ビジネスわかったランド (人事・労務)

残業代問題

残業代の計算基礎賃金
労働基準法は、どのような手当を残業代の計算基礎賃金に含めなければならないかを定めている。これは法律上の義務であり、労働基準監督署の臨検で指摘されることが多い事項でもあるため、注意が必要である。

(1)残業代の計算基礎に含めるべき賃金

賃金

【通常の労働時間または労働日の賃金(右の1~7を除く)】

□基本給
□役職手当
□皆勤手当
□食事手当
□毎月支給されるインセンティブ
 
  1. 家族手当
  2. 通勤手当
  3. 別居手当
  4. 子女教育手当
  5. 住宅手当
  6. 臨時に支払われた賃金
  7. 賞与等の1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

残業代の計算基礎賃金となる

上図に挙げたとおり、残業代の計算基礎から除外してよい賃金(以下、「除外賃金」という)は限定されている。除外賃金以外の通常の労働時間または労働日の賃金は、すべて残業代の計算基礎に含めなければならない。

(2)除外賃金の条件

除外賃金か否かは、単にその名称で決まるものではなく、実態に基づいて判断される。「家族手当」等の名称を付ければ除外賃金になるというわけではない。以下、各除外賃金の定義について説明する。


1.家族手当

扶養家族数またはこれを基礎とする家族手当額を基準として算出したものをいう。たとえば、「配偶者がいる場合は月額1万円、子供1人につき月額5,000円」と定めている場合が該当する。
一方、従業員に一律の金額が支給されている場合や、扶養家族がいない独身者に対しても一定額が支払われている場合には、その部分は除外賃金とはならない。


2.通勤手当

通勤距離または通勤のために必要な実際の費用に応じて算定されるものをいう。通勤距離にかかわらず、一定額を支給する場合は、除外賃金とはならない。


3.別居手当

会社の都合により単身赴任をする必要がある従業員に対して、生活費や家族との交流費用等を補填するために支給するものをいう。


4.子女教育手当

従業員の子女の授業料等の教育費用を補助するために支給するものをいう。


5.住宅手当

住宅に要する費用に応じて算定されるものをいう。「住宅に要する費用」とは、賃貸住宅の家賃、持ち家の購入、管理等に必要な費用を指し、「費用に応じて算定される」とは、費用に定率を乗じた金額や、費用を段階的に区分し、費用が増えるに従って金額を多くすることである。
一方、「賃貸住宅または従業員名義の持ち家に居住する者は一律1万円」など、住宅に要する費用にかかわらず、一律に定額で支給している場合は、除外賃金とはならない。


6.臨時に支払われた賃金

臨時的、突発的事由に基づいて支払われたものや、支給条件はあらかじめ決まっているが、支給事由の発生が不確定であり、かつ非常に稀に発生するもの(結婚祝金、見舞金等)をいう。


7.賞与等の1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

賞与や、1か月を超える期間についての営業成績等により算定・支給されるものをいう。
注意点!
毎月払いを単に回避するために、本来1か月ごとに支払うべき手当を2か月に1回支給する場合は、除外賃金とはならない。

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。