ビジネスわかったランド (人事・労務)

賃金制度と給与計算

賃金と賃金の支払方法
「賃金」とは、会社から従業員に対して労働の対価として支払われるものである。賃金を支払う際には、いくつかのルールがある。

(1)賃金とは

会社が従業員に対して支払う賃金には、いろいろな名称がある。たとえば、「給料」「給与」「報酬」「賞与」、あるいは「営業手当」「残業手当」等であるが、労働の対価として支払われるものであれば、名称を問わず、すべて労働基準法上では賃金に該当する。

※労働基準法第11条

この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。

なお、「祝金」や「見舞金」等は労働の対価として支払われるものではないため、賃金には該当しない。しかし、就業規則等であらかじめ支給条件が確約されている場合は、賃金に該当するので注意が必要である。

(2)賃金の支払方法のルール

賃金によって生計を維持している従業員に不利益が生じないように、労働基準法では、従業員へ賃金を支払う際の5つの原則を定めている。会社は、この原則に従って賃金を支払わなければならない。
  1. 通貨(日本円)で支払うこと通貨ではなく、食事や商品などの現物で賃金を支払うことはできない。また、従業員が希望したとしても、外国通貨で支払うことはできない。  

    例外1:労働組合と労働協約を締結した場合は、賃金を現物で支払うことが認められている。
    例外2:本人の同意があれば、本人名義の金融機関口座等に振り込むことにより支払うこともできる。
  2. 支払対象となる従業員へ直接支払うこと 支払対象ではない者(例:従業員の友人)に支払うことはできない。

    例外:本人が病気などのやむを得ない事由により外出できず、賃金を手渡しできない場合に、本人の使者である配偶者等に手渡すことはできる。
  3. 賃金の全額を支払うこと所定の支払日に、支払いが確定している全額を支払わなければならない。

    例外1:社会保険料、税金等の法に定めがあるものは控除できる。
    例外2:従業員代表と労使協定を締結した場合は、労使協定で定めたもの(例:持株会拠出金)を控除できる。
  4. 賃金は毎月1 回以上支払うこと毎月の賃金を、2か月に1回まとめて支払うようなことはできない。
  5. 賃金は一定の期日に支払うこと毎月、一定の期日ではなく、たとえば「来月については未定なので別途通知する」などとすることはできない。
会社
賃金の支払い (5つのルール)
従業員

著者: 佐藤 大輔(社会保険労務士法人坂井事務所、特定社会保険労務士・行政書士)

※記述内容は、2021年10月末現在の関係法令等に基づいています。