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建築関連祝賀

定礎式
<< 定礎式の目的 >>

(1)社内的な意味
定礎式とは、鉄筋コンクリートの建築物の玄関近くの壁に定礎箱と礎石を納めるに当たって、その建築物の末長い堅固を神に祈る儀式である。建築物の大方の工事が終了し、後は仕上げの工事を残すという段階で行われる。
社内的な意味合いが強く、式中の定礎行事においても施主側の人間が必要な道具を奉持するなど様々な役割を担って参加する。ただし、費用がかかるので、省略することもある。

(2)社外的な意味
建築物の施工に当たって記録となるもの、記念となるものを納める儀式なので、対外的な意味は比較的少ない。

<< 事前準備 >>

(1)規模と参加対象の設定
参加対象は、施主をはじめ施主家族・親戚、設計事務所の関係者、建築会社の関係者、建築作業員、土木作業員、他に主要取引先、地元有力者などである。規模もそれほど大きいものではなく、代表者だけで執り行われる。

(2)準備委員会の設置
施主側では、式の中で行われる行事にもそれぞれの役割を担って参加する人が多くなるので、綿密な計画と準備が必要である。そのためには、準備委員会が中心となって、準備にモレのないように計画を進めるのが望ましい。たいていは不慣れな人が多いのであらかじめ予行演習を行っておくと安心である。

(3)準備
一般的な式典用の準備をする。祭壇などは、神社から借りられるようにあらかじめ相談しておく。建築会社で用意してもらえるものも前もって確認する。
神様への供物は、酒、米、餅、魚介類、鳥獣、海草、野菜、菓子、塩、水などを用意し、それぞれ奇数個ずつ三方に載せる。なお、この場合、三方も奇数個用意する必要がある。
他に、特別に必要なものは、次のとおりである。
イ.定礎箱
変形、腐食が起こりにくい金属(主に鉛)でつくる。建築業者が用意することが多い。あらかじめ中に入れるものを納めてしまい、封印をしておくと式がスムーズに進行する。
ロ.定礎箱に入れるもの
まず、定礎銘板である。これは施主、設計業者代表、建築業者代表の3者連名で、建築物名、住所、日付等を銅板に記す。他に、建築計画経緯の関係書類、設計図、施工に当たっての建築関係業者の一覧表やその建築物に関係する書類、施主の写真や経歴を記したものを入れるのが一般的である。御札や御守、社史、社内報、当日の新聞、硬貨なども入れる。
ハ.礎石
「定礎」という文字と日付、建築物名、社名を記す。当日は、白布で覆い、紅白の綱を引くとはずれるように用意する。
ニ.斎鏝(いみこて)・モルタル入れ
斎鏝とは、礎石にモルタルを塗る道具で、儀式用に作成する場合もあるが、新しいものであれば既製品でもよい。銀メッキのものを用い、柄の部分を奉書で包み、水引きをかけ、三方に載せる。建築会社で用意することが多い。
ホ.斎槌(いみつち)
礎石を鎮定するのに用いる道具で木製のものを用意する。斎鏝と同じ要領で準備する。
ヘ.水平器、垂直器
なお、イ~ハに関しては作成に時間がかかるので、かなり早期から準備を進める必要がある。

(4)スケジュールの設定
参加者の中心となる設計業者、建築業者と打ち合わせて、1か月ぐらい前には式の日取りを決めておく。慶事なので大安などの吉日を選んで行う。できれば週末を避けたほうが招待客に喜ばれる。
定礎式計画から当日までのフローチャート


(5)神社への依頼
吉日は神主の予定も増えるので、スケジュールが決まり次第依頼する。この際に、施主側で用意しておくものの確認をする。
また、当日の式で定礎に用いる道具類を奉持する役割についても、それぞれ確認しておく必要がある。
依頼に当たっては、「御玉串料」と表書きし、右上に小さな文字で「上」と墨書きした祝袋を持参するのが礼儀である。

(6)記念品の選定と祝儀
建設関係者に「酒肴料」と表書きした祝儀を贈る。他に、事務用品などの記念品を参列者に配る。

(7)準備チェックリスト
当日までの準備と、当日準備する事項をチェックリストにまとめておくとよい(後掲)。

<< 運営のポイント >>

(1)招待客リストの作成、招待状の発送
氏名、住所、社名、役職名、招待状の発送チェック、招待状の通し番号、出欠、記念品、祝品の受領などの項目を盛り込んだ参列者リストをつくる。
これをもとに、日取りが決定した段階で、なるべく早く招待状を送る。2週間前には先方に郵送されるように手配し、式の1週間前には、参列者の人数を確認しておきたい。
招待状は、日時・場所・駐車場の有無などを明記し、返信用のハガキを同封して毛筆で表書きした封筒で送る。

