ビジネスわかったランド (人事・労務)

降格・懲戒処分

懲戒事由の明確化

(1)懲戒事由を明確に定める

懲戒処分を行なうには、客観性や合理性を確保する必要がある。そのためには、どういった行為が懲戒処分の対象となるのかについて、就業規則上で明らかにしておかなければならない。

具体的には、素行不良や無断欠勤などの懲戒事由と、適用される懲戒処分を定める。ただし、想定されるすべての懲戒事由を列挙することは現実的には難しい。そのため、実務上は「前各号に掲げた行為に準ずるものがあったとき」といった内容の包括的な条項を置くことも必要となる。

(2)就業規則の定め方

以下は、就業規則において懲戒処分を定める際の規定例である。
(懲戒の種類)
第○条 懲戒は、次の6種類とする。 (1) 譴責…始末書をとり、将来を戒める。 (2) 減給…始末書をとり、1回につき、平均賃金の1日分の2分の1以内を減給し、将来を戒める。ただし、2回以上にわたる場合の総額は、1賃金支払期における賃金総額の10分の1以内とする。 (3) 出勤停止…始末書をとり、10日以内を限度に出勤を停止し、その期間の賃金を支払わない。 (4) 降格…始末書をとり、職位等を降格させる。 (5) 諭旨解雇…懲戒解雇に準ずる事由により解雇し、退職金は減額して支給する。 (6) 懲戒解雇…即時解雇し、退職金は支給しない。なお、所轄労働基準監督署長の認定を受けたときは、予告手当は支給しない。 2 前項に定める懲戒処分が決定した場合には、本人に対して文書により通知する。
各処分がどのような行為に適用されるかは、別条文で定めるのが一般的である。以下は、譴責の懲戒処分に相当する行為を定めた規定例である。
(譴責)
第○条 従業員が次の各号の一に該当するときは譴責に処する。 (1) 正当な理由なくして1か月に3回以上遅刻、早退、私用外出をなし、もしくは無届欠勤をしたとき、またはしばしば職場を離脱して職場の秩序を乱したとき (2) 勤務に関する諸手続きその他の届出をしばしば怠り、またはその記録を偽ったとき (3) 業務上の書類、伝票を改変し、または虚偽の申告、届出をしたとき (4) 業務に対する誠意を欠き、職務怠慢と認められるとき (5) 就業時間中に許可なく私用を行なったとき (6) 所属長または関連上長の業務上の指示、命令に従わないとき (7) 職場において協調性に欠けた行為をなし、社内の調和を乱したとき (8) 会社が行なう教育を不当に拒み、または誠実に受講しないとき (9) 性的な言動により他の従業員に不愉快な思いをさせ、職場の環境を悪くしたとき (10) 会社規則、通達、通知等に違反し、前各号に準ずる程度の不都合な行為があったとき

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。