ビジネスわかったランド (会社行事)

祝賀記念

会社合併記念行事
<< 会社合併記念行事の目的 >>

会社合併には、1つの会社が他の会社の財産を包括的に承継し、社員を収容する吸収合併と、双方の会社が解散して新しい会社をつくり、解散会社の財産を包括的に承継し、社員を収容する新設合併がある。しかし、合併に至る原因・動機は、スケールメリットの追求や管理費用の節減を目的として行う対等合併、経営の行き詰まり打開のための救済合併など様々である。
いずれにしても、会社合併記念行事は、関係者(機関)に対して会社が合併により業容を拡大して再出発をすることを披露し、併せて今後の会社経営に対する支援をお願いする、会社創立記念あるいは社長交替記念に匹敵する重要な行事である。
会社合併記念行事には、次のような特殊事情があり、一般の会社行事と異なったむずかしさが伴うが、これを克服して新会社の発足にふさわしいセレモニーとしなければならない。
 イ. 準備期間が短く、かつ合併交渉中は情報が外部にモレないよう、秘密裏に準備作業を進めなければならないこと。
 ロ. 外部との交際の範囲、金の使い方(派手か地味か)など、社風や事務処理の習慣の違う会社同士の合同の行事であること。
 ハ. 合併に伴う組織、人事、法務、資金等の基本事項のほか、コンピュータ処理システムや販売、経理システムの統一などの作業が集中すること。

<< 事前準備 >>

計画と準備について、それぞれの段階でのポイントは次のとおり。

(1)規模と参加対象の設定
会社合併に伴う行事の企画は大変むずかしい。合併後の会社の新しいスタイルができ上がる前に、それぞれ社風の異なる社員同士が合同で行事を企画・運営しなければならないからである。
通常、合併が基本的に合意に達すると、それぞれの会社で連絡将校に相当する役割を果たす交渉統括者を指名し、合併に伴う各種の基本的な事柄の調整や取決めを行うが、合併記念行事についても、そのレベルがどのような考え方で、どのような規模で実施するかをきちんと決めてからスタートする。

(2)企画委員会の設置、担当者の選定
企画委員会は、両社から委員を出し、すでに決められた基本方針にのっとって両社間のバランスをとりながら、記念行事の企画を詰める。ここで大切なことは、具体的な計画や準備を行う役割担当者が両社にまたがることから、とかく足並みが揃わなかったり、モレや重複が出がちなので、その進行管理と調整にとくに配慮しなければならないことである。
担当者の選定に当たっては、十分な準備期間が取れない事情もあり有能な適任者を厳選する必要があるが、受付係、記念品係など直接招待客と接する係や全般を統括する総務係には、なるべく両社から招待客に面識のある者を選出するようにする。
係運営上の留意点としては、計画・準備の段階で、各係間での作業のモレや重複がないよう、係間での連絡を密にするほか、随時、係の責任者による合同連絡会議を開催することである。

(3)日時の決定と会場の予約
合併発表会は、会社飛躍のスプリングボードとなるべきものだけに日柄のよい日を選びたい。また、招待客が出席しやすいように土曜・日曜を外して平日に開催することが好ましい。開催時間は、午前10時から午後1時頃までとし、2時間程度を見込む。会場は可能であれば社内でもよいが、ホテルの宴会場、レストラン、各種会館を利用するのが便利だし、無難だろう。
合併記念行事の場合は、準備の期間が制約されるだけに会場の確保がむずかしく、会場に合わせて開催日を決めるなど弾力的に対処しなければならないケースも考えられる。
発表会の日時確定後、計画・準備から実施までのスケジュールを作成する。

(4)配付資料等の作成
発表会出席者に合併の経緯や新会社の規模、陣容などを知ってもらうための資料を準備する。この資料は発表会出席者に配付するだけでなく、招待しなかった関係者等に郵送する挨拶状に添付する資料としても活用する。
資料には最低、イ.社長挨拶、ロ.合併前の両社の沿革、ハ.合併に至る経緯、ニ.新会社の事業内容と企業理念、ホ.新会社の概要(組織、設備、資本金、主な株主、取引銀行等)を盛り込む。

(5)招待者リストの作成
招待者リストは招待状の発送だけでなく、当日の受付名簿や記念品贈呈名簿などにも使用するので、ミスのないよう作成する。
リストアップに当たっては、これまでの両社の関係者のほか、新会社のこれからの経営戦略的な視点も考慮する。
氏名、会社名、役職名、住所に誤りや変更はないか十分チェックするほか、読み誤りやすい氏名や会社名にはふりがなをふっておく。
リストには通し番号をふるが、人数が多い場合は番号帯を旧○○社関係とか近隣者関係というように分類しておくとチェックの際探しやすい。

(6)招待状のモデル
招待状は、次のような文例等を参考として作成する。

出欠の返信用ハガキ、会場までの案内図、記念品引換券、式次第、スピーチ依頼書などを同封のうえ、少なくとも2週間くらい前には相手に届くよう投函する。
祝辞、乾杯、万歳三唱の音頭などを誰にお願いするかは、高度な判断が求められるが、とくに合併に伴う行事の場合デリケートな事情が絡むので、様々な角度から十分検討し、社内のコンセンサスを得て決める。

<< 当日の運営 >>

(1)式次第の作成
式次第の例を次に示す。
・開会の辞
・社長挨拶
・来賓祝辞(祝電披露)
・鏡開き(来賓、会長、新・旧社長)
・乾杯
・会社幹部紹介
・祝宴(バンド演奏、余興)
・社歌発表(社員)
・万歳三唱
・閉会の辞

(2)会場のレイアウト、飾付け
ビュッフェスタイルのパーティーの会場レイアウト、飾付けのモデルを次に示す。
会社合併記念行事会場レイアウトモデル

レイアウトを検討する場合、客が会場内を自由に移動できること、メーンスタンドだけでなく会場全体の雰囲気を考えること、高齢の客のための椅子を用意することなども考慮する。

(3)当日の服装
役員クラスは正装または略礼服、その他はダークスーツ。女子社員についてはユニフォームに統一してもよい。

<< 後始末とフォローアップ >>

大きな行事を終えるとついほっとしてしまって、とかく後始末をおろそかにしてしまいがちなものである。会社のイメージの向上と発表会開催の効果をより定着させるためにも、招待者へのフォローアップを手際よく行うことが大切である。

(1)出席者に対して
出席者に対しては、できるだけ早く礼状を出す。礼状に添えてマスコミリリース用の写真や、本人が写っているスナップ写真を同封すると喜ばれる。
また、VIPに対しては、翌日、幹部が直接挨拶に出向く。

(2)欠席者に対して
欠席者に対しては、記念品と挨拶状、記念撮影のスナップを送る。VIPの場合は、担当者が持参して手渡すのがベターである。

(3)収支決算書等関係資料の整理
支払いが済んだら収支決算書を作成するほか、創立記念日や新商品発表会など今後の会社行事を行うときの参考となる資料を整理しておく。
・招待者出欠表(代理出席の場合、代理者の役職もわかるようにしておく)
・祝儀、記念品、祝電を送ってくれた人のリスト作成
・スケジュール、役割分担、会場レイアウトなど発表会全般についての評価等

<< 支出費用の経理処理と税務取扱い >>

式典費用、祝賀パーティー費用とも、「法人成り発表会」の取扱いを参照。

著者
橋口 寿人(経営評論家)