ビジネスわかったランド (会社行事)
福利厚生関係
慰安旅行
<< 慰安旅行の目的 >>
慰安旅行の目的は、改めて述べるまでもないが、次のようなところにある。
イ.同じ業務組織に属するメンバーの別の人間性に触れることによって、社内に新しいコミュニケーションを生み出し、その後の業務の新たな発展につながるチャンスとする。
ロ.心身をリフレッシュさせ、間接的に労働意欲を高める。
ハ.いつも顔を合わせているメンバーであっても、未知の景色、風物、食べ物などを共にすることによって、親睦をさらに深め、一体感を醸成する。
ニ.海外慰安旅行などは、各個人の見聞を広め、旅する楽しみ、喜びを満たし、社員の定着率を高めることにつながる。
<< 計画のポイント >>
(1)社員のニーズに沿った企画づくり
個人の価値観や好みの多様化に伴い、従来の「社員同士が一緒になって、宴会でドンチャン騒ぎをして、日頃のウサを晴らす」という、慰安旅行のイメージは変化しつつある。そこで、できるだけ会社主体の御仕着せ的レジャーの色合いを薄め、次の点を考慮して社員のニーズに沿うよう努力する。
・幹事役に各人が気軽に要求を言えるようにする
・宴会を新しい趣向と人で盛り上げ、おもしろいものにする
・スケジュールに多様性をもたせ、いろいろな催しを企画する……たとえば、1泊2日の場合、到着した夜は全体で宴会会食としても、翌日はテニス組、サイクリング組、名所旧跡めぐり組、魚釣り組、ハイキング組、ゴルフ組、室内水泳組などに分かれて、各自、好きな組に参加できるようにする
・拘束時間をなるべく少なくする
・個人負担金を軽くする
・グルメ志向派にも満足される食事を手配する
(2)準備委員(幹事)会を設置して、計画を固めていく
イ.全社的な規模で開催するだけに、準備委員(幹事)を社内各セクションごとに選出し、準備委員会で、計画を検討し固めていく。
ロ.幹事役には、常識をわきまえた機転のきく人物を選ぶ。各セクションごと(旅行参加者l0~20名に1人の割合)に選ぶのが無難である。
たとえ旅行に参加する社員が少なくても、必ず複数の幹事を選出しておくと、幹事の心身の負担が軽減される。
国内1泊2日バス旅行の場合の、幹事を中心とする手配計画書モデルは次のとおり。
幹事の分担手配計画書モデル(旅行会社利用の場合)
(3)会社側の意向は幹事会に伝える
会社側(主に総務部)としては、旅行の安全はもとより、予算内での実施、旅行目的の達成等について、準備委員(幹事)会に協力する形で参加しながら検討していくようにする。
その際、会社側があまりにも多くの要請をしたりすると、社員側からは、自由行動の規制と受け取られたりして、全員参加が望めないどころか“何のための慰安旅行か”と思われかねないので注意すること。
(4)慰安旅行の費用
会社側として、慰安旅行についてどの程度の力を入れているか、自社の旅行内容について検討してみること。
(5)最近の海外慰安旅行について
最近、円高とパッケージツアーの普及で海外への社内慰安旅行を行う企業が増えている。「どうせ同じくらいの費用がかかるのなら海外のほうが…」という考え方が定着しつつある。
さらに税制面でも平成元年4月から、海外への社内慰安旅行費用の非課税とされる範囲が拡大し、従来の「2泊3日以内」(現地の滞在日数)の非課税期間が、「3泊4日以内」に改正された。
(6)「海外への社内慰安旅行のポイント
・海外での慰安旅行は、集団行動は控えめにして、あくまで個人優先の考え方をベースにする
・行先の決定方法は、社内アンケートを行い年齢層や男女の別によって不満が出ないよう工夫する
・旅行費用は全額会社負担が主流であるが、渡航手続きに関する諸費用(旅券印紙代、査証費など)、食費、国内および旅行先での交通費など、個人にかかる性質のものに対して、どこまで会社が補助するのか、事前によく話し合う
・計画は実施日の1年以上前から立てる。諸手続きにかかる日数も考えると、半年、ぎりぎりでも3か月前には旅行代理店に相談して準備を始める
・休業することにより業務に影響を与えたくない場合には、グループごとに分けて出かける
・不参加者は有給休暇扱いにするが、グループごとに出かける場合は、平常どおりに勤務を行うのもよい
・参加に代えて金銭を支給すると、税務上、参加者にかかった費用もすべて課税対象とみなされるので注意する
<< 事前準備 >>
(1)旅行先のアンケート調査
