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健康診断

健康診断費用の負担と賃金の支払い
健康診断に関する費用は、原則として会社負担とされている。なお、健康診断の受診に要する時間分の賃金を支払うか否かは、各会社に委ねられている。ただし、特殊健康診断の受診に要する時間については、賃金の支払いが義務となる。

(1)健康診断費用の負担者

労働安全衛生法は、会社に健康診断の実施を義務づけているが、ここで問題となるのは、「誰が健康診断の費用を負担するのか」という点である。

実際、労働安全衛生法第66条1項~4項では健康診断の実施を義務づけてはいるが、その費用を誰が負担するかについて、法律の定めはない。

この点で行政解釈(昭和47年9月18日基発第602号)は、「労働安全衛生法第66条1項から4項までの規定により実施される健康診断の費用については、法で事業者に健康診断の実施の義務を課している以上、当然、事業者が負担すべきものである」としている。

したがって、労働安全衛生法が会社に健康診断の実施義務を課している以上、その費用は原則として会社が負担しなければならない。
注意点!
従業員が、労働安全衛生法で義務づけられた範囲を超える健康診断(検査項目)を希望した場合には、その上回る分の費用まで会社が負担する必要はない。

会社が負担すべき費用の範囲は、労働安全衛生法で義務づけられた検査項目となる。また、健康診断の結果、再検査の必要が生じた場合、会社は再検査の費用を負担すべき義務はない。

(2)健康診断の受診時間に対する賃金

健康診断の受診に要する時間分の賃金を支払うか否かという点については、一般健康診断と特殊健康診断とに分けて考えることになる。

まず、定期健康診断などの一般健康診断は、業務との関連性というより一般的な健康状態を確認することが目的である。そのため、健康診断の受診に要した時間についての賃金の支払いは、原則として労使に委ねられている。

なお、「定期健康診断の受診は所定休日または所定時間外で行なうこと」と定めても問題はない。

一方、特殊健康診断は、一定の有害業務(高圧室内業務等)に従事する者が対象で、業務との関連性が非常に強いものであるから、その受診時間についても賃金の支払義務が生じる。特殊健康診断を所定時間外や休日に実施すれば、当然、割増賃金の支払義務も生じる。

なお、健康診断の費用や受診時間の賃金は、法律の解釈等にとらわれることなく、会社が支払うとしているのが一般的である。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。