ビジネスわかったランド (会社行事)

福利厚生関係

社内スポーツ大会
<< 社内スポーツ大会の目的 >>

社内スポーツ大会の意義・目的としては、次のような項目があげられる。
イ.日頃顔を合わせる機会の少ない本社、各工場、各支店、さらにいつも顔を合わせてはいるが、直接接触することの少ない同じ社屋内の各部課が一堂に会し、スポーツに汗を流すことにより親睦を深めることができる。
ロ.家族やOB、協力工場の人たちの参加により、全体の連帯感を養い育てることができる。
ハ.比較的気軽に参加でき、しかも社員全体の団結力を高めることができる。
社内スポーツ大会というのは、全従業員が一堂に会する貴重な機会でもある。従業員の健康増進と親睦、家族を含めた融和を図る意義ある行事でもある。したがって、あくまで、誰でも無理なく参加でき、明るく、楽しい、いい汗を流す大会にしたいものである。
なかには「何が何でも全員参加」ということで、強制的に参加させたり、参加率を高めるために国体並みの仰々しい開会式をするところもあるが、それでは従業員の反発を買うだけで、目的からズレてしまうことにもなりかねないので注意したい。

<< 事前準備 >>

(1)担当部門で基本方針を決める
一般的に、社内スポーツ大会は福利厚生行事であるから、福利厚生に携わる人事部や総務部の厚生担当が中心になって企画することになる。
まず、具体的な企画立案のスタートは、半年前くらいからということになろう。秋はスポーツの季節ともいわれ、各種スポーツ大会を開く企業も多いので、もし10月に開く予定なら、4月の年度始めには日時(雨天順延日も含めて)、大まかな形式、余興・アトラクションの有無、予約の要・不要などをリストアップしておく。

(2)日程はいち早く社内発表する
日程が決まったらいち早く社内発表し、社内行事として他のスケジュールと重複しないように調整することが大切。とくに会社のトップの日程は事前に押さえ、可能な限り出席してもらうように手配する。

(3)実行委員の募集
スポーツ大会を運営するに当たって中心的に動くのは、各部、各課、各係から選ばれた実行委員である。
実行委員の募集は、10月開催の場合を想定すると、2~3か月前の7月から8月の上旬にスタートし、1週間か2週間で確定する。
募集通知のモデルは、次のとおり。

実行委員会を組織するに当たっては、たとえば会長(社長)、実行委員長(総務部長)などのほか、各課、各係から1人ずつ選出し、合わせて10~20名で組織する方法が一般的である。

