ビジネスわかったランド (会社行事)

祝賀記念

創立記念行事
<< 創立記念行事の目的 >>

(1)社内的な意味
イ.企業は、日々休むことなく活動している。毎日の仕事に追われていると、過去を振り返る余裕をもてないことも多い。そこで、年1回の創立記念日には創業の原点に戻り、創業当時から現在までの歴史を思い返し、創業理念を再確認する。
ロ.全社員の士気を鼓舞し、仕事に対する意欲を高める節目とする。社員相互の連帯感とコミュニケーションを深める機会とする。

(2)社外的な意味
社業を積み重ねて5年、10年と生存競争を生き抜いた実績は、そのまま社会的信用アップにもつながるものである。
また、企業活動の勢いや社風を、顧客や取引先に強くアピールすることのできる機会でもある。

(3)社内中心か、社外的なPRをどこまで重視するか
第1回目の創立記念日は通常、社内的なイベントとして開くことが多い。基本的に内祝いだからである。全社員が出席して、社長挨拶、来賓祝辞、永年勤続者と優秀社員の表彰などを行い、簡単な茶菓などでお祝いをする程度である。
しかし、創立5周年、10周年などの区切りのいい場合は、大規模な記念式典や祝賀会を催すケースが多い。これは社運の隆盛を祝い、業績の向上や会社の発展に寄与してくれた方々に感謝するとともに、将来のよりいっそうの盛業を願うことと、併せて社業の広報宣伝活動としての側面も含まれるからである。したがって、社内向けと社外向けのバランスを考えて企画・準備する。

(4)記念行事の対象別内容例
イ.顧客を対象としたもの……記念品贈呈、新製品の記念販売・贈呈、割引販売、記念出版物の刊行・贈呈・販売、PR映画やCDの制作、テレビ・ラジオ番組の記念提供、スポーツ冠大会主催、コンサートや演劇、イベント、エンターテイメントなどのスポンサー、博物館・コレクション・美術館などの展示施設の特設・後援・主催、各種の募集(論文・創作作品・社歌・社章など)、パーティーなどがある。
ロ.地域社会を対象としたもの……社会奉仕活動、寄付、公共的施設・設備の建設や社有施設などの開放利用、記念講演会、パーティーなどがある。
ハ.株主を対象としたもの……記念配当、無償増資、記念割引販売、新製品の記念贈呈などがある。
ニ.社員を対象としたもの……記念品配付、臨時賞与、体育大会、海外研修旅行、CI、各種の表彰・研修制度の新設、社内論文募集、社史刊行、保養所・厚生施設の建設、研修・研究機関などの設置、お客様紹介運動、パーティーの開催などがある。
以上の4つの対象は、2つ以上が重なる場合がある。地域社会内に住んでいて株主でもあり、また顧客でもあるというケースである。これに備えて対象別の企画に矛盾が起きないように配慮する。

<< 事前準備 >>

計画と準備に付随する各々の注意点は、次のようになる。

(1)準備委員会の設置
全社的な規模で開催するものだけに、企画を綿密に練り上げ、用意周到な段取りが必要である。 
したがって、社内各セクションから選ばれた適任者でプロジェクト・チームを組んで企画立案・実施に当たる。記念品を特注する場合や同時に社史を編纂するときは、チーム結成の時期を1年以上前とする。準備期間に余裕をもたせるためである。
また、「社運」とも絡んでくるものだけに、縁起をかついで大安の日を選ぶことも多い。もし、一流ホテルの宴会場を利用するとなると、1年以上前でないと予約が取れない場合があるので注意する。

(2)規模と参加対象の設定
創立何周年を迎えたかによって、予算規模と対象者がかわってくる。基本的には全社員を対象にして、全員参加の意識をもてるものが望ましい。そのためには、事前に開催通知を全社員に配付するなどして、周知徹底する。
毎年恒例の行事として行うか、5年目、10年目の大きな節目にだけ行うか、または平常どおりか休日にするだけで式典はなしとする、などいろいろなパターンがある。
式典なしの場合でも、メッセージを添えた記念品を全社員に贈ったり、図書券、プロ野球や映画・芝居の招待券を渡すなどして、会社創立記念日の意義を印象づける必要がある。