ここでは、一般的なバス利用の1泊慰安旅行について、準備モデルを作成することにしたい。
予算の枠内で、いかに効果的に親睦の目的を果たすかということを幹事会で検討していくわけだが、幹事会でまずしなければならないのは、旅行先とコース等を社員の投票で決めることである。
イ.幹事会で慰安旅行先の候補地をいくつか選んでおいて、人気投票で決めるのがよい。その際、1.温泉地、2.自然景観のよい所、3.名所旧跡、4.大都会、5.登山ハイキング等のジャンルに分け、それぞれいくつかの候補地を幹事会が選んでおき、パンフレットやその他の参考資料も公開して、できるだけ全員の意向に沿うよう努力することが大切である。
ロ.旅行先とともに、旅行中の催しはどんなことがしたいか、宿泊場所はどんな所がよいか等も含めて、アンケート形式で従業員全体に問うのもよい。
(2)企画の作成
次に、幹事会は旅行先とコースの決定、宿泊場所選び、交通機関や期日の選定、宴会をどのように盛り上げるか等、担当者を決めて、相当の時間をかけて無理のない、余裕をもった計画をつくり、準備に当たる。
イ.目的に沿ってプランを作成する
・実施の日時
・旅行先
・周遊地
・宿泊場所
・交通手段
・旅行中の催し
・予算の配分、個人負担金の額と賦課方法
・参加者の班分け
ロ.固まった企画をもとに幹事会での役割分担を決める
・本部(実施管理の総括・事故防止管理)
・交渉係(旅行会社を利用する場合)
・交通係(バス手配と切符配付、人数把握)
・宿泊係(旅館予約)
・飲食物係(車中のアルコール・ジュース類、つまみ、菓子、昼食手配等)
・宴会係(宴会・2次会の準備と手配)
・会計係(現金出納集中管理、予算、精算)
・記録係(しおり作成、写真撮影、写真頒布)
・救急係(救急箱の携行と救護)
以上、相互の連携を密にしながら、それぞれの準備と運営にモレのない、詳細な計画を立てること。
(3)業者の手配、交渉
イ.宿泊予約
最近の観光地や都会のホテル・旅館の予約状況からすると、最低でも3か月前には予約しておく。
宿泊予約は、旅行会社を経由する方法と直接交渉する方法がある。幹事役が下見をして、現地で直接予約できればベストだが、その余裕がない場合や、海外旅行を予定するときなどは、情報量の多い信用のおける旅行会社を利用するとよい。旅行会社を利用する場合にも、必ず文書による予約確認をとっておくこと。
予約をするときには、次のような点について綿密に打ち合わせる。
・期日
・宿泊日数
・人数(性別)
・予算と支払い方法
・到着と出発の時刻
・夕食と朝食の時間
・部屋数
・食事内容に対する注文(追加料理等)
・カラオケ(機種や曲目のチェックなど)設備
・他の関連サービス
・広間使用時間
ロ.宿泊先選択のポイント
・予算範囲内でベストなもの
・団体旅行に適した設備が整っている
・門限がうるさくない
・応対がよい
・料理内容がよい
・客室からの眺望がよい
・関連サービスの内容が豊富である
ハ.バスの予約
予約内容としては、次の項目があげられる。
・期日
・人数
・台数
・行先とコース
・発着時刻
・途中の休憩場所と予定時間
・予算と支払い方法
・車内の設備および等級等の確認
ニ.交通手段の注意点
・現地集合、現地解散は避ける
・マイカー数台に分乗して実施することは、補償責任等について難点があるため絶対に避けるべきである
・慰安旅行の魅力は団体で一緒になって往復することでもあり、なるべく班ごとに経路をかえたり、交通手段をかえたりしないようにする
・土曜、日曜しか運行しない交通機関のある地域へ行く場合はバス利用が一般的
・旅行会社を利用する場合には、宿泊予約の場合と同様、必ず文書による予約確認をとる
・常識以上に値切り過ぎるとバスの等級などを下げられる場合もあるので注意する
・バス予約は、宿泊予約と同じように最低3か月前には行う
ホ.休憩先の予約
予約内容としては、次の項目があげられる。
・期日
・人数
・到着時間
・食事をする場合にはその内容と価格
・支払い方法等
ヘ.レジャー関係の予約
宿泊の翌日の自由行動にレジャー(ゴルフ、テニス、サイクリング、釣り、室内プール等)を実施する場合は、参加人数に応じて予約し、必要なら予約金を払う。
(4)「旅行のしおり」作成と配付
慰安旅行案内は、数ページの「旅行のしおり」として冊子を配付するのが旅行を盛り上げるうえではベターであろう。
イ.「旅行のしおり」には以下の内容を盛り込む。
・旅行先とコース