(4)実行委員会を開き、具体的準備に入る
10月開催として、8月中旬までには大まかな運営の方針を固め、実行委員会を開き、原案の承認を得て、具体的な準備に入る。
組織と、役割分担は次のようになる。
イ.総括係
・競技種目を競技係と共同で立案
・アトラクション(大学の体操部、女子高のバトンクラブ、市の吹奏楽団などを招く)の交渉
・来賓(トップやOB会代表)への案内状送付等と送迎
・その他全般の掌握と推進など
ロ.会場係
・会場の手配と設営
・入場行進用のプラカード、観覧席の表示板、敷物などの手配
・電気配線と放送設備の手配
・道路、駐車場、トイレなどの点検と標識の手配など
ハ.競技係
・競技種目の立案と内容の検討
・種目別出場者の人選
・競技用具の準備
・競技種目別の進行分担など
ニ.審判係
・競技内容の認識と徹底
・競技ごとの審判員表の作成
・判定方法の検討と徹底
・スタート用ピストルなど小道具類の調達など
ホ.配給係
弁当、菓子、果物、飲み物の購入と配付など
ヘ.商品係
競技別賞品、対抗戦総合賞、福引用景品などの検討と購入・配付など
ト.模擬店係
模擬店の構成・企画、業者手配、食券発行・管理など
チ.接待係
役員、来賓、プレス等の受付・接待など
リ.駐車場係
駐車場確保の交渉、車の誘導・整理、専用バスの案内など
ヌ.得点係
ル.放送係
総合司会・進行、連絡、放送機器の手配・整備など
ヲ.写真係
社内記録・社内報用の写真撮影など
ワ.救護係
ケガ人、事故者への応急処置、救急車の手配など
これら各分担が決まると外部との交渉に入るが、そのチェックポイントとしては、次のような項目があげられる。
□運動場の確保
自社の施設があればその整備をして使用するのがベストだが、運動場を借りる場合は、次の点に注意して交渉に臨むことが肝要である。
・公共施設の場合
公共施設は、申し込んでも抽選になる場合が多く、確保できるかどうかは疑問。しかし、料金面等での魅力は捨てがたい。したがって、人海戦術で申し込むと同時に、できるだけ体育の日や土曜・日曜日を避け、比較的利用者の少ないウイークデーなどを選ぶようにしたい。
・民間施設の場合
私立学校、民間会社、民間遊園地などは、料金は高めになるが、早め(遅くとも開催日の半年前から4か月前くらいまで)に予約すれば確保できよう。
・雨天日の対応策
予約日が雨なら不運と諦めざるを得ないが、予算・日程等が許せば雨天順延の予備日・候補地まで手配する。予備日がとれず、予定どおりの開催を望む場合は、エアドームや屋内体育館を利用するべきである。もっとも、これだと青空のもとで体を動かし、汗を流す爽快感は味わえないという欠点は忍ばざるを得ない。
・運動場周辺住民への事前断わり
市街地の運動場を使用する場合は、スピーカーやスターターピストル等の騒音、さらにはマイカーの出入りに伴う迷惑を考慮し、開催日の1、2週間前には周辺住民宅へ断わりのための事前訪問をすることも考えてみるべきであろう。
□飲食物、模擬店、景品の手配
・飲食物、模擬店
模擬店は、運動会を盛り上げる格好の出し物である。昼食用の弁当(幕の内、寿司の折詰め、サンドイッチなど)のほか、ビール、ジュース、コーラ、アイスクリーム、果物、菓子類、焼鳥、焼きソバ、お好み焼きなどの飲食物の搬入、模擬店の設営を交渉する。
・雨天の場合の処理
主催者側の最大の悩みの種は、雨天の場合の処理である。通常、弁当業者は、深夜から作業にかかる。したがって、主催者が運動会の中止を決める頃には、ほぼ注文の数量ができあがっているとみなければならず、できあがったものについては買い取るのが通例である。その処理を事前に検討しておくことが肝要となる。
なお、カンもの、ビンものは、雨天キャンセルが可能だが、前もって個別にきちんと条件を決めておきたい。
・景品類の充実
最近は、弁当類は各自が手軽に調達できるようになっている。そこで、弁当、飲み物等は参加者個人の調達とし、かわりにその費用を参加者の大半に行き渡るような福引の景品に充当するところが多くなっている。これだと景品はかなりデラックスにできるうえ、雨天中止の場合の弁当等の処理に悩む必要もない。
□民放ラジオ局のスポットで実施・中止の連絡を
中・大規模な運動会の場合は、当日、参加者に決行か中止かを伝えるために、民放のラジオ・スポットを1、2本買っておくのも1つの方法である。 
「中止・決行は、○○局の×時の放送で知らせます」とあらかじめ伝えておけば、問合せの電話に悩まされることもないであろう。
□運搬・輸送用の車の手配
・遠くにグラウンドがある場合や、交通の不便な場所にグラウンドがある場合は、輸送用のバスの調達も考える必要がある。
・来賓送迎用の乗用車も別に手配する。
・用具運搬用のカートを前もって準備しておく。
□ケガ人対策
普段運動をしていない人が急に運動をすると思わぬケガや事故につながることがある。したがって、運動場近くの救急病院等の下調べは、きちんとやっておくこと。

