ビジネスわかったランド (人事・労務)

賃下げ・降格等

賃下げと労使間合意
会社は、賃下げを行なうにあたり、対象者と合意に至るように最善を尽くす必要がある。まず、どのように説明するかを決めて機会を設定し、次に実際に説明をしていくことになる。ここでは、どのような内容を説明するかについて解説する。

(1)賃下げに際して説明する事項

具体的には、次のような事項を従業員に説明していくことになる。

【経営悪化による賃下げの場合】
・経営上の必要性
・経営状況の開示(財務諸表等を利用して具体的に開示)
・会社の講じた改善策(資産・不採算部門の整理、役員報酬・賞与減額等)
・同業他社や他業態、国内外の景気の動向(自社の賃下げとの関連性)
・今後の見通し(従来の経営状況に復帰する可能性) など
【賃金制度の変更による賃下げの場合】
・制度変更の目的・方針(従業員の能力の適正化、国内外の市場競争への対応等)
・制度変更の背景(業界・企業内再編、会社組織の変更等)
・制度の内容(無理なく運用できるか等)
・賃金原資の配分(旧制度からの減額分を新制度の増額分に充当等)
・経過措置や代替措置(新制度により賃金低下となる者に対する段階的な減額等) など
以上のほか、交渉材料として、決定に至るまでの経緯(原因や契機)や減額幅の妥当性なども説明したほうがよいだろう。

(2)説明後の対応

会社から説明した後、賃金減額の対象となる従業員から同意を得ておくことは大変重要である。たとえ、就業規則による不利益変更であったとしても、実務上は従業員から書面で同意を得ておくべきである。

最終的に合理性の有無を判断するのは裁判所であって、会社ではない。すべてのケースに訴訟リスクがあると考える必要はないが、従業員が同意したことを明らかにするためにも、合意書や同意書を交わしておくことが大切である。

(3)従業員から同意を得る際の書面

賃下げの同意の取得は、必ず書面で行なう必要がある。法律上、書面が義務づけられているわけではないが、口頭での合意は「言った言わない」という不毛なトラブルを招くおそれがある。

参考として、以下に、同意取得のモデル書面を掲げた。


■賃下げの同意書のモデル

給与制度変更に伴う一部手当削減に関する同意書

○○○株式会社
代表取締役 ○○一郎 殿


先般、会社から説明を受けた給与制度変更に伴う一部手当の削減について、下記の内容に異議なく同意いたします。

○年度実施の新給与制度導入に伴う次の手当の削減

【○○手当】
変更前 ○○○○円   変更後 △△△△円

【○○手当】
変更前 ○○○○円   変更後 △△△△円

【変更月】
○年○月○日支給分より適用

以上

○年○月○日
所属支店名 ○○支店
所属部署名 ○○部
氏名 ○○太郎 印

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著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。