・日程・発着時刻、利用する交通機関の名称
・参加者の班分け名簿
・観光地情報(立寄先の案内も)
・休憩先の名称・電話番号
・宿泊先の所在地、名称・電話番号
・部屋割り
・幹事会の各係名
・メモ欄、注意事項等
・歌詞集
ロ.作成は1か月前から始め、旅行の1週間前ぐらいに参加者全員に配付し、当日、必ず携行させる。
ハ.宿泊先や休憩場所にも事前に届けておく。
ニ.各幹事が何部か予備を当日に携行すると、何かと役立つ。
ホ.家族との連絡にも役立つよう配慮する。
なお、「旅行のしおり」といった改まったものでなく、次ページのような旅行案内モデルでも支障はない。
(5)部屋割りのポイント
旅行の班分けは、部署単位を基準にするのが一般的であるから、さほどの問題はないが、宿泊場所の部屋割りは次の点に注意する。
イ.できるだけ気の合った者同士を一緒にする。
ロ.幹事役が情報を持ち寄って慎重に決め、事前に参加者に確認しておく。
ハ.幹部についても、役職を考慮したうえで、相性を考えて部屋割りをする。
ニ.主要な幹事役は同室にしておく。
ホ.多人数の部屋には、若い人たちを監督できるような人を配する工夫も必要である。
ヘ.2日目のレジャーのコース別に部屋割りするのもよい。
ト.部屋割り表は、事前に宿泊先に届けておく。
チ.酒グセの悪いことがわかっている人には、飲み過ぎるのを抑えられるような介添者を配するようにする。
社員旅行案内モデル
(6)車中の飲食物、ゲーム考案と商品等の用意
イ.車中はもちろん宴会で、誰もが参加でき、楽しめるゲーム等を用意しておき、必要な用具、賞品等を購入しておく。
ロ.車中での飲食物(日本酒、缶ビール、缶ジュース、つまみ、弁当、紙コップ等)のほか、ごみ袋を出発日前日の夕方までに用意しておく。また、1人1日分の飲食物を一包みにして、ごみ袋も添えて個別に配付できるようにしておくのも気が利いている。
ハ.運転手やガイドへのチップとチップ袋、救急箱と応急手当用品、ビデオ・カメラ類、ワイヤレスマイク、拡声器等、細かいものまで事前にチェックが必要。
(7)旅行前の再チェック
イ.幹事間で役割の再確認をし、各役割にモレがないか調べる。
ロ.業者との打合せ、バス確認、宿泊先確認、参加人数の最終チェックをきちんと行う。
ハ.宴会の司会者に内容を再チェックする。
ニ.必要があれば説明会を開く。
ホ.必要に応じてカメラマンを準備する。
ヘ.旅行の前日に、現金の仮払いを受ける。
<< 当日の運営 >>
(1)出発から到着までのチェック
イ.出発前に、弁当や飲み物、救急箱、カメラなどの荷物を点検。
ロ.バス運転手、ガイドとの打合せ。
ハ.出欠を確認して定刻に発車。
ニ.出発し、一息ついたところで、幹事(司会者)はマイクを取り、自己紹介とその日の日程や注意事項等を話す。
ホ.発車後しばらくして、酒宴を始めるため、用意したビールやジュース、おつまみ類を配る。車内がにぎやかになってきたら、マイクを回して参加者に歌わせる。
ヘ.休憩のため途中下車を計画的にとること。10分くらいの休憩にし、バスに戻る時間を必ず知らせる。何台ものバスに分乗したときは、各車の幹事は集まって状況を報告し合う。休憩時間が終わって乗車したら、必ず人数を確かめて、運転手に発車合図をする。休憩所の支払いには必ず領収証を受け取ること。
ト.宿泊先に近づいたら、到着10分前くらいに、部屋割りと宴会開始時間を知らせる。
チ.到着したら、車内を点検し、運転手、ガイドと明朝の出発時刻や予定について打合せをする。
リ.宿泊先に入ったら、フロントに連絡し、宴会係と細かい点について打合せをする。次に各部屋を回り、その状況を調ベ、避難設備を確認(とくに宴会場からの避難方法を聞いておく)。
ヌ.宴会について司会者と打合せをし、準備を始める。
(2)宴会のポイント
イ.宴会の手順(2時間以内で)
・着席
・開宴の辞(幹事長か司会者)
・開宴の挨拶(社長か役員)
・乾杯(音頭は社長か役員)
・会食
・アトラクション
・手締め(常務)
・終宴の辞(司会者)
ロ.宴会の盛り上げ方のポイント
・例年とは違う内容を取り入れてマンネリ化を防ぐ
・カラオケのオンパレードは避けること
・半分はカラオケ、半分はアトラクションというふうに宴会の大枠を決めておく
・アトラクションの演技者を前もって探し出しておく
・新入社員グループとか、仲よし3人組とかグループを選び出して、前もって十分に練習する時間を与えておくこと