(3)スケジュールの設定
式が創立記念日当日に行えればよいが、その年の状況によっては都合がつかない場合も出てくる。そのときは、なるべく記念日に近い適当な日を選ぶ。また、招待客が出席しやすいように土曜、日曜をはずし、平日に開催する。
ただし、弔事の日程は繰り上げても、慶事は繰り上げないのが社会通念だから、記念日以降に設定する。
創立記念式典の開催時間は、午前10時から午後1時の間とする。所要時間は、式典と祝賀会を併せて、2時間程度がベストである。会場は、パーティーの日時とおおよその人数が明確になった時点で、速やかに仮予約する。予算や規模に合わせて、ホテルの宴会場、各種会館、レストラン、自社ホールや会議室などを選ぶ。
創立50周年やl00周年という大きな区切りには盛大に祝うが、20周年未満の場合は公共施設や社内など地味な会場で控えめに開くほうが、周囲に好感をもたれやすい。


(4)記念品の選定と手配
記念品という性格上、できれば安価で面白いものを選びたい。社章入りの紅白まんじゅうを全社員に配る企業は多い。記念品などを専門に扱っているショップもあるので、こまめにのぞいておくとよい。社章や社名を入れる場合は、少し早めに発注する。
●ワンポイントアドバイス
記念品の選び方
全社員にわたるものだけに、記念として長く残るものを選ぶことが多い。ちょっと気のきいた実用品や家庭用品、室内装飾品などが喜ばれる。そのうえで会社の歴史が感じられるものや、象徴するものならベストである。最近は、自社製品に適当なものがある場合は、それを当てる企業も多い。しかし、ありふれたものでは、平凡過ぎて記念にならないから気をつける。
社名等の入れ方
記念品には社名と年月日を入れるが、仰々しく目立つところに大書きするのはやめたい。トレンドとしては、品物の裏など目につかないところや、外箱や包装紙にだけ印刷・刻印する傾向が強い。控えめな上品さが、「センスがいいね」と評価されるコツである。

<< 運営のポイント >>

(1)社外で催すときは
一流ホテルは、あらゆる要求に応じられる態勢と、ノウハウをもっている。経験豊富な宴会係のプロがいるから、進行や演出なども相談しながら決めていくことができる。会場を決定する前にまず、創立記念式典としての目的や形式にふさわしいかどうか、人員の収容能力はあるかをチェックする。
会場が大丈夫だったらインテリア、照明、音響、映像設備、美術品、模擬店設営のための付帯設備などを詳しく調べる。同じ広さの部屋でも宴会のスタイルによって収容人数や料金が異なるので、要望をハッキリと伝える。
最近多いビュッフェスタイルで行う場合は、飲物のサービスをする接待係(バンケットホステス)が欠かせない。会場の雰囲気を華やかに盛り上げるには、アトラクションを依頼することもできる。ピアノやエレクトーンの演奏者やタレントを呼ぶこともある。
こうした場合、過去に付合いのあった人に頼むと、パーティーの趣旨に合った和やかな気分になる。

(2)社内で催すときは
会場の飾付けは社員が手づくりし、ケータリング・デリバリー・サービスを利用したり、折詰弁当と飲物程度で済ますことが多い。いずれにしても、来場しているお客様にアットホームな雰囲気を味わっていただくことが大切。また、会場以外の会社内もあらかじめ整理整頓しておく。

