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降格・懲戒処分

懲戒処分の種類と内容-その1
懲戒処分の種類は、処分程度の軽い順から列挙されることが多い。一般的には、次の5種類がある。
(1) けん責
(2) 減給
(3) 出勤停止
(4) 降格
(5) 懲戒解雇
なお、労働基準法では、減給の制裁について制限を設けている以外、懲戒処分の内容に関して何ら制限を設けてはいない。

したがって、労働契約法第15条を根拠とする懲戒処分の有効要件を考慮する必要はあるが、基本的には会社が自由に処分内容を決めることができる。

以下では、懲戒処分の中では軽い処分に分類される「けん責」と「減給」について説明する(「出勤停止」「降格」「懲戒解雇」については次項を参照)。

(1)けん責

けん責は、懲戒処分の中では最も軽い処分として考えられている。けん責処分は、始末書の提出を義務づけて、将来を戒めるという内容が一般的となる。この場合、本人に対して、文書でけん責処分の通知を行なうことになる。 会社によっては、けん責よりも軽い処分として「戒告」を置く場合もある。戒告は、けん責とは異なり、通常は始末書の提出を義務づけないものである。
注意点!
会社が懲戒処分を行なう際、対象者に書面で通知すべき法的な義務はない。しかし、どのような理由で、また就業規則のどの条文を根拠として、懲戒処分が行なわれたのかを明らかにするために、書面通知は必須と認識したほうがよい。この書面が、後日労使紛争が生じた場合に、事実関係を証明する重要な証拠となる。
書面で通知する際の記載例は次のとおりである。

懲戒処分通知書

○○太郎 殿

就業規則第○条の定めにより、次のとおり懲戒処分を決定したことを通知します。
  1. 懲戒処分
    けん責
  2. 懲戒事由
    ○年○月○日~○月○日の間に○回の無断欠勤をし、○年○月○日、○月○日、○月○日~○月○日、○月○日にわたる計6回の注意を受けたにもかかわらず、まったく反省の態度と改善の努力が認められないため。
  3. 処分内容
    始末書を作成のうえ、○年○月○日午後2時までに、総務部長○○○○まで提出しなければならない。

○○○株式会社
総務部長○○○○

(2)減給

減給とは、従業員に支払う賃金から一定額を差し引くという処分である。

減給は、従業員の重要な権利である賃金請求権の一部を消滅させてしまうものなので、労働基準法第91条で一定の制限が設けられている。

具体的には、減給処分は1回の金額が1日分の平均賃金の2分の1を超えてはならず、さらに、1賃金支払期の減給処分の総額は賃金総額の10分の1以内としなければならない。

たとえば、1日分の平均賃金が1万円であれば、1回の減給額は5千円以内となる。さらに、月給が30万円であれば、その賃金計算期間内に複数回の減給処分を課したとしても、総額が3万円を超えてはならない。
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著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。