・宴会嫌いの人にも参加できる簡単なゲームを用意して、全員が楽しめるようにする
・宴会の司会者には、管理職でなく、“目立ちたがり屋”でない、明るく、和やかなチームリーダー的な人を選ぶこと
・演技者の紹介には、“営業課いちばんのクールボーイ”“総務課きってのおやじギャル”などとキャッチフレーズをつけて紹介する
・宴会は、宴会後を楽しみにしている人のために、あくまで2時間以内、腹八分目で終わるのが、余韻も残り効果的
・開宴後、30分程度は食事とお酒の時間として取っておき、開宴早々アトラクションというのは避ける
・アトラクションの進行は、まずはカラオケで場を盛り上げ“エンターテイナー”登場で最高潮へ。次にドンチャン騒ぎでグループ参加のゲームなどをもってくる
・コンテスト形式にするのならユニークな賞をいくつか準備しておく
・幹事は開宴1時間前に会場へ行き、上座の席数、歓迎看板のチェック、マイクの本数等を依頼どおりかチェックする
・確認の後、仲居さんにチップを渡し、宴会のスケジュールや会社の性格、上役や幹事の席などを説明し、宴会費の予算も話しておく。仲居さんは宴会のプロで、ビールを抜くタイミング、最初にお酌する人、追加飲み物の割振り、ご飯ものを出す時間を判断してくれる
・席決めは、くじ引きを取り入れてマンネリ化を防ぐ。男女交互に座る形にしたいときは男女別のくじ引きにする。くじ引きは、会場入口で行う。ただし、社長、専務など経営幹部は上席に据え、くじなしにする。幹事席は末席にとること
(3)宴会終了後の注意点
イ.2次会に繰り出したい人のために集合時間と会場を知らせておく。
ロ.自室の冷蔵庫、ルームサービスの使用ルールを伝える。
ハ.中締めの際に、翌日の朝の出発時間等を徹底する。
ニ.全員が退席した後、タバコの吸殻、忘れ物等を点検する。
ホ.宿泊先の宴会係に、会が終了したことを知らせ、早立ちの人の弁当を頼む。
ヘ.幹事は宴会、2次会終了後に集まって、参加者の人数を把握・確認し、翌日のことについて打合せをする。
(4)宿泊翌日の注意点
イ.翌朝、朝食時に必要事項を知らせる。
・出発前の記念撮影等について
・各人の自由選択の組分け
・昼食場所
・出発時間
・連絡先
ロ.食後は、ゴルフ、テニス、サイクリング、釣り、室内プール、麻雀組など、各人の自由選択で組分けして、多様なニーズに応えるよう企画する。その際、各組の運営は、各幹事役の選択希望を調整して分担する。
ハ.各幹事は各組に分かれて行う催事にも危険管理を忘れない。
ニ.不参加、餞別をもらった先への土産物を購入する。
ホ.旅館の支払いをする。
ヘ.出発直前、各部屋の忘れ物を点検する。
ト.人数を確認し、バスに乗り込む。
チ.バス出発後、途中下車希望者を確かめ、運転手に知らせる。
リ.会社に到着したら、忘れ物がないか車内を点検する。
ヌ.荷物をおろして、運転手、ガイドに礼を言い、支払いを済ませる。
ル.後片付けをし、時間があればその日のうちに幹事は収支を精算し、幹事会を開く。
(5)日程終了後の注意点
イ.決算報告をする
・なるべく早く費用明細を記録し、仮払い分、未払い分の精算を終了する
・決算報告書を作成し、幹事会を開いてその了承を得た後、会社所定の手続きに従って会社の承認を受けるようにする
・参加者に個人負担金を賦課した場合には、参加者全員にも決算報告書を公表し、その了承を求めるようにする
ロ.関係先への挨拶
・帰着した翌日、すぐに会社トップ、餞別受領先などに挨拶し、協力を感謝する
・餞別受領先、不参加者に土産を渡す
ハ.記録
・写真を参加者に回覧して注文を取り、焼増しを発注して配付する
・社内報用として回覧分を保存する
・記録は次期幹事に引き継ぐ
ニ.引継ぎ
・次期幹事を選出する
・今期幹事の慰労会も兼ねて、新旧幹事の事務引継ぎを行う
<< 支出費用の経理処理と税務取扱い >>
会社が支出した従業員等に対する慰安旅行の費用については、次のすべての要件を満たしている場合は、福利厚生費として損金処理が認められている。
イ.旅行期間が3泊4日(目的地が海外の場合は、目的地における滞在日数が3泊4日)以内のものであること
ロ.旅行費用の50%以上を会社が負担していること
ハ.旅行に参加する従業員等の数が、全従業員等(工場、支店等で行う場合は、当該工場、支店等の従業員等)の50%以上であること
著者
橋口 寿人(経営評論家)
慰安旅行の目的は、改めて述べるまでもないが、次のようなところにある。
