ビジネスわかったランド (人事・労務)

服務規律・ハラスメント防止

別規程化が適した事項とマニュアルの作成

(1)就業規則とは別の規程で管理したほうがよいもの

賃金や育児休業など、複雑で重要度が高いものについては、管理のしやすさという面も含めて、就業規則ではなく別規程で定めている会社が多い。

同じように、服務規律に関しても、その重要度や管理面を考えて、個人情報保護、セクシュアル・ハラスメント等の項目ごとに、別規程を作成する方法がある。

また、一般常識として捉えられている服装や身だしなみについても、営業職をはじめ顧客と接する機会が多い職種においては別規程化することが考えられる。根拠となる規程をもつことで、従業員に対してより説得力のある教育・指導を行なうことが可能になるだろう。その都度、就業規則の該当する条文を探す手間も省略できる。

(2)服務規程とは別にマニュアルを作成する

服務規程とは別に、業務マニュアルや作業手引きを作成する会社も少なくない。

マニュアルを作成する最大の目的は、一つひとつの作業をワークフロー化して、作業の効率化・合理化を図ることにある。これにより、作業ノウハウが明らかになり、熟練者など特定の者にしかできなかった作業を共有できるようになる。

そのほか、作業手順を洗い出すことで問題点や改善点を明らかにできるメリットもある。

服務規律についても、この作業マニュアルの考え方を応用するとよい。とかく規程というものは具体性に欠ける傾向にあり、法的根拠や権利義務を定めた就業規則を周知するだけでは、実際の労務管理は難しい。

特に、服務規律は従業員の行動規範を定めたものであり、実際に行動する従業員がその内容を把握できなければ意味がなくなってしまう。抽象的な条文内容を具体化したマニュアルやガイドがあれば、従業員の理解が深まり、会社も教育や指導がしやすくなるだろう。

社内通達による方法もあるが、就業規則のように形式的で硬い文章表現になりがちなので、従業員の理解を優先するのであれば、マニュアルやガイドのほうが効果的である。

作成すべきマニュアル・ガイドとしては、次のようなものが挙げられる。

【一般的な遵守事項】
・備品等管理マニュアル
・顧客対応に関する手引き
・施設等利用マニュアル など

【別条文・別規程】
・顧客情報管理マニュアル
・電子メール利用ガイド
・インターネット利用ガイド など

マニュアルやガイドは、就業規則と同様に従業員に周知する。周知の方法は、社内での掲示、社内ポータルサイト上での閲覧など、さまざまなものがある。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。