ビジネスわかったランド (人事・労務)

休職

休職期間と賃金の支払い
休職制度の設計は、休職期間の長さ、休職期間中の賃金の支払いなども含めて、各会社に委ねられている。

(1)休職期間の長さ

海外留学や公職への就任、出向休職については、あらかじめ一定の期間が設定されているので、その期間が終了すれば休職期間も終了する。

一方、私傷病休職の期間は、私傷病が治癒して従前どおりの勤務ができるまで、ということになる。しかし、病状によっては、治癒自体が望めない場合や、治癒に数年を要するようなケースも考えられる。そうした場合に、無期限の休職を認めないのであれば、休職期間の上限を定めておく必要がある。

実務上は6か月から1年を上限としているケースが多いが、休職期間中の人員配置、社会保険料の会社負担(無給でも休職者の社会保険料の会社負担分は毎月発生する)、その他の労務コスト(代替人員の人件費等)も考慮して、自社として許容できる期間を設定する。会社の負担が大きくなりすぎないよう注意する必要がある。

なお、休職期間は、一律に○年(か月)と定めるのではなく、「勤続3年未満は6か月、勤続3年以上は1年」というように、従業員の勤続年数に応じて設定するケースが多い。

(2)休職期間中の賃金

休職する従業員に賃金を支払うかどうかも会社の判断に委ねられている。

健康保険に加入している従業員は、業務上または通勤途上の事故ではない私傷病により休職(欠勤)し、賃金が支払われない場合は、所定の要件を満たすことで、健康保険から「傷病手当金」の給付がある。

この傷病手当金は、全額非課税で、支給開始日から最長で1年6か月受給することができる。 ※傷病手当金の1日あたりの金額は、原則として、『支給開始日以前の継続した12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額』÷30日×2/3となる。 したがって、「休職期間中の賃金は無給とする」と定めた場合であっても、傷病手当金の受給により休職者は生活を維持できる。

また、休職期間中は賃金の一部を支払うとした場合であっても、支払われる賃金額が傷病手当金よりも少ない場合には、その差額を傷病手当金として受給できる。
●休職制度の設計において会社が考えるべきコスト
  1. 人的コスト □休職者の行なっていた仕事を残りの従業員で分担できるか?
    できる場合の限界期間はどのくらいか?
    □一時的にアルバイト、派遣社員の活用を検討する必要があるか?
    その場合の費用はどれくらいかかるか?
  2. 経費コスト □休職期間中は無給とするか? または一部を支払うか? □社会保険料の負担は?
    (無給の場合でも、休職者の社会保険料の会社負担分は毎月発生する)

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。