イ.同じ業務組織に属するメンバーの別の人間性に触れることによって、社内に新しいコミュニケーションを生み出し、その後の業務の新たな発展につながるチャンスとする。
ロ.心身をリフレッシュさせ、間接的に労働意欲を高める。
ハ.いつも顔を合わせているメンバーであっても、未知の景色、風物、食べ物などを共にすることによって、親睦をさらに深め、一体感を醸成する。
ニ.海外慰安旅行などは、各個人の見聞を広め、旅する楽しみ、喜びを満たし、社員の定着率を高めることにつながる。
<< 計画のポイント >>
(1)社員のニーズに沿った企画づくり
個人の価値観や好みの多様化に伴い、従来の「社員同士が一緒になって、宴会でドンチャン騒ぎをして、日頃のウサを晴らす」という、慰安旅行のイメージは変化しつつある。そこで、できるだけ会社主体の御仕着せ的レジャーの色合いを薄め、次の点を考慮して社員のニーズに沿うよう努力する。
・幹事役に各人が気軽に要求を言えるようにする
・宴会を新しい趣向と人で盛り上げ、おもしろいものにする
・スケジュールに多様性をもたせ、いろいろな催しを企画する……たとえば、1泊2日の場合、到着した夜は全体で宴会会食としても、翌日はテニス組、サイクリング組、名所旧跡めぐり組、魚釣り組、ハイキング組、ゴルフ組、室内水泳組などに分かれて、各自、好きな組に参加できるようにする
・拘束時間をなるべく少なくする
・個人負担金を軽くする
・グルメ志向派にも満足される食事を手配する
(2)準備委員(幹事)会を設置して、計画を固めていく
イ.全社的な規模で開催するだけに、準備委員(幹事)を社内各セクションごとに選出し、準備委員会で、計画を検討し固めていく。
ロ.幹事役には、常識をわきまえた機転のきく人物を選ぶ。各セクションごと(旅行参加者l0~20名に1人の割合)に選ぶのが無難である。
たとえ旅行に参加する社員が少なくても、必ず複数の幹事を選出しておくと、幹事の心身の負担が軽減される。
国内1泊2日バス旅行の場合の、幹事を中心とする手配計画書モデルは次のとおり。
幹事の分担手配計画書モデル(旅行会社利用の場合)
(3)会社側の意向は幹事会に伝える
会社側(主に総務部)としては、旅行の安全はもとより、予算内での実施、旅行目的の達成等について、準備委員(幹事)会に協力する形で参加しながら検討していくようにする。
その際、会社側があまりにも多くの要請をしたりすると、社員側からは、自由行動の規制と受け取られたりして、全員参加が望めないどころか“何のための慰安旅行か”と思われかねないので注意すること。
(4)慰安旅行の費用
会社側として、慰安旅行についてどの程度の力を入れているか、自社の旅行内容について検討してみること。
(5)最近の海外慰安旅行について
最近、円高とパッケージツアーの普及で海外への社内慰安旅行を行う企業が増えている。「どうせ同じくらいの費用がかかるのなら海外のほうが…」という考え方が定着しつつある。
さらに税制面でも平成元年4月から、海外への社内慰安旅行費用の非課税とされる範囲が拡大し、従来の「2泊3日以内」(現地の滞在日数)の非課税期間が、「3泊4日以内」に改正された。
(6)「海外への社内慰安旅行のポイント
・海外での慰安旅行は、集団行動は控えめにして、あくまで個人優先の考え方をベースにする
・行先の決定方法は、社内アンケートを行い年齢層や男女の別によって不満が出ないよう工夫する
・旅行費用は全額会社負担が主流であるが、渡航手続きに関する諸費用(旅券印紙代、査証費など)、食費、国内および旅行先での交通費など、個人にかかる性質のものに対して、どこまで会社が補助するのか、事前によく話し合う
・計画は実施日の1年以上前から立てる。諸手続きにかかる日数も考えると、半年、ぎりぎりでも3か月前には旅行代理店に相談して準備を始める
・休業することにより業務に影響を与えたくない場合には、グループごとに分けて出かける
・不参加者は有給休暇扱いにするが、グループごとに出かける場合は、平常どおりに勤務を行うのもよい
・参加に代えて金銭を支給すると、税務上、参加者にかかった費用もすべて課税対象とみなされるので注意する
<< 事前準備 >>
(1)旅行先のアンケート調査
ここでは、一般的なバス利用の1泊慰安旅行について、準備モデルを作成することにしたい。
