ビジネスわかったランド (会社行事)

祝賀記念

経営トップの叙勲・受賞祝賀
<< 叙勲・受賞祝賀の目的 >>

受賞祝賀会は、受賞者の栄誉を公式に祝い、受賞の喜びを参会者一同で分かちあうものである。経営トップが受賞の栄誉に浴することは、企業のイメージアップにもなり、対外的評価と信用が増すことになる。さらに、受賞を祝うと同時に今後の企業活動の励みとする。
叙勲とは、国から位階勲等を授けられ、勲章を賜る叙位叙勲をいう。受賞とは、国から褒章や賜杯を授けられたり、褒状が授与される栄誉をいう。受賞の場合は、国、その他の公共機関、新聞社、出版社、民間の任意団体などからの場合があるが、受賞に社会的な重みと権威があるものに限られる。叙勲・受賞は関係団体の推薦による手続きを経て決定されることが多い。

<< 事前準備 >>

(1)準備委員会の設置
経営トップの叙勲・受賞は全社的な祝事なので、委員会のスタッフは各部署から選ぶようにする。叙勲は春(4月29日)と秋(11月3日)の2回あるが、当事者には内示があるから、発表されたらすぐに行動できるように準備を進めておく。
一般的には、管理部門の役員が委員長になり、総務部長が実質的に取りしきる副委員長になる場合が多い。

(2)規模・出席者の範囲などの決定
準備委員会で招待客の範囲と基準を決め、各部門に人数を割り振る。リストアップされた名簿には重複があるので、これをチェックし調整する。また、全体のバランスも考慮する。
招待客リスト作成時には、官公庁、民間会社、取引先関係などに分類して、その分類の中で個人名を50音順に整理する。一般のパーティーの場合は、法人名で50音順に並べておいたほうが都合がよいが、叙勲の場合はある団体からの推薦によるから、個人名で整理しておくほうがわかりやすい。
招待状の宛先についても、会社関係か、団体関係かをはっきりさせておく。重複する場合は、主体をどちらに置くか、準備委員会で判断する。

(3)招待状の作成・発送
招待状の文案は、次の例文を参考にしてアレンジする。
招待されたほうは、服装と祝儀に悩むことがあるので、「当日は平服でご出席ください」とか「祝儀等はご遠慮させていただきます」というふうに明記しておくと親切である。返信用ハガキは、何日までに返送してくださいと指定しておく。
宛名書きは毛筆とし、フルネームを楷書で書く。肩書きや役職名に疑問があるときは、先方の総務課や秘書課に確認をとり、ミスのないようにする。秋の叙勲祝賀の場合は、年賀状の時期と重なるので、印刷発送の期間に余裕をもたせておかないと郵便事情に左右されかねない。先方には3週間前までに届くように発送する。


(4)日時、会場の検討・決定
叙勲の場合、春は5月の半ば頃から9月いっぱいまで、秋は11月から翌年2月までに行う。この時期はホテル・会館ともに繁忙期であり、希望する日時を選びにくい。土曜・日曜、祭日を避けて、ウィークデーに設定すると、会場を確保しやすく、また招待客の出席率がいい。
叙勲・褒章の祝賀パーティーの時間帯は、タ方からスタートする場合が多い。パーティーの所要時間は2時間が標準である。
会場選びの第1はまず立地条件である。パーティーの出席者は自動車でくることが多く(ある調査では、出席者の4割程度)、会場の近辺で交通渋滞しないことが最低条件となる。
また、1,000人以上のパーティーの場合は、駐車場の収容能力が問題となる。公共交通機関を利用するときは、最寄駅から近いところを選ぶ。駅から遠いと、雨天や曇天のとき出席率に影響する。
第2に、設備が完備されていること(駐車スペース、催物の演出設備など)、料理の味がいいこと、サービスがいいことである。
叙勲祝賀会場レイアウトモデル


(5)パーティーの企画演出
招待客数と予算によって、カクテルパーティー(立食形式のもの)、ビュッフェパーティー(ディナーパーティーより簡略で、カクテルパーティーよりやや格式があるもの)、ディナーパーティー(社交上の正式なもの)のいずれかを決定する。

