ビジネスわかったランド (人事・労務)

服務規律・ハラスメント防止

セクシュアル・ハラスメント

(1)セクシュアル・ハラスメントとは

男女雇用機会均等法(正式名称は「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」)第11条では、会社に対し、セクシュアル・ハラスメント(以下、「セクハラ」といいます)の問題に関して必要な措置を講じなければならない、としている。

セクハラとは、「職場で行なわれる性的な言動に対する労働者の対応により、その労働者が労働条件につき不利益を受け、またはその労働者の就業環境が害されること」と定義されている。

労働者とは、事業主が雇用するすべての労働者を指し、パート従業員、契約社員などの非正規労働者も当然含まれる。

セクハラの加害者は男性、被害者は女性というケースが圧倒的に多いと思われているが、男性側が被害者になることもある。男女いずれにも起こり得るものであるという点は押さえておくべきであろう。

(2)セクハラの構成要件

よく問題になるのは、「どのような行為・言動がセクハラとなるのか」ということである。この点について、セクハラの構成要件を整理すると次のようになる。

「職場で」
「性的な言動があり」
「それが相手の意に反していて」
「労働条件について不利益を受けたり就業環境が害されること」

● 「職場」とは

ここでいう職場とは、従業員が業務を遂行する場所を指す。通常就業している場所以外であっても、従業員が業務を遂行する場所であれば職場に含まれる。したがって、喫茶店(打合せ)、車中(移動)、訪問先、出張先、得意先接待の場なども、この職場に含まれることに注意が必要である。


● 「性的な言動」とは

性的な言動とは、性的な内容の発言と性的な行動を指す。具体的には次のとおりである。
  1. 直接相手に向けられるもの
    しつこく交際を迫る、必要もなく身体に触れるなど
  2. 間接的なもの
    性的な噂を流すなど
  3. 不特定多数に向けられるもの
    職場にヌードポスターを貼る、わいせつな図画を配布するなど
●「相手の意に反する」とは

相手(被害者)が拒否の意思を示している場合を指す。性的な言動があっても合意のうえであれば違法性はないので、セクハラと認められるためには、相手(被害者)が拒否の意思を示していることが必要である。

しかし、会社という力関係がはっきりしている環境下においては、自分より強い立場の者の行為に対して、誰もが明確な拒否の意思を示せるかというと、疑問が残る。したがって、拒否の意思が示されなければ「相手の意に反していない」と安易に考えることは避けなければならない。


●「労働条件の不利益と就業環境が害される」とは

「労働条件について不利益を受ける」とは、性的言動に対する従業員の対応(拒否、抵抗等)がきっかけとなって解雇や配置転換、降格、昇給停止等の不利益な取扱いが行なわれることを指す。これを「対価型セクハラ」と呼ぶ。

「就業環境が害される」とは、性的な言動で就業環境が不快なものとなり、業務の遂行に重大な悪影響が生じるなど、その従業員が就業するうえで見過ごせない程度の支障が生じることを指す。これを「環境型セクハラ」と呼ぶ。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。