予算の枠内で、いかに効果的に親睦の目的を果たすかということを幹事会で検討していくわけだが、幹事会でまずしなければならないのは、旅行先とコース等を社員の投票で決めることである。
イ.幹事会で慰安旅行先の候補地をいくつか選んでおいて、人気投票で決めるのがよい。その際、1.温泉地、2.自然景観のよい所、3.名所旧跡、4.大都会、5.登山ハイキング等のジャンルに分け、それぞれいくつかの候補地を幹事会が選んでおき、パンフレットやその他の参考資料も公開して、できるだけ全員の意向に沿うよう努力することが大切である。
ロ.旅行先とともに、旅行中の催しはどんなことがしたいか、宿泊場所はどんな所がよいか等も含めて、アンケート形式で従業員全体に問うのもよい。
(2)企画の作成
次に、幹事会は旅行先とコースの決定、宿泊場所選び、交通機関や期日の選定、宴会をどのように盛り上げるか等、担当者を決めて、相当の時間をかけて無理のない、余裕をもった計画をつくり、準備に当たる。
イ.目的に沿ってプランを作成する
・実施の日時
・旅行先
・周遊地
・宿泊場所
・交通手段
・旅行中の催し
・予算の配分、個人負担金の額と賦課方法
・参加者の班分け
ロ.固まった企画をもとに幹事会での役割分担を決める
・本部(実施管理の総括・事故防止管理)
・交渉係(旅行会社を利用する場合)
・交通係(バス手配と切符配付、人数把握)
・宿泊係(旅館予約)
・飲食物係(車中のアルコール・ジュース類、つまみ、菓子、昼食手配等)
・宴会係(宴会・2次会の準備と手配)
・会計係(現金出納集中管理、予算、精算)
・記録係(しおり作成、写真撮影、写真頒布)
・救急係(救急箱の携行と救護)
以上、相互の連携を密にしながら、それぞれの準備と運営にモレのない、詳細な計画を立てること。
(3)業者の手配、交渉
イ.宿泊予約
最近の観光地や都会のホテル・旅館の予約状況からすると、最低でも3か月前には予約しておく。
宿泊予約は、旅行会社を経由する方法と直接交渉する方法がある。幹事役が下見をして、現地で直接予約できればベストだが、その余裕がない場合や、海外旅行を予定するときなどは、情報量の多い信用のおける旅行会社を利用するとよい。旅行会社を利用する場合にも、必ず文書による予約確認をとっておくこと。
予約をするときには、次のような点について綿密に打ち合わせる。
・期日
・宿泊日数
・人数(性別)
・予算と支払い方法
・到着と出発の時刻
・夕食と朝食の時間
・部屋数
・食事内容に対する注文(追加料理等)
・カラオケ(機種や曲目のチェックなど)設備
・他の関連サービス
・広間使用時間
ロ.宿泊先選択のポイント
・予算範囲内でベストなもの
・団体旅行に適した設備が整っている
・門限がうるさくない
・応対がよい
・料理内容がよい
・客室からの眺望がよい
・関連サービスの内容が豊富である
ハ.バスの予約
予約内容としては、次の項目があげられる。
・期日
・人数
・台数
・行先とコース
・発着時刻
・途中の休憩場所と予定時間
・予算と支払い方法
・車内の設備および等級等の確認
ニ.交通手段の注意点
・現地集合、現地解散は避ける
・マイカー数台に分乗して実施することは、補償責任等について難点があるため絶対に避けるべきである
・慰安旅行の魅力は団体で一緒になって往復することでもあり、なるべく班ごとに経路をかえたり、交通手段をかえたりしないようにする
・土曜、日曜しか運行しない交通機関のある地域へ行く場合はバス利用が一般的
・旅行会社を利用する場合には、宿泊予約の場合と同様、必ず文書による予約確認をとる
・常識以上に値切り過ぎるとバスの等級などを下げられる場合もあるので注意する
・バス予約は、宿泊予約と同じように最低3か月前には行う
ホ.休憩先の予約
予約内容としては、次の項目があげられる。
・期日
・人数
・到着時間
・食事をする場合にはその内容と価格
・支払い方法等
ヘ.レジャー関係の予約
宿泊の翌日の自由行動にレジャー(ゴルフ、テニス、サイクリング、釣り、室内プール等)を実施する場合は、参加人数に応じて予約し、必要なら予約金を払う。
(4)「旅行のしおり」作成と配付
慰安旅行案内は、数ページの「旅行のしおり」として冊子を配付するのが旅行を盛り上げるうえではベターであろう。
イ.「旅行のしおり」には以下の内容を盛り込む。
・旅行先とコース
・日程・発着時刻、利用する交通機関の名称
・参加者の班分け名簿
・観光地情報(立寄先の案内も)
・休憩先の名称・電話番号
