ビジネスわかったランド (人事・労務)

賃金制度と給与計算

年俸制の種類
実際の年俸制は会社によってさまざまだが、大きく次の2つに分けることができる。

(1)完全年俸型
(2)基本年俸・業績年俸分離型

(1)は年俸額として全額を決定する方法、(2)は年俸額を基本部分と業績部分に分けて決定する方法である。

具体的な評価方法や計算方法は会社によって異なるが、シンプルに考えると、年俸を基本部分だけで構成するのか、基本部分と業績部分で構成するのかで区別される。

(1)完全年俸型

年俸額を1年間の基本額として確定する方法で、最も基本的なタイプである。一般的には、年度初めに、基本給、賞与等をすべて含めた金額を対象者ごとに決定し、年俸額を12分割して、毎月の賃金として支給する。

原則として、向こう1年間の報酬額が固定されるので、前年度の実績だけでなく当年度の期待料まで含めるのかなど、その評価方法を十分に考慮する必要がある。

なお、賃金部分と賞与部分を分けて支給することもある。これは従業員の生活設計を考慮したもので、支払時期を別にすることを主な目的としている。

住宅ローンのボーナス時返済がある従業員に対して、年俸の全額を賃金として支給するのか、賃金と賞与に分割して支給するのかを選択させる会社もある。

(2)基本年俸・業績年俸分離型

基本年俸を固定部分、業績年俸を個人の成績や会社の業績に応じて変動する部分とする方法である。

完全年俸型では、原則として、基本的に途中で報酬額を変更することはできない。この分離型であれば、個人の成績や会社の業績に応じて、業績年俸部分を変動させることができる。

具体的には、年俸額をあらかじめ確定している基本年俸と、業績等により変動する業績年俸に分けて支給する。業績年俸部分は、個人の成績や会社の業績により変動するので、結果として、全体の年俸総額も変動する。

(3) 年俸制における評価制度

年俸制は、他の賃金制度と異なり、賃金の変動額が比較的大きい。特に、業績評価部分のウエイトが高い場合には、大幅な減額となる可能性もある。この場合、会社が一方的に設定した評価制度だけでは、従業員の納得が得られないことも考えられる。

年俸制を運用していくうえでは、個人の業績や貢献度への評価を重視することになるが、評価基準が個人的なものに偏ることのマイナス面も考える必要があるだろう。評価制度については、客観性の高いものを整備しておくことが大切である。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。