(5)競技プログラムの作成
競技プログラムは、総括係と競技係が中心となって原案を作成し、それを委員会で討議し、練り上げる形で固めていく。定まった形式はないが、誰もが無理なく参加できる内容にすべきである(一般的な競技種目は461ページ参照)。
いずれにしても、1日どっぷりスポーツづけというのではなく、会場への往復の時間も考慮して、開始はせいぜい午前10時、終了は15時から16時くらいまでにすべきであろう。
なお、競技種目が決定したら、各部(あるいは課)ごとに次のような出場参加依頼書(運動会出場者報告)を配付して出場選手を募る。
出場参加依頼書モデル

続いて、各競技に出場する選手が決まった段階で、次ページのような「競技種目進行カード」といった進行管理カードを競技ごとに作成し、スムーズな運営ができるよう準備を行う。
競技種目進行カードモデル


(6)競技用具等の準備
競技用具等の準備については、プログラムの内容によって異なってくるが、全員が気軽に、楽しく参加できるレクリエーション的なものを中心に考えると、次のような用具が必要となろう。
イ.運営用具
●会場設営用具
・テント、テーブル、椅子、観客用の敷物
・入退場門、会場アーチ、会場案内図
・トイレ、駐車場、道路等の各表示案内立札
・掲示板、得点掲示板
・国旗、社旗、万国旗などの装飾旗
●放送用具
・マイク、ワイヤレスマイク、アンプ、CD・レコードプレーヤー、連絡
用トランシーバー、各種ケーブル、各種マイクスタンド 
●記録用具
・ビデオカメラ、スチールカメラ 
●救急用具
・担架、救急箱、救急薬品
●接待用具
・湯茶飲食のための食器類
ロ 競技用具
●競技使用用具(競技の種類によって異なる。一例)
・各色のはち巻、各色のバトン
・綱(マニラ麻ロープ)、紙袋、パン食い競争のパンとひも
・テニスラケット、お玉杓子、ボール類
・平均台、ネット、跳び箱、ハードル
●競技進行用具
・指揮台、各部署別のプラカード、入場行進用のプラカード、表彰台
・ホイッスル、ストップウォッチ、テープ
・紅白の大旗・小旗、着順旗、目標旗、コーナー旗
・ライン引き、石灰粉、巻尺
・審判帽子、腕章、リボン
・トランシーバー、メガホン、信号用ピストル
なお、競技用具の準備を業者に任せるという方法もある。自社の希望を明示すれば、用具の準備・持込み・撤収等まで、すべてやってもらえる。自社の係員は、参加者の確保、招集など、進行面だけにタッチすればよいわけである。

(7)会場設営のポイント
イ.必要施設
会場に必要な施設としては、受付、本部席、来賓席、救護所、出場者集合所、トイレ、更衣室、用具等保管所、模擬店・売店などがある。
ロ.会場レイアウト
会場レイアウトの大要は、次のモデルのとおり。
会場レイアウトモデル

設営のポイントは、次のとおり
・本部席は、会場全体が見通せる位置に設置する
・ゴールは、本部席前にもってくるようにする
・用具保管所は、ゴールのそばに設定する

<< 当日の運営 >>

(1)開会までの注意点
イ.決行か中止かの決定は午前5時前後までに
中止かどうかの決定は午前5時頃までに行い、もし中止の場合は、飲食物関係、アトラクション関係、来賓関係、さらにはその他業者等への連絡を速やかに行う。
ロ.電話問合せセンターを設置
中止か決行か、その他の事項について問合せがある場合を想定して、電話問合せセンターをあらかじめ設置しておき、迅速に応対できるようにする。
ハ.実行委員の点呼・配置は2時間前に
実行委員は、一般参加者より2時間程度早めに集合し、改めて分担を確認しておく。
重点チェックポイントとしては、次の項目がある。
・会場係……会場の設営を前日のうちに行うこともあり、その場合は泊込みもあり得るが、業者に設営を依頼した場合はその立会い、連絡・確認をこまめにすることでミスや遅れを防ぐ
・駐車場係……最寄駅に立つ案内担当、専用バス担当は、早めに配置につき、道路案内の標識等を確認する
・放送係……スポーツ大会は、全参加者の意欲を高める雰囲気づくりが大切。したがって、放送係は、参加者が会場に到着し始めるのに合わせて、行進曲風の音楽を流すようにする

