ビジネスわかったランド (人事・労務)

労働(雇用)契約

労働基準法で義務づけられた労働条件の明示と方法

労働条件の明示とは

会社は、従業員を雇い入れる際には、労働条件を書面で明示しなければならない。

労働基準法第15条1項では、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない」と定めている。

この義務を履行しなかった場合には、30万円以下の罰金という罰則がある(労働基準法第120条1号)。労働基準監督署の調査時には確実にチェックされるポイントであるため、十分な注意が必要となる。

また、労働基準法第15条2項では、「明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる」とあり、会社から手渡された労働条件明示の書面と実際の待遇に相違がある場合の対応も規定されている。

したがって、会社は、(1)まず募集時に労働条件を明示し、(2)採用決定後、労働契約を締結する段階で再び労働条件を明示する必要がある、ということになる。


●使用者の労働条件の明示義務

募集時の労働条件の明示

労働契約締結時の労働条件の明示

労働条件の明示の方法

労働条件の明示は必ず書面で行なう必要がある。ただし、すべての労働条件ではなく、労働基準法で指定された事項のみを書面で明示すれば法違反とはならない。
なお、2019年4月1日からは、労働者が希望した場合は、FAXや電子メール、SNS等も利用できるようになっているが、出力して書面を作成できるものに限られる。

書面の形式については、特段の定めはない。労働基準法に定められた要件を満たしているのであれば、形式等は会社に任されている。厚生労働省が作成しているモデル書面をインターネットからダウンロードして使用することもできる。

なお、労働条件を明示する書面は、一般に「労働条件通知書」と呼ばれるが、その名称を必ず書面に付さなければならないわけではない。

また、就業規則が定められている会社は、この就業規則を労働条件を明示する書面の代わりとして利用できる。ただし、この場合は、対象となる労働条件が従業員に明確にわかるようにする必要がある。

具体的には、当該労働条件が記載された箇所に付箋を貼ったり、就業規則のコピーにマーカーを引くなどして交付するとともに、内容について説明を行なうことになる。会社が労働条件の書面による明示義務を履行したことを証拠として残しておくため、従業員に説明を受けた旨のサインをもらっておくことが望ましい。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。