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降格・懲戒処分

懲戒処分の相当性の原則
懲戒処分には6つの有効要件があるが、ここでは、特に「相当性の原則」に絞って解説をしていく。

(1)「相当性の原則」とは

懲戒処分の対象となる行為と、それに対する処分の内容や程度が、均衡のとれたものでなければならない。これが「相当性の原則」である。

そのため、軽微な違反行為に対して、重い懲戒処分を適用したような場合には、懲戒権の濫用となり、相当性の原則に抵触して無効と判断される可能性がある。

(2)相当性を確保するには

相当性の原則に抵触せずに懲戒処分を行なうためには、処分対象となる行為を十分に調査することはもちろんだが、そのうえで会社側に客観的な判断が求められる。

たとえば、同じ業務上横領であっても、その頻度や金額はどの程度であるのか、行為者の職種や地位はどうであるのか等、具体的な事情を考慮しない限り、相当性を確保することは難しい。

相当性を確保するうえでのポイントは、次のとおりである。

【処分対象行為の内容】
常習性や被害規模は、多くの行為において重要な判断材料となる。たとえば、無断欠勤では回数や期間、業務上横領では頻度や金額が挙げられる。さらに、故意や過失の有無、悪質な行為であるのか等も考慮する必要がある。

【会社の対応】
懲戒処分を下す前に、日頃からどの程度注意したり、指導をしていたのかということを考慮する。懲戒事由によっては、会社の管理方法も問われることになる。

【行為者の職種や地位】
同じ行為であっても、職種や地位によって懲戒の程度は異なる。もちろん、勤続年数も重要な判断材料のひとつとなる。たとえば、業務上横領であれば、経理職等の金銭を扱う職種に就いている場合、その責任は重く判断される。地位に関していえば、職責が高ければ高いほど、比例してその責任も重くなる。

【その他】
従業員本人の日頃の勤務態度や反省度も考慮することになる。懲戒処分を下すにしても、深い反省が認められれば、処分内容を軽減する等の柔軟性も必要となる。また、当然のことだが、処分を決定するうえで誤認があってはならない。対象となる行為が重大であるほど、入念に証拠や事実関係の確認を行なう必要がある。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。