ビジネスわかったランド (会社行事)

安全防災衛生

安全行事
<< 安全行事の目的 >>

会社での安全行事には、社会的な意味と社内的な意味がある。

(1)社会的な意味
イ.全国安全週間
全国安全週間(7月1日から7月7日まで)は、「産業界における自主的な労働災害防止活動を推進するとともに、広く一般の安全意識の高揚と安全活動の定着を図ること」を目的として、労働省およびその外郭団体や総理府等が核となって行う、社会的行事の1つである。
この安全週間は、昭和3年以来、第2次世界大戦等の大きな社会情勢の変動があったにもかかわらず、1回の中断もなく毎年実施されている。
ロ.安全意識の高揚
わが国の労働災害は、昭和30年代をピークに、大幅に減少した。しかし最近は、その減少率が鈍化している。
こうした労働災害の発生に、いっそうの歯止めをかけ、さらにはゼロにするためにも、徹底した安全管理の推進と安全意識の高揚を図ることが不可欠である。

(2)社内的な意味
イ.個々の安全意識を高揚させる
「人命は地球よりも重い」という言葉があるように、人の命は何よりも尊重すべきである。
ところが、日常の業務に追われ、また忙しさにかまけて、安全対策は二の次になっている場合が多い。しかし、事故が起きてから悔やんでもどうにもならない。
そこで、年1回の安全週間には、全社をあげての安全行事を実施し、安全に対する認識を職場全体に浸透させると同時に、個々の安全意識を高揚させる必要がある。
ロ.労働災害をゼロにする
清潔で明るく安全な職場というイメージを定着させるためにも、安全対策を徹底し、労働災害をゼロにすることは急務である。

<< 事前準備 >>

(1)開催日および開催期間の決定
全国安全週間は、前述したとおり毎年7月1日から7月7日までであるが、それ以前に6月1日から30日までの1か月間を全国安全週間準備月間と定めている。
もちろん、業種によっては、安全旗の掲揚をはじめとした安全行事を、毎月実施している事業場もある。
だが、全社をあげての安全行事は、テレビ・ラジオ・新聞等を通して世論の高まる全国安全週間に開催したほうが、より効果が上がる。
また、安全週間期間中に安全大会日(安全式)を設け、行事全体を引き締めるようにする。
ちなみに、総理府主催の「国民安全の日」は、7月1日である。

(2)規模と内容の設定
イ.規模は、職場災害が発生しやすい業種か否かによって違ってくるが、行事の開催期間が長く、また内容も多いので、各工場(各営業所)単位で実施する。安全大会日も同様である。
ただし、安全大会日だけは、統一的に本社で一括して開催するという企業もある。
ロ.内容は、行事の基本理念が「人命尊重」にあるところから、以下の3項目に重点を置いたものにする。
・安全意識の高揚
・安全重点実施事項の再点検
・法定設備安全点検の実施
そして、「安全はトップから」という言葉があるように、経営者自らの災害防止に対する基本方針が明確に打ち出された内容にする。そのためにも、職場の安全に貢献したチームや個人を安全大会日に表彰して、経営者自らが謝辞を述べるようにする。

(3)準備委員会の設置とその仕事
イ.安全行事運営委員会本部
総括安全衛生管理者が中心となり、行事のスケジュール作成や、行事全体の進行を図る。
また、各課から上がってくる各種点検リストをチェックする。
ロ.広報委員
のぼりやポスター等の手配と掲示を担当し、行事の社内PRを図るとともに、社員からの安全ポスターや標語の募集・選考と、優秀作品の発表を担当する。
ハ.特別パトロール隊
安全衛生管理者、事業場長、指導員等で編成し、スケジュールに沿ってデモンストレーションする。また、各課にパトロールの指導をする。
ニ.安全大会運営委員
無災害職場等の安全表彰者のリストアップと、その表彰状および商品(トロフィーや楯)を手配する。
また、安全大会日当日の会場設営や進行を担当する。
ホ.教育担当委員
映画、ビデオ、スライド等を使って、安全教育を実施する。
安全週間用のポスターやのぼり、あるいはビデオ、映画等は、下記の各地区の安全衛生サービスセンターで取り扱っている。
各地区の安全衛生サービスセンターの電話番号