(3)招待客のリスト作成、招待状の発送
招待客は重要な取引先、大株主、メーンバンク、同じ業界のリーディングカンパニーなどに加えて、会社設立当時の協力者、功労者、会社の発展に寄与した幹部や社員、またその遺族など。さらに、会社と深い縁故関係にある方々や、今後関係が緊密化することが予想される企業の代表者なども、随時取り込んでいく必要がある。招待客のリストアップに際しては、各部門・各支店から名簿を提出させる。最初は1~2割多めに洗い出す。そのうえで営業上の諸判断を加え、予定定員まで絞り込む。
招待客リストは、式典と祝宴のベースになるものであり、当日の受付名簿や記念品贈呈名簿にも使用するので、ミスのないように作成する。住所、氏名、社名、役職名の変更がないかしっかり確認する。リストには、招待状発送のチェック、招待状の通し番号、出欠、記念品贈呈(ランクをつける場合は社外秘)、祝品受領などの項目を設けると便利である。
●ワンポイントアドバイス
感謝状・表彰状の贈呈基準は?
A氏を表彰するならB氏も表彰しないとおかしい。C社に感謝状を贈るとD社がむくれないだろうか…など悩みのタネは尽きない。感謝状の場合は、取引年月日の長さを1つの目安にして、貢献度を勘案する場合が多い。社員への表彰状は、業績を著しく上げた者、永年勤続者、日常生活やビジネスシーンで善行のあった者などが対象になる。
永年勤続者の表彰に就いては、一般的には10年か20年おきをメドに行なうことが多い。
招待状の差出人と受取人の役職名をどうする?
受取人側が大規模で、差出人側が小規模の場合は、差出人が代表取締役であっても、受取人は部門代表者(たとえば、総務部長など)にする。つまり「社格」の違いを念頭に置いて、釣合いをとる。

リストアップが完了したら、早めに招待状を印刷に回し、発送の手筈(毛筆での宛名書きなど)を整える。目安としては、式当日の3週間前ぐらいに先方に届くように投函する(一般の案内状の場合は2週間前あたりだが、5年か10年おきの大イベントだから、もう少し早めに発送する)。
招待状は、次の文例を応用して作成する。開催の目的、日時、会場などの明記は不可欠である。
 
 


(4)祝辞の依頼
タレントや評論家を招請する場合は、会社の概要や現況、展望を説明し、話のテーマをある程度要望しておく。
資料を持参して打合せをしておかないと、場違いな筋立てになったり、見当はずれの内容になりかねない。

(5)式次第の作成
イ.創立記念式典
・開会の辞(司会は部長職以上の者が適任。通常は総務部長か人事部長)
・社歌斉唱
・社是朗読
・物故者慰霊の報告と黙とう
・社員の表彰
a.永年勤続表彰
b.特別優良(功労)表彰
c.その他の表彰(アイデア社員、発明考案、優秀販売、目標達成、無事故、改善提案、精勤皆勤など)
・受賞者代表の謝辞
・協力関係会社(優良取引先)への感謝状贈呈
・社長挨拶・訓話
・来賓祝辞
・祝電披露
・万歳三唱
・閉会の辞
以上がオーソドックスなタイプである。これに加えて、社歴や業績の推移と将来の展望などをプラスするなど、多少オリジナリティーを出すようにする。社員の表彰は、慣例にとらわれすぎて型どおりになりがち。そうなるとおざなりな感じがするので、体裁を整えてケジメをつけたうえで、出席者が感銘するような言葉をかけるなど多少の演出を考える。
社外への感謝状贈呈は社内の表彰よりもていねいに行い、敬意を表する雰囲気を出す。物故社員の追悼慰霊は、幹部社員だけで事前に済ませておき、当日は報告と黙とうだけのほうがよい。追悼のみが突出すると、全員参加の意識が薄れやすい。
受賞者代表の謝辞は、受賞者全員を壇上に上げて行う。スピーチは「ありがとうございました。今日の感動を忘れずに、明日からよりいっそう頑張ります」といった短いものでよい。
社長の訓話は、式典の華であり核となるものだから、通常の挨拶より長めでかまわない。内容は、出席者が知っている会社の現況等は避け、未知の内容を盛り込む。スピーチは、2~3の要点に絞り込むとわかりやすい。社是・社訓の解説よりも、その経営理念をどう具体化するかを、来賓や取引先、社員は知りたいものである。企業秘密の部分もあるが、将来的な具体案、方途方策の核心に触れ、ある程度明らかにしたほうが、会社内外の協力と支援を受けやすい。
ロ.創立記念祝賀パーティー
・開宴の辞
・社長挨拶
・来賓祝辞1
・乾杯
・祝宴・懇親・歓談・飲食
・アトラクション(余興)
・来賓祝辞2
・(祝電披露)
・万歳三唱
・閉会の辞
・退場者に記念品を渡す
・散会

