ビジネスわかったランド (人事・労務)

賃下げ・降格等

賃下げと労使間の話合い
会社は、やむを得ない理由により賃下げを行なう場合には、対象従業員の同意を得る必要がある。同意を得ない場合でも、就業規則の変更による賃下げが可能ではあるが、労使紛争のリスクを考えると、できる限り同意を得るようにしたい。

(1)労使間の話合いの重要性

同意を得るためには、従業員との話合い(交渉)が不可欠となる。たとえ、就業規則の変更内容が正当なもので、会社が労働条件の不利益変更をせざるを得ない状況であったとしても、従業員に対する説明責任は果たす必要がある。

労働契約法第10条でも、就業規則の変更により労働条件を変更する場合の合理性の確保を判断する要素のひとつとして、「労働組合等との交渉の状況」を挙げている。

労働条件の不利益変更の場合、当然、会社が主導権を握ることになるため、従業員側は圧倒的に不利な立場に置かれる。そのため会社は、不利益の代償措置や改善案をあらかじめ用意して交渉に臨むべきであり、納得を得られるまで粘り強く交渉を重ねていく必要があるだろう。

(2)会社側からの説明方法

会社側からの説明の方法としては、個別の面談、説明会の開催などさまざまなものがある。人数が多い場合は、説明会を複数回開催する必要も出てくる。

参考として、以下に、給与制度変更に関する説明会の案内のモデル書面を掲げた。


■給与制度変更に関する説明会の案内モデル
○年○月○日
従業員各位

○○○株式会社
代表取締役 ○○一郎

給与制度変更に関する説明会(第1回)の実施についてのご案内

日頃は、当社の業務に精励いただきまして、厚く感謝を申し上げます。

さて、当社では、社会情勢の変化や業界内外の動向をふまえて、このたび、新しい給与制度の導入を検討しております。○年度より、人事評価制度を刷新することに伴い、全面的に内容を改定した制度となる予定です。

つきましては、従業員の皆様のご理解を得るべく、下記のスケジュールにより説明会を開催します。何卒、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

1.日程営業部:○年○月○日
企画開発部:○年○月○日
その他の部署:○年○月○日

2.時間9時30分~11時00分

3.場所当社会議室

4.議題(1)新給与制度導入の目的
(2)業界動向と当社の経営状況
(3)新人事評価制度の説明
(4)給与制度変更に伴う経過的措置等の提案
(5)質疑応答

※全員参加を予定しています。都合がつかない方は予備日等を設けることにより対応します。予備日等の調整については別途書面にて連絡します。

※不明な点等がありましたら、総務部○○までお問い合わせください。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。