ビジネスわかったランド (人事・労務)

労働(雇用)契約

労働契約書に盛り込むべき事項
昨今では、労働契約を書面で交わし、同じ書面に労働基準法第15条1項で義務づけられている労働条件を記載して、労働条件の書面明示義務を履行することが一般的になっている。

したがって、労働契約書には、少なくとも労働基準法で書面明示を義務づけられている労働条件を記載する必要があるが、そのほかの条項は会社によってさまざまである。

以下では、労働契約書に盛り込んでおくとよい点を挙げる。


(1) 試用期間

試用期間が設定されている場合は、労働契約書に記載することにより明示する。試用期間が明確にわかるように、「○年○月○日から同年○月○日までの3か月間を試用期間とする」というように具体的に定める。試用期間中の賃金が本採用後よりも低いなど、試用期間中と本採用後の労働条件が異なる場合は、その旨も必ず記載する。

実際に、「試用期間中は賃金が低いとは聞いていなかった」「試用期間はないと認識していた」など、試用期間についての従業員の認識があいまいであったためにトラブルが生じたケースは少なくない。

契約書面での記載例は以下のとおりである。

試用期間は入社日から○か月間とし、甲は、乙の勤務成績・業務適性等を総合的に判断して試用期間満了時に本採用の可否を決定する(詳細は就業規則第○条)。

(2) 職務専念義務と就業規則の遵守

職務に専念するとともに、就業規則を遵守すること、信頼関係を損ねるような行為をしないことを盛り込むことが望ましい。

契約書面での記載例は以下のとおりである。

就業中は職務に専念するとともに、業務命令に従い、甲の就業規則、諸規則を遵守して誠実に勤務し、甲との信頼関係を損ねるような行為・言動を行なわないものとする。

(3) 契約更新の上限期間

労働契約法により、有期雇用が5年を超える場合は無期転換申込権が発生する。そのため、契約を更新する場合であっても上限は5年とし、5年を超えて契約を締結することはないと定めるケースも見受けられる。この場合には、必ず労働契約書にその旨を記載する。


(4) 特約事項

たとえば、営業職の中途採用で、「初年度の営業必達目標は成約○件とし、達成した場合には次年度以降○万円の昇給を行なう」という特約を設定することなどが想定される。こうした特約は、口頭で約束され、後でトラブルになることが非常に多い。特約事項については、必ず労働契約書等の書面に記載しておくことが不可欠である。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。