(4)スケジュールの作成と業務分担
次ページと次々ページに、全国安全週間準備月間と全国安全週間のスケジュール表と業務分担を示すので参考にしていただきたい。
なお、安全重点事項の点検は、業種によってポイントが違うので、事故が起きやすい箇所を重点的にチェックし、その項目を立てる。
また、各課ごとの安全点検の報告書は、各課の安全衛生管理者を通して、安全行事運営委員会本部(環境管理課)へ提出させる。
全国安全週間準備月間(6月1日~6月30日)の行事予定モデル

全国安全週間(7月1日~7日)の行事予定モデル

(注)それぞれの項目は、曜日とからめて検討する(たとえば『家族安全の日』を日曜日にするなど)。
安全大会日当日のスケジュールモデル


(5)予算設定項目と費用
以下に参考モデルをあげる。
予算書モデル


(6)関係者への連絡とモデル通知書
イ.各職場の責任者への連絡
行事内容が多いので、日程等については、事前に各職場の責任者に相談する。正式に実施項目やスケジュールが決定したら、改めて、通知書にスケジュール表を添付して、各人に配付する。
また、職場の安全に貢献したチームや個人の表彰候補者を推薦してもらうために推薦依頼書を配付する。表彰該当者が決定したら、その旨の文書を提出する。
ロ.被表彰者への連絡
祝辞とともに表彰日の日程等を記した通知書を、各職場の責任者を通して渡す。
ハ.社員への通達
行事内容やスケジュール表を、掲示板等に貼って連絡する。
また、社内PRを徹底させるためにも、社内報で特集を組んでもらうようにする。


(7)標語とポスターの募集
いずれも社員の安全意識を高揚させるためのものであるから、1人でも多くの参加者があるように工夫を凝らす。たとえば、応募者全員に記念品を配ったり、応募作品の品評会を開き、社員全体の投票によって金賞・銀賞・銅賞を決めたりする。また、社内報で呼びかけたり職場懇談会で奨励したりする。
しかし、標語やポスターは集まりにくいのが現状であるから、ポスターはともかく、標語については質を問わずに誰がいちばん多く応募したか、最多応募数を競うのも1つの方法であろう。


<< 当日の運営 >>

(1)安全大会式次第モデル
・開会の辞
・社長挨拶(社長メッセージ)
・安全訓話(総括安全衛生管理者、あるいは事業場長)
・表彰(無災害職場、安全ポスター・標語の入選者)
・安全スローガン唱和(全員)
・指差呼称の唱和(全員)
・閉会の辞

(2)式の運営と会場設営
イ.式の運営
就業時間中に行うものであるから、スピーディに行う。表彰式の間は、厳粛なムードを盛り上げ、表彰される人に敬意を表わす。
ロ.会場設営
正面に、その年の全国統一スローガンの横断幕を掲げる。式の時間も短いので、飾付けはいらない。
ハ.運営チェックリスト
□社長が出席できない場合、メッセージが届いているか
□表彰状および賞品は万全か
□被表彰者の名簿は完備しているか
□スローガンを書いた横断幕は用意してあるか
□式次第はできているか
□短時間で終了できるか
●ワンポイントアドバイス
従業員50人未満の事業場など、安全衛生管理者が選任されていない所は、中央労働災害防止協会やその関係機関の安全管理部に相談すれば、安全訓話や安全についての講演を行う講師を派遣してくれる。

<< 後始末とフォローアップ >>

安全行事の目的は、職場の安全を図ることと、社員全体の安全意識の高揚にあるのだから、行事全部が終了したら、安全行事運営委員会本部に、各課から報告書を必ず提出してもらう。そして、その内容を検討し、今後に活かすようにする。

著者
橋口 寿人(経営評論家)