ビジネスわかったランド (人事・労務)
残業代問題
残業代の不払いにまつわる注意点
ここでは、計算基礎賃金、1か月の平均所定労働時間以外で、残業代の不払いにつながりかねない措置等について解説する。
(1)残業代(時間)に上限を設けている場合
残業代について、たとえば「月20時間までは支給するが、20時間を超えた分は支給しない」など、何らかの「上限」を定めている場合は、その上限を超えた時間分の残業代が不払いとなる。
これは、定額残業代制を導入し、「実際の残業時間が定額の残業代を超えても追加で支払うことはない」としている場合も同様である。
また、上限は定めなくても、一定の基準(時間)を設け、その基準を超えて残業をしたときは人事考課上で不利な取扱いをするといった措置も、実質的には上限を設けているのと大差なく、適切ではない。
これは、定額残業代制を導入し、「実際の残業時間が定額の残業代を超えても追加で支払うことはない」としている場合も同様である。
また、上限は定めなくても、一定の基準(時間)を設け、その基準を超えて残業をしたときは人事考課上で不利な取扱いをするといった措置も、実質的には上限を設けているのと大差なく、適切ではない。
(2)管理監督者の範囲が適切ではない場合
管理監督者には残業代を支払う義務がない(深夜割増賃金を除く)。その代わり、管理監督者となる従業員の範囲は厳格に判断される。いわゆる「名ばかり管理職」がいて、残業代の不払いが発生していないか注意が必要である。
(3)労働時間についての認識
本来、残業代を支払うべき時間外労働であるにもかかわらず、事業主がそのように認識していないことがある。たとえば、朝礼や休憩時間中の電話当番などである。
(4)ずさんな労働時間管理
会社には、従業員の労働時間を適正に把握・管理する義務がある。労働時間を管理せず、「何時間残業したかが不明なので、残業代の支払いようがない」という主張は通らない。
以上をふまえて、最後に、主な注意点をフローチャートとしてまとめておく。
以上をふまえて、最後に、主な注意点をフローチャートとしてまとめておく。
法定割増率により残業代を支払っていると認識している | |||
↓
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「月30時間までしか支払わない」等の上限を設けず、残業した分をすべて支払っている | いいえ |
→
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上限を超えた残業代が不払いとなるため、上限は撤廃すべき。定額残業代制を導入し、定額を超えた分は払わないとしている場合も同様 |
はい | |||
↓
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残業代の計算基礎となる賃金の種類を理解しており、すべて計算基礎に含めている | いいえ |
→
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計算基礎賃金の概念を理解する。いくつか手当があるのに、「基本給のみ」で残業代を計算しているのであれば、残業代の不払いが発生している可能性がある |
はい | |||
↓
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残業代を計算する際の「1か月の平均所定労働時間」の算出方法は、就業規則に基づいており正しい | いいえ |
→
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1か月の平均所定労働時間が就業規則に基づく時間よりも多ければ、残業時間単価が不当に低くなり、残業代の不払いとなる |
はい | |||
↓
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残業時間を計算する際、「1日のうち30分未満は切捨て」等の措置をとらず、正確に合計して計算している | いいえ |
→
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残業時間の切捨ては、原則としてできない。「切り捨てられた時間=残業代の不払い」となる
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はい | |||
↓
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残業代を支払う基本的なルールに抵触していないと判断できる |
著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)
※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。
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