくまでも当該従業員の適性を評価・判断することが目的の場合は、契約期間=試用期間とみなされ、期間満了後の本採用拒否、すなわち解雇という問題が生じる可能性がある。したがって、このような運用を安易に行なうべきではない。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。