ビジネスわかったランド (人事・労務)

降格・懲戒処分

懲戒処分の種類と内容-その2
懲戒処分の種類は、一般的には次の5種類がある。
(1) けん責
(2) 減給
(3) 出勤停止
(4) 降格
(5) 懲戒解雇
以下では、懲戒処分の中でも重い処分に分類される「出勤停止」「降格」「懲戒解雇」について説明する(「けん責」「減給」については前項を参照)。

(3)出勤停止

出勤停止とは、文字どおり、一定期間の就労(出勤)を禁止する処分である。出勤を停止させる期間(長さ)について労働基準法上の制限はないが、通常は7~10日程度である。さらに、処分に弾力性をもたせるために「○日以内」としているケースが一般的である。

なお、ノーワークノーペイの原則から、これらの出勤停止期間については、労務を提供していないため、会社側に賃金を支払う義務は生じない。

(4)降格

降格には、人事評価や職務能力の見直し、配置転換等、人事権の行使としての降格だけでなく、懲戒処分として行なうものもある。

降格は、役職や資格などを下げるので、必然的に賃金と連動することが多い。

ここで問題となるのが、降格処分により役職手当などが下がる(賃金が低下する)ことが、労働基準法第91条の減給の制限に抵触しないか、という点である。

判例では、降格により賃金が低下することは原則として減給の制裁には該当せず、労働基準法第91条の制限を受けないとされている。

ただし、業務の内容に変更がなく、賃金額だけを低下させる降格処分は、将来に向けての継続的な減給措置と解釈される可能性がある。そのため、懲戒処分として降格を設定するのであれば、あらかじめ資格制度や等級制度を整備しておく必要がある。

(5)懲戒解雇

懲戒解雇は、懲戒処分の中での最高罰であり、他の懲戒処分とは異なり、労働契約の解消を前提としている。

懲戒解雇は、当該従業員を会社から排除しなければ会社秩序を維持できないような場合に、初めて適用を検討するものであるため、懲戒処分の有効要件は他の処分よりも厳格に判断される。

なお、日本の会社の多くは、懲戒解雇のほかに「諭旨解雇」を設けている。

諭旨解雇も懲戒解雇と同じく、懲戒処分の一環として労働契約の解消を求めるものであるが、一般的には、本人の経歴に傷がつくのを防いだり、金銭的な保護(退職金の一部支給など)を目的として利用(適用)される。

とはいえ、労働契約の解消を伴う懲戒処分には変わりはないので、処分の決定には慎重な判断が求められる。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。