(2)プログラムの進行
プログラムのモデルは、次に示すとおりである。
イ.全員集合
ロ.開会式
・開会宣言
・国旗掲揚、社旗掲揚(省略も可)
・開会の挨拶
・優勝旗返還(前年の優勝部課長)
・選手宣誓
・準備体操(ラジオ体操など)
ハ.競技(午前の部)
・部課対抗リレー出場選手入場行進
・リレー予選
・借り物競走
・小学生参加ボール蹴りリレー
・騎馬戦
・来賓、役員によるスプーンレース
ニ.社長挨拶(l2時頃)
ホ.昼食
ヘ.ブラスバンドとバトントワラーズ
ト.体操模範演技
チ.競技(午後の部)
・主婦参加の買物競走
・綱引き
・仮装行列
・部課対抗リレー決勝
リ.閉会式(l5時からl6時までの間に)
・成績発表
・表彰
・国旗、社旗降納(省略も可)
・閉会宣言
・閉会の挨拶
・解散

(3)運営のポイント
イ.開会式のポイント
・開会式は、1つのセレモニーであり、整然とした団体行動が求められる。自由に楽しむのは後に続く競技やアトラクションに譲るとして、せめてセレモニーだけは、きちんとやりたい
・各種の挨拶などは極力短くし、キビキビした雰囲気で始められるように心掛ける
・トップの出席はもちろんだが、各部課別の従業員とその家族の参加率を競わせるなど、オープニングから盛り上げる
・会場が不便なところにある場合や参加者の短期集中による混雑を避けるため、開会式は従業員のみの行事とする方法も検討してみる
・開会式の直後には、準備体操を組み込み、入念に体をもみほぐすことが大切。日頃運動に親しんでいないにもかかわらず、急に激しい運動をすることはケガのもとだからである
ロ.競技進行のポイント
・競技の進行は競技係が中心となり、審判係、放送係と緊密に連絡をとりながら予定に従って進めていくが、この種の進行はともすれば遅れがちとなる。そこで、時間が押してきたときは、回数を減らしたり、種目をカットしたりして、基本的には午前中の予定のものは午前中に終わらせるという方向で臨機応変に対処することが肝要である。したがって、参加者には事前にその旨を伝えておくようにする
・総合司会は、競技の模様を紹介しながら、参加者の関心を引き付けるように心掛けたい。競技者のエピソードなども織り混ぜながら紹介していくと、より親しみが湧く。そのためには、事前の取材が必要となる
ハ.閉会式のポイント
・交通の混雑を避けるため、従業員以外はひと足先に帰れるよう、バスを閉会式の1時間前に出す等の工夫も必要
・閉会式も手短にやるのが望ましい。
・最後は、万歳三唱で締めくくるのもケジメがついてよい
・帰途の参加者輸送バスについては、来賓、OB、家族などの座席確保を優先し、有終の美を飾るようにしたい

<< 支出費用の経理処理と税務取扱い >>

社内スポーツ大会に支出した費用としては、グラウンド使用料、弁当代、賞品、アトラクションのためのタレント等への報酬、用具類の購入費用などがあげられるが、これらはすべて原則的に福利厚生費として損金処理することができる。従業員の家族を対象とした補助金、家族に対する土産も同じ扱いとなる。しかし、著しく高額な賞品や家族に対する土産は、従業員に対する給与となる。
なお、取引先従業員を参加させた場合にかかった費用は、交際費となる。取引先従業員に対する土産にかかった費用も同じく交際費となる。

著者
橋口 寿人(経営評論家)