・宿泊先の所在地、名称・電話番号
・部屋割り
・幹事会の各係名
・メモ欄、注意事項等
・歌詞集
ロ.作成は1か月前から始め、旅行の1週間前ぐらいに参加者全員に配付し、当日、必ず携行させる。
ハ.宿泊先や休憩場所にも事前に届けておく。
ニ.各幹事が何部か予備を当日に携行すると、何かと役立つ。
ホ.家族との連絡にも役立つよう配慮する。
なお、「旅行のしおり」といった改まったものでなく、次ページのような旅行案内モデルでも支障はない。
(5)部屋割りのポイント
旅行の班分けは、部署単位を基準にするのが一般的であるから、さほどの問題はないが、宿泊場所の部屋割りは次の点に注意する。
イ.できるだけ気の合った者同士を一緒にする。
ロ.幹事役が情報を持ち寄って慎重に決め、事前に参加者に確認しておく。
ハ.幹部についても、役職を考慮したうえで、相性を考えて部屋割りをする。
ニ.主要な幹事役は同室にしておく。
ホ.多人数の部屋には、若い人たちを監督できるような人を配する工夫も必要である。
ヘ.2日目のレジャーのコース別に部屋割りするのもよい。
ト.部屋割り表は、事前に宿泊先に届けておく。
チ.酒グセの悪いことがわかっている人には、飲み過ぎるのを抑えられるような介添者を配するようにする。
社員旅行案内モデル
(6)車中の飲食物、ゲーム考案と商品等の用意
イ.車中はもちろん宴会で、誰もが参加でき、楽しめるゲーム等を用意しておき、必要な用具、賞品等を購入しておく。
ロ.車中での飲食物(日本酒、缶ビール、缶ジュース、つまみ、弁当、紙コップ等)のほか、ごみ袋を出発日前日の夕方までに用意しておく。また、1人1日分の飲食物を一包みにして、ごみ袋も添えて個別に配付できるようにしておくのも気が利いている。
ハ.運転手やガイドへのチップとチップ袋、救急箱と応急手当用品、ビデオ・カメラ類、ワイヤレスマイク、拡声器等、細かいものまで事前にチェックが必要。
(7)旅行前の再チェック
イ.幹事間で役割の再確認をし、各役割にモレがないか調べる。
ロ.業者との打合せ、バス確認、宿泊先確認、参加人数の最終チェックをきちんと行う。
ハ.宴会の司会者に内容を再チェックする。
ニ.必要があれば説明会を開く。
ホ.必要に応じてカメラマンを準備する。
ヘ.旅行の前日に、現金の仮払いを受ける。
<< 当日の運営 >>
(1)出発から到着までのチェック
イ.出発前に、弁当や飲み物、救急箱、カメラなどの荷物を点検。
ロ.バス運転手、ガイドとの打合せ。
ハ.出欠を確認して定刻に発車。
ニ.出発し、一息ついたところで、幹事(司会者)はマイクを取り、自己紹介とその日の日程や注意事項等を話す。
ホ.発車後しばらくして、酒宴を始めるため、用意したビールやジュース、おつまみ類を配る。車内がにぎやかになってきたら、マイクを回して参加者に歌わせる。
ヘ.休憩のため途中下車を計画的にとること。10分くらいの休憩にし、バスに戻る時間を必ず知らせる。何台ものバスに分乗したときは、各車の幹事は集まって状況を報告し合う。休憩時間が終わって乗車したら、必ず人数を確かめて、運転手に発車合図をする。休憩所の支払いには必ず領収証を受け取ること。
ト.宿泊先に近づいたら、到着10分前くらいに、部屋割りと宴会開始時間を知らせる。
チ.到着したら、車内を点検し、運転手、ガイドと明朝の出発時刻や予定について打合せをする。
リ.宿泊先に入ったら、フロントに連絡し、宴会係と細かい点について打合せをする。次に各部屋を回り、その状況を調ベ、避難設備を確認(とくに宴会場からの避難方法を聞いておく)。
ヌ.宴会について司会者と打合せをし、準備を始める。
(2)宴会のポイント
イ.宴会の手順(2時間以内で)
・着席
・開宴の辞(幹事長か司会者)
・開宴の挨拶(社長か役員)
・乾杯(音頭は社長か役員)
・会食
・アトラクション
・手締め(常務)
・終宴の辞(司会者)
ロ.宴会の盛り上げ方のポイント
・例年とは違う内容を取り入れてマンネリ化を防ぐ
・カラオケのオンパレードは避けること
・半分はカラオケ、半分はアトラクションというふうに宴会の大枠を決めておく
・アトラクションの演技者を前もって探し出しておく
・新入社員グループとか、仲よし3人組とかグループを選び出して、前もって十分に練習する時間を与えておくこと
・宴会嫌いの人にも参加できる簡単なゲームを用意して、全員が楽しめるようにする
