ビジネスわかったランド (人事・労務)

賃金制度と給与計算

賃金の控除と減額
賃金には、「ノーワーク・ノーペイの原則」が適用される。したがって、就労しなかった場合は、その時間分の賃金が減額される。ただし、就労しなかった時間分を超えて減額することはできない。

(1)ノーワーク・ノーペイの原則とは

ノーワーク・ノーペイの原則とは、従業員が働かなかった時間分については、会社は賃金を支払う義務がないという原則である。

労働契約は双務契約であり、会社側には賃金を支払う義務、従業員側には労務を提供する義務がある。そのため、従業員側の義務が履行されなかった日数・時間分については、会社側にも賃金の支払義務は課されない。

従業員

出勤すべき日に欠勤して就労しなかった

会社

就労しなかった部分の賃金を支払う義務はない

(2)欠勤、遅刻・早退をした場合の賃金の取扱い

従業員が、欠勤、遅刻・早退をした場合に、その就労していない時間分の賃金を支払わないことは、労働基準法に違反しない。

なお、年次有給休暇や会社が定める任意の有給休暇を取得している場合は、従業員は就労義務を履行したことになるため、賃金の減額は発生しない。
注意点!
賃金を減額できるのは、就労しなかった日数・時間分に限られる。したがって、たとえば30分単位で給料の計算をしている場合に、10分の遅刻で30分間分の賃金を控除して、20分間分の賃金を支払わないことは、労働基準法の賃金の全額払いの原則に違反する。

(3)懲戒規定に基づく減給の制裁と賃金控除

たとえば、遅刻や早退の常習者には、就労しなかった時間分の賃金を減額することに加えて、何らかのペナルティを科さなければ他の従業員に示しがつかない、と考える会社も多いだろう。

その場合は、就業規則の懲戒規定を確認し、遅刻・早退の常習者に対して懲戒処分を科すことができるかを確認する。

懲戒規定がある場合は、まず、遅刻や早退の常習者に「けん責処分」(一般的には減給より軽い処分)を科して「始末書」を書かせるとよい。それでも反省が見られず、遅刻や早退を繰り返す場合には「減給の制裁」を適用し、就労しなかった時間分の賃金控除とは別に、懲戒処分による減給が可能となる。

最初にけん責処分を科した後、再度繰り返された場合に減給処分を科すのは、より重い処分の前に本人に反省の機会を与えるためである。懲戒処分は、まずは軽い処分から始めて、相応に処分を重くしていくのがセオリーである。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。