ビジネスわかったランド (人事・労務)

降格・懲戒処分

懲戒処分手続きの明確化
懲戒処分に際して客観性や合理性を確保するためには、適正な判断を下すことのできる手続方法が必要となる。

(1)懲戒処分手続きを明確に定める

懲戒処分を定めて公正に運用するためには、懲戒処分の制度を形骸化させないことが必要である。そのためには、懲戒処分を行なう際の手続方法を就業規則上で明確にしておくことが望ましい。

以下は、懲戒処分の手続方法を定めた規定例である。
(懲戒委員会)
第○条 第△条に定める懲戒処分については、懲戒委員会での審査により決定する。
  1. 前項の懲戒処分とは、原則として出勤停止以上の処分を対象とする。ただし、必要と認める場合には、出勤停止未満の処分についても対象とする。
  2. 委員会は、取締役1名・人事部管理職者1名・会社の指名する一般従業員1名で構成する。
  3. 出勤停止以上の処分を決定する場合には、本人に対して弁明の機会を与える。なお、必要と認める場合には、出勤停止未満の処分であっても弁明の機会を与えることがある。
(懲戒処分決定に伴う自宅待機)
第○条 第△条に定める懲戒処分の決定の際には、懲戒事由の調査、職場秩序維持のため、一定期間の自宅待機を命じることがある。なお、当該待機期間については、労働基準法第26条に基づき休業手当を支給するものとする。
この規定例では、「弁明の機会を与える」としているが、処分決定後に異議申立てを認める方法(手続き)もある。
注意点!
懲戒処分の手続きを就業規則上に定めたからには、確実に実行しなければならない。たとえば、少人数の会社では、懲戒委員会を設けることが現実的ではない場合もあるが、いったん就業規則で定めたからには、必ずその定めに従う必要がある。

手続方法を定めるにあたっては、公正な懲戒処分であることはもちろんだが、会社が運用可能な懲戒処分制度とすることも重要である。

(2)懲戒処分の前段階としての自宅待機

自宅待機とは、懲戒処分の前段階として、違反行為の再発を防止したり、職場秩序を維持するために、出社を禁じて自宅待機を命じることである。この自宅待機には、懲戒処分としての意味合いはなく、一種の業務命令という位置づけとなる。

したがって、懲戒処分が決定するまでの自宅待機期間については、懲戒処分による出勤停止とは異なり、休業手当(平均賃金の60%以上)の支払義務が生じることに注意が必要である。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。