・宴会の司会者には、管理職でなく、“目立ちたがり屋”でない、明るく、和やかなチームリーダー的な人を選ぶこと
・演技者の紹介には、“営業課いちばんのクールボーイ”“総務課きってのおやじギャル”などとキャッチフレーズをつけて紹介する
・宴会は、宴会後を楽しみにしている人のために、あくまで2時間以内、腹八分目で終わるのが、余韻も残り効果的
・開宴後、30分程度は食事とお酒の時間として取っておき、開宴早々アトラクションというのは避ける
・アトラクションの進行は、まずはカラオケで場を盛り上げ“エンターテイナー”登場で最高潮へ。次にドンチャン騒ぎでグループ参加のゲームなどをもってくる
・コンテスト形式にするのならユニークな賞をいくつか準備しておく
・幹事は開宴1時間前に会場へ行き、上座の席数、歓迎看板のチェック、マイクの本数等を依頼どおりかチェックする
・確認の後、仲居さんにチップを渡し、宴会のスケジュールや会社の性格、上役や幹事の席などを説明し、宴会費の予算も話しておく。仲居さんは宴会のプロで、ビールを抜くタイミング、最初にお酌する人、追加飲み物の割振り、ご飯ものを出す時間を判断してくれる
・席決めは、くじ引きを取り入れてマンネリ化を防ぐ。男女交互に座る形にしたいときは男女別のくじ引きにする。くじ引きは、会場入口で行う。ただし、社長、専務など経営幹部は上席に据え、くじなしにする。幹事席は末席にとること
(3)宴会終了後の注意点
イ.2次会に繰り出したい人のために集合時間と会場を知らせておく。
ロ.自室の冷蔵庫、ルームサービスの使用ルールを伝える。
ハ.中締めの際に、翌日の朝の出発時間等を徹底する。
ニ.全員が退席した後、タバコの吸殻、忘れ物等を点検する。
ホ.宿泊先の宴会係に、会が終了したことを知らせ、早立ちの人の弁当を頼む。
ヘ.幹事は宴会、2次会終了後に集まって、参加者の人数を把握・確認し、翌日のことについて打合せをする。
(4)宿泊翌日の注意点
イ.翌朝、朝食時に必要事項を知らせる。
・出発前の記念撮影等について
・各人の自由選択の組分け
・昼食場所
・出発時間
・連絡先
ロ.食後は、ゴルフ、テニス、サイクリング、釣り、室内プール、麻雀組など、各人の自由選択で組分けして、多様なニーズに応えるよう企画する。その際、各組の運営は、各幹事役の選択希望を調整して分担する。
ハ.各幹事は各組に分かれて行う催事にも危険管理を忘れない。
ニ.不参加、餞別をもらった先への土産物を購入する。
ホ.旅館の支払いをする。
ヘ.出発直前、各部屋の忘れ物を点検する。
ト.人数を確認し、バスに乗り込む。
チ.バス出発後、途中下車希望者を確かめ、運転手に知らせる。
リ.会社に到着したら、忘れ物がないか車内を点検する。
ヌ.荷物をおろして、運転手、ガイドに礼を言い、支払いを済ませる。
ル.後片付けをし、時間があればその日のうちに幹事は収支を精算し、幹事会を開く。
(5)日程終了後の注意点
イ.決算報告をする
・なるべく早く費用明細を記録し、仮払い分、未払い分の精算を終了する
・決算報告書を作成し、幹事会を開いてその了承を得た後、会社所定の手続きに従って会社の承認を受けるようにする
・参加者に個人負担金を賦課した場合には、参加者全員にも決算報告書を公表し、その了承を求めるようにする
ロ.関係先への挨拶
・帰着した翌日、すぐに会社トップ、餞別受領先などに挨拶し、協力を感謝する
・餞別受領先、不参加者に土産を渡す
ハ.記録
・写真を参加者に回覧して注文を取り、焼増しを発注して配付する
・社内報用として回覧分を保存する
・記録は次期幹事に引き継ぐ
ニ.引継ぎ
・次期幹事を選出する
・今期幹事の慰労会も兼ねて、新旧幹事の事務引継ぎを行う
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会社が支出した従業員等に対する慰安旅行の費用については、次のすべての要件を満たしている場合は、福利厚生費として損金処理が認められている。
イ.旅行期間が3泊4日(目的地が海外の場合は、目的地における滞在日数が3泊4日)以内のものであること
ロ.旅行費用の50%以上を会社が負担していること
ハ.旅行に参加する従業員等の数が、全従業員等(工場、支店等で行う場合は、当該工場、支店等の従業員等)の50%以上であること
著者
橋口 寿人(経営評論家)
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