(6)叙勲・受賞パーティーの特色
予算設定に関わってくることだが、叙勲・受賞パーティーの場合は、会費制にすることが多い。祝儀を受け取らないで、客に負担がかからないように配慮し、1万円とか1万5,000円とか、区切りのよい額を会費として設定する。その中で予算を立てる場合と、プラスアルファ分を主催者側が負担する場合とがある。

(7)服装
受賞者および主催者側で立礼に並ぶ役員はモーニング、その他の役員は略礼服で統一する。スタッフはダークスーツ、女子社員は会社のユニフォームか落ち着いた私服を着用する。

(8)役割分担表の作成
イ.実施本部
会場における内外の連絡と、パーティー全体の進行や重要な判断を担当し、すべてを取りしきる。会場側と打ち合わせたり、指示・監督する。叙勲・受賞パーティーの場合は、出席者に高齢者が予想され、急に体調を崩すこともある。こうした緊急時に適切かつ迅速な判断を下すのも役割の1つ。受付内に陣取っていれば、パーティーの流れを把握しやすい。
ロ.司会・進行係
式次第の作成、式場の席次、祝電の披露順、花輪の配列順を決める。また、パーティー全体の進行と雰囲気づくりを担当する。片仮名の祝電は読みやすいように、漢字かなまじり文に直しておく。祝辞を依頼した来賓やVIPの氏名・肩書きには正確を期し、ルビをふっておく。
ハ.会計係 
パーティー全体の諸経費の出納を担当する。調達係が購入した物品の伝票処理や、祝儀・現金・会費の管理、また、主催者と会場の打合せに参加し、経費などの予算管理をする。
ニ.調達係 
当日および当日までに必要なものは、各係が買うのではなく、調達係が会計係と相談のうえ一括購入する。社旗、国旗、看板、胸花、メモなど様々なものを社内外から調達、準備、購入する。
ホ.文書・記録・写真係 
招待状や礼状の作成、毛筆での宛名書きなどを担当する。また、他社や自社の過去の事例を調査研究し、当日のスムーズな進行に役立てる。写真撮影、ビデオ撮影を行い、社史編纂、社内報の特集記事などに備える。
ヘ.会場係 
パーティーの会場づくりを、会場側担当者と相談して決める。接待係に会場の配置を把握させ、パーティーの進行管理(時間や人の流れ)を司会・進行係と連携して采配する。
ト.連絡係 
常時、本部事務局に待機して、会場の中と受付の間の連絡を担当する。多忙な招待客も多く、外から電話連絡が入ることも予想される。この場合は、直接本人に取り次ぐのは不可能に近いから、相手の電話番号を聞いて、こちらから折り返し連絡する旨を伝える。VIPや来賓が見えた場合は玄関から会場へ、退場のときは会場から配車係にいち早く連絡する。
チ.受付係 
カウンターの外に女子社員が立ち、明るく爽やかな態度で迎え、胸花をつける。男子社員はカウンターの内側で招待状を受け取り、リストをチェックし照合する。
リ.接待係 
・役員接待係……役員は開式の40分ほど前までに到着するようにする。到着したら役員控室に案内し、胸花をつける。お茶とおしぼりをサービスし、サンドイッチなどの軽食を出す。役員クラスは、パーティー中は招待客に挨拶回りをしなければならず、料理を口にできないからである。
・来賓接待係……会場の入口で待機し、来場されたら控室に案内する。おしぼり、お茶のサービスをし、胸花をつける。パーティーの時間がきたら会場へ案内し、帰られるまでマンツーマンで付き添う。記念品は車まで持っていってあげる。
・招待客接待係……営業・販売、取引関係の責任者が担当する。出席のお礼や日頃の仕事の挨拶をしながら、さりげなく近くのバンケット・ホステスに合図をして、料理や飲み物を運ばせる。しかし、接待の基本はお客様の話し相手をつとめること。叙勲・受賞の祝賀にマッチした話題を選ぶ。
・VIP担当係……VIPには、必ずSP(セキュリティ・ポリス)がつくので、SP、主催者、会場責任者、所轄警察署の4者で綿密な打合せをしておく。
ヌ.記念品係 
記念品は当日会場で袋詰めすることが多い。早めに準備しておき、お開きと同時に胸花と交換するなり、引換券と交換に手渡す。受付係も応援する。
ル.配車係 
会場側の車呼出し係と連絡・連携して、手早く車を手配する。運転手を控室に案内し、軽い飲食の接待をしたり心づけを用意しておく。
ヲ.その他、遊軍、予備係、救護係 
叙勲・受賞パーティーであるから、高齢者の出席が予想されるため、念のため主治医やナースを待機させておく。一流ホテルでは会場側で待機させていることがある。

