ビジネスわかったランド (人事・労務)
賃下げ・降格等
人事権による降格と降給
ここでは、会社業績の悪化等によるやむを得ない理由によるものではなく、人事権の行使による降格と降級について解説する。
(1)会社による人事権の行使
会社は、従業員に対して一定の「人事権」をもっている。
人事権とは、会社が従業員の役職や地位などの処遇を決定する権限を指すのが一般的である。人事権は会社にとって事業の運営上非常に重要なものであり、従業員の労務管理をしていくうえで当然に予定されているものである。
この点について判例は、その行使について比較的広い範囲の裁量権を認めている。
人事権とは、会社が従業員の役職や地位などの処遇を決定する権限を指すのが一般的である。人事権は会社にとって事業の運営上非常に重要なものであり、従業員の労務管理をしていくうえで当然に予定されているものである。
この点について判例は、その行使について比較的広い範囲の裁量権を認めている。
(2)人事権の行使としての降格・降級
「降格」(役職や職位等の引下げ)や、「降級」(資格等級制度における資格等級の引下げ)も人事権のひとつである。
就業規則等の根拠があれば、成績不振や職務不適格により降格・降級処分を行なったとしても、労働条件の不利益変更に直接結びつくことはない。ただし、賃金の減額を伴う場合は、降級の根拠は明確かつ公正なものでなければならないだろう。
就業規則等の根拠があれば、成績不振や職務不適格により降格・降級処分を行なったとしても、労働条件の不利益変更に直接結びつくことはない。ただし、賃金の減額を伴う場合は、降級の根拠は明確かつ公正なものでなければならないだろう。
(3)人事権の行使と権利の濫用
会社に人事権があるとはいっても、無制限にその行使が認められるわけではない。
過去の判例でも、人事権の行使について会社に裁量権を認める一方で、社会通念上著しく妥当性を欠き、権利の濫用に当たると認められるものは適法とはいえないと判断している点に注意が必要である。
たとえば、明確な根拠もなく恣意的に降格処分を行なった場合や、降格または降級処分に対する賃金の減額幅が大き過ぎる場合には、社会通念上著しく妥当性を欠き、権利の濫用に当たると解釈されるのが一般的である。
労働契約法第3条5項においても、「労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない」と規定している。
人事権も労働契約に付随する権利のひとつである。労働契約法に強制力はないが、民事上のトラブルに発展した場合は大きな争点となり得るので、十分に留意する必要がある。
なお、判例の傾向として、数次にわたる降格処分(部長から課長、さらに係長への降格など)や、就業規則等の根拠がない場合や制度の内容が不明確である場合の降級を無効としている。
以上から、人事権の行使において会社には一定の裁量権が認められているが、その行使が人事権の濫用にならないように注意する必要がある。
過去の判例でも、人事権の行使について会社に裁量権を認める一方で、社会通念上著しく妥当性を欠き、権利の濫用に当たると認められるものは適法とはいえないと判断している点に注意が必要である。
たとえば、明確な根拠もなく恣意的に降格処分を行なった場合や、降格または降級処分に対する賃金の減額幅が大き過ぎる場合には、社会通念上著しく妥当性を欠き、権利の濫用に当たると解釈されるのが一般的である。
労働契約法第3条5項においても、「労働者及び使用者は、労働契約に基づく権利の行使に当たっては、それを濫用することがあってはならない」と規定している。
人事権も労働契約に付随する権利のひとつである。労働契約法に強制力はないが、民事上のトラブルに発展した場合は大きな争点となり得るので、十分に留意する必要がある。
なお、判例の傾向として、数次にわたる降格処分(部長から課長、さらに係長への降格など)や、就業規則等の根拠がない場合や制度の内容が不明確である場合の降級を無効としている。
以上から、人事権の行使において会社には一定の裁量権が認められているが、その行使が人事権の濫用にならないように注意する必要がある。
著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)
※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。
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