ビジネスわかったランド (人事・労務)

労働(雇用)契約

非正規従業員への労働条件の追加明示事項
契約期間の定めがある従業員(有期雇用労働者)や、働く時間の短いパート、アルバイト従業員については、明示すべき労働条件が追加されることに注意が必要である。

契約期間の定めがある労働者の場合

労働基準法施行規則第5条により、「期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準」を書面の交付によって明示しなければならない。

明示する基準の内容は、対象となる従業員が、契約期間満了後、自らの雇用継続の可能性について一定程度の予見が可能なものとする必要がある。

具体的には、次の(1)(2)の事項を明示する必要がある。


(1) 契約更新の有無

記載例としては、次のようなものが挙げられる。

(ア) 自動的に更新する
(イ) 更新する場合があり得る
(ウ) 契約の更新はしない

(2) 契約更新の判断基準

記載例としては、次のようなものが挙げられる。

(ア) 契約期間満了時の業務量により判断する
(イ) 労働者の勤務成績、態度により判断する
(ウ) 労働者の能力により判断する
(エ) 会社の経営状況により判断する
(オ) 従事している業務の進捗状況により判断する

パート、アルバイト従業員などの短時間労働者の場合

「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(いわゆる「パートタイム・有期雇用労働法」)では、「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」を雇い入れたときは、速やかに、次の労働条件を文書(労働者が希望した場合は電子メールやFAXでも可)で明示することを義務づけている。

(1) 昇給の有無
(2) 退職手当の有無
(3) 賞与の有無
(4) 相談窓口

会社の業績などによっては昇給がなかったり賞与が支給されない可能性がある場合や、退職手当を勤続年数に基づき支給するケースで、所定の年数に達していないと、退職手当が支給されない可能性がある場合は、制度は「有り」としたうえで、「業績により不支給の場合がある」「勤続○年未満は不支給」など、支給されない可能性があることを明記する。

この明示義務に違反して、行政指導によっても改善がみられなければ、短時間労働者1人につき、契約ごとに10万円以下の過料に処せられるので注意が必要である。
注意点!
雇用形態が、「嘱託」「契約社員」「臨時社員」「準社員」などであっても、「1週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者の1週間の所定労働時間に比べて短い労働者」に該当する場合は、パートタイム・有期雇用労働法の適用を受ける。実務上は、労働条件通知書に、昇給、退職手当、賞与の有無を記載しておく必要があるだろう。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。