ビジネスわかったランド (人事・労務)

服務規律・ハラスメント防止

服務規律に関するその他の注意点

(1)派遣社員と服務規律

派遣会社から派遣された派遣社員に対して、自社(派遣先)の就業規則の服務規律を適用できるのだろうか。

この点については、派遣社員に対して、派遣先の就業規則の服務規律を直接適用することはできない。派遣社員は派遣先ではなく、派遣元(派遣会社)と雇用関係があるので、派遣元の服務規律が適用される。

ただし、業務に関する指揮命令権は派遣先にあるため、業務に関係する指導や注意は派遣先で行なうことができる。無断欠勤やたび重なる遅刻、作業中の私的行為などの業務怠慢が目立つようであれば、当然、派遣先が直接注意や指導をすべきだろう。

仮に、派遣社員の行動が目に余る、注意や指導をしてもいっこうに改善されない、ということであれば、雇用関係のある派遣元にその旨を伝える。通常、派遣先と派遣元が会社間で派遣契約(基本契約)を結ぶ際、派遣社員に対する教育指導措置や改善措置を取り決めている。その取決めに基づいて、派遣元が適切な対応(厳重注意や懲戒処分など)を行なうことになる。
派遣先   派遣元(雇用主)  
指揮命令
 
雇用関係
就業規則の服務規律、懲戒規定の適用
派遣社員  

(2)服装や身だしなみについて

会社によっては、服装、髪の毛、髭などに関するルールを服務規律に盛り込んでいるケースもあるだろう。

注意したいのは、服装や身だしなみは個人の主観が大きく影響し、従業員の私生活とも密接に関係することである。たとえば、会社が長髪を禁止すれば、当然、従業員は私生活でも長髪でいることはできない。つまり、会社が服装や身だしなみを規制することは、従業員の私生活にまで踏み込むことを意味する。

したがって、服装や身だしなみを規制する場合は、「会社の円滑な運営上、必要かつ合理的な範囲内にとどまるものであるか」ということがポイントになる。

たとえば、飲食業や医療、介護職であれば、安全衛生面から清潔さが求められるのは当然である。また、多数の顧客と接する職業では、茶髪や長髪が接客を受ける側にマイナスの感情を抱かせるケースもある。

このように、事業運営上の合理的な理由があるのであれば、服装や身だしなみについて服務規律で制限を加えることも認められる。

一方、合理的な理由がないにもかかわらず、会社側が一方的に制限を加えることは認められないと考えるべきである。
注意点!
従業員が服務規律に抵触する場合、最初は指導・注意で済ませることも多いだろう。

その際に注意しなければならないのは、指導・注意をするときの言動である。パワー・ハラスメントには、精神的な攻撃も含まれる。明らかに従業員に非がある場合であっても、大勢の他の社員の前で叱責したり、侮辱や名誉棄損に当たる言葉を使うのは避けるべきである。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。