(6)その他の注意事項
イ.服装
役員クラスは正装または略礼服、その他はダークスーツか、ユニフォームとする。内輪を中心としたイベントでも、カジュアルなファッションは避ける。会社生活の句読点としての意味もあるので、晴れの場としてのケジメが必要である。
ロ.会場のレイアウト、飾付け
立食式のビュッフェパーティーやカクテルパーティーの場合は、会場内の適当な位置にテーブルを置き、椅子は壁際などに並べる。出席者が自由に歩き回れるように余裕をもたせる。
客が1か所に固まらないように人の流れを考えたレイアウトとする。会場を華やかにするには、紅白のまん幕を使うといい。入口から会場へ沿って張ると、案内を兼ねる。
テーブルの上には必ず華やかな花を飾り、祝賀会の雰囲気を盛り上げる。大きな植木鉢や盆栽などを見栄えよく配置する場合もある。屏風や氷の彫刻、旗なども使われる。
飲食の準備は、社外のケータリング・デリバリー・サービスを使うことも考えられる。
創立記念式典会場のレイアウトモデルは次ページを参照。
ハ.アトラクション
会社の規模が大きいと、全社員が集まってのパーティーはむずかしくなる。また、来賓やVIPの出席が多くホテルを会場に使った場合と、それ以外の場合とでは、おのずと式次第が変わってくる。
最近は、趣味の多い社員も増え、芸達者なプロはだしの実力をもつ人もいる。しかし調整が不十分だと、カラオケのマイクを離さなかったり、毎年同じメンバーになったり、逆に尻込みする社員をムリに引っ張り出すことになりかねない。
そこで、出席者全員が楽しめるように、各部各課でよく話し合い、出演者や出し物が重複しないようにアレンジする。プログラムは、社員が自主的に考えるようにすると、手づくりの雰囲気が出て、盛り上がりを期待できる。
創立記念式典会場のレイアウトモデル

●ワンポイントアドバイス
接待とアトラクションは社員も楽しめるものを
創立記念日という性格上、社員と招待客がともに祝い、楽しめる雰囲気を大切にしたいもの。そこで、演出も社員のコーラスや勇姿によるバンド演奏、自社のチアガールによるデモンストレーション、スポーツや文化部の活動内容や成績の発表、会社の歴史を回顧し展望できる写真の展示、製品の初期型から新製品までの展示などでオリジナリティーを加味する。
演出のアイデア……他社の場合はどんなものがあるか
出欠席の返事のハガキには、お祝いの言葉が書かれていることが多い。ある会社では、これを50音順に並べて、会場に展示。また縮小コピーして小冊子にまとめて配布し、好評を得た。

<< 後始末とフォローアップ >>

(1)出席者に対して
礼状に添えてマスコミリリース用の写真や、本人が写っている写真をお礼状に同封すると喜ばれる。

(2)欠席者に対して
記念品と挨拶状、記念撮影のスナップを送る。VIPの場合は、担当者が持参して手渡す。

<< 支出費用の経理処理と税務取扱い >>

式典費用、祝賀パーティー費用とも、「法人成り発表会」の取扱いと同じである。

著者
橋口 寿人(経営評論家)