(2)式の概要
定礎式の祭事も、一般的な神道の形式に沿って進められる。祝辞奏上、切麻撒米の後、この式の中心となる定礎の行事が行われる。最後には、直会と称して小規模な祝宴を行う。
●ワンポイントアドバイス
参列者の服装
まず、施主、施行業者、建築会社のそれぞれの代表は、礼装で参列する。定礎行事で、諸役を担う係は、略礼服か制服(ユニフォーム等)で、礎石を据え付ける石工は、ハッピか制服で臨む。役目をもたない関係者や一般の参列者は、略礼服かダークスーツでよい。

(3)進行台本と役割分担表の作成
イ.設備・設営係
会場は、玄関近くとなるので、祭壇を置く場所と定礎をする場所に分けられることが多い。祭壇は、できるだけ定礎位置の近くに設けるようにして、南か東向きに設置する。
会場の回りには紅白の幕を張り、入口も南か東の方向に向ける。定礎位置への通路にも紅白幕を張っておくと移動が円滑に進む。祭壇回りの飾付けは、神主の指示を仰ぐ。
定礎式会場モデル見取図


ロ.迎賓係
通常、施主側の責任者(主に代表取締役)が会場入口付近で待機し、来賓を出迎える。
ハ.司会・進行係
進行係は、それぞれの儀式を行う人の列次を正しく先導し、円滑に式を進める。会場が分かれた場合には、スムーズに移動ができるよう取り計らう。
ニ.斎鏝奉持係
ホ.モルタル奉持係
ヘ.斎槌奉持係
ト.水平器奉持係
チ.垂直器奉持係
受付係、手荷物係、迎賓係、記念品係、車両係、広報・記録係、会計係については、「2.上棟式・立柱式」を参照。

(4)式次第
式次第は、会場の右手に墨書きしたものを掲示しておく。印刷したものを受付で参列者に配ると、より親切である。
一般的な式次第は、次のとおり。
・開式の儀
・修祓の儀
・降神の儀
・献饌の儀
・祝詞奏上
・切麻撒米
・定礎行事
礎石の除幕(施主)
修祓の儀
定礎銘文の奉読(施主)
定礎銘板鎮定の儀
斎鏝の儀
礎石鎮定の儀(水平探知の儀、垂直探知の儀、礎石鎮定)
斎槌の儀
・玉串奉奠
・撒饌の儀
・昇神の儀
・閉会の儀
・直会
●ワンポイントアドバイス
定礎銘文の奉読
設計業者代表、建築業者代表とともに、施主が神前に歩み出て、定礎銘文を読み上げる。あらかじめ定礎銘文を定礎箱に納め、封印してある場合には、写したものを読み上げる。この場合は、定礎銘文鎮定の儀を省く。
斎鏝の儀
施主、施主代理、斎鏝奉持係、モルタル奉持係が定礎の位置に歩み寄る。施主が斎鏝でモルタルをとって礎石の裏側に塗り、施主代理がそれらを平らにならす。斎鏝奉持係は施主代理から斎鏝を受け取って儀式を終わる。
礎石鎮定の儀
設計業者代表、建築業者代表、水平器奉持係、垂直器奉持係、建設主任技師、石工が定礎位置に出る。水平探知の儀で設計業者代表が水平を探知し、垂直探知の儀で建築業者代表が垂直を探知する。礎石鎮定は、建設主任技師の指示で石工が行なう。
斎槌の儀
斎槌奉持係が定礎位置に出て、施主が3回礎石を叩く動作をする。
直会
催事の後に行う簡単な祝宴のこと。30分~50分ほどで終えるので、テントを張り、テーブルを用意する程度の立食形式で行うのが一般的である。酒、赤飯、簡単な料理などを用意する。

<< 後始末とフォローアップ >>

(1)出席者に対して
礼状を送る。本人が写っているスナップを選んで同封すると喜ばれる。

(2)欠席者に対して
挨拶状にスナップを添えて送る。VIPであれば、担当者が持参して渡す。

<< 支出費用の経理処理と税務取扱い >>

支出費用の税務取扱いについては、「1.地鎮祭・起工式」を参照。
定礎式当日までに準備することチェックリスト

定礎式当日に準備することチェックリスト



著者
橋口 寿人(経営評論家)