<< 当日の運営 >>

(1)当日の進行
パーティー当日の進行は次のとおり。
・全員集合(開会2時間前)
・役員到着(開会40分前)
・役員が迎賓のため立礼の場所に並ぶ(15分前)
・開場(l0分前)、受付開始
・定刻開会(開場内に出席予定者の60パーセント以上が入場している状況で)
・祝賀会スタート
・中締め(開会から1時間半後をメドとする)
・退場者に記念品を渡す
・閉会
・お見送り、撤収
叙勲・受賞の祝賀パーティーは、他の祝賀パーティーと式次第の進行が違う点が多い。また、叙勲・受賞者側が内祝いとして開く場合と、推薦団体や縁故者、会社側が開く場合とがある。
実際には、この2つははっきりと区分できるものではない。そこで式の段取りにとまどったりチグハグな式次第になることもある。

(2)当日の式次第
式次第の一般的な進行は次のようになる。
イ.開会の辞
司会者が開会の辞を述ベ、主催者代表にスピーチのための登壇をすすめる。
ロ.主催者のスピーチ
祝賀会を開くことになった経緯および概略を話し、各位の臨席に謝意を表す。次に叙勲・受賞に至った経緯とその内容を披露し、その栄誉を讃えて本人の登壇を促し、参会者に紹介する。
ハ.叙勲・受賞者紹介
拍手の中、本人夫妻が登壇し、会場に向かって最敬礼をし、司会者のすすめに従って、用意された椅子に着席する。
ニ.来賓代表の祝辞
社会的地位の高い順に来賓代表を紹介し、順次祝辞をいただく。スピーチ内容、所要時間にもよるが、3~4人程度が適当である。
ホ.祝電の披露
司会者より、2~3通の芳名と電文を披露する。他の祝電は芳名紹介か、数が多い場合は祝電数の紹介にとどめる。
ヘ.祝賀記念品の贈呈
主催者代表より、祝賀記念品か、または記念品の目録を贈呈する。
ト.花束の贈呈
各界の来賓代表から、叙勲・受賞者夫妻に花束を贈呈する。
チ.叙勲・受賞者の謝辞
叙勲・受賞の栄誉をいただくに至った簡単な経緯と、関係各位の協力・支援・後援に感謝の意を表す。それと同時に、祝賀会主催者と出席者に謝意を述べる。
リ.乾杯
司会者より、来賓の長老に乾杯の音頭を要請し、乾杯、拍手となる。
ヌ.開宴
司会者が開宴を宣し、祝宴がスタートする。主賓夫妻は、来賓各氏に一言ずつ挨拶して場内を回る。
ル.万歳三唱
司会者が来賓代表の1人を指名し、発声を依頼する。
ヲ.閉会の辞
司会者の指名により、主催者の代表が閉会の言葉を述べる。

<< 後始末とフォローアップ >>

出席者には、間を置かずに礼状を出す。記念写真や本人のスナップを同封する。会費制で催した場合は、収支決算書を速やかに作成し、主催発起人有志全員に報告して承認を受ける。
欠席者には、記念品と挨拶状を送る。記念撮影の写真を同封すると喜ばれる。相手によっては担当者が持参する。


<< 支出費用の経理処理と税務取扱い >>

税務上の取扱いは、社長の叙勲等が業界の発展に尽くした功績等に起因するものであり、それを祝うために開催した費用であれば、「法人成り発表会」に解説したものと同じだが、その叙勲等がまったく個人的理由に帰するものであるときは社長への認定賞与となる。
また、叙勲祝いとして、会社から祝金等を贈る場合があるが、それが現金であれば役員賞与となる。物品の場合なら、それが社会通念上記念品としてふさわしいものであり、かつその処分見込価額が1万円以下であれば課税対象とはならないが、その要件に当てはまらないときは役員賞与として課税の対象となる。ただし、祝品の銘の彫刻費用などは、交際費扱いとなろう。

著者
橋口 寿人(経営評論家)