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販売促進

代理店・特約店会議
<< 代理店・特約店会議の目的 >>

(1)会議の目的
会議の目的は、代理店・特約店と自社のコミュニケーションの強化に最重点が置かれることになるが、もちろん会議で伝達、検討する議題によって、会議の開き方は異なる。
代理店・特約店会議で伝達、検討する事項は、主に次のようなものになる。
・自社の営業方針の伝達、営業施策の発表、取引ルールの改定など、会社側から伝達し、協力願うもの。
・自社が代理店・特約店の協力のもとに進める営業的行事(たとえばセールスキャンペーン、特定商品の拡販策)の案などを討議するもの。
・緊急に対処すべき事項(たとえば製品のトラブルによる回収、あるいはパーツ交換など)の協力要請や応援依頼などをするもの。
これらの会議の運営は、いずれも自社のほうで準備や進行の役割をもつ場合がほとんどである。

(2)会議の位置づけ
イ.開催方法
代理店・特約店を集めた会議は、自社の意図を的確に伝える最適の機会なので、目的に応じて定例的に開催するものと、臨時に開催するものに分けるのがよい。定期的なものは、その期間中の報告や次の開催までの営業方針の伝達などが主目的となり、臨時的なものは特別な議題で開催する。
開催の期間は、大がかりなものは2~3日というのもあるが、大体において1日か2日というのが多い。1日のみの場合は、会議のあと懇親会を開くという例が一般的である。
ロ.主催者
代理店・特約店会議は自社が主催するものと、代理店・特約店会が主催するものに分けられる。そのほか、代理店・特約店が会組織(任意団体)をつくり、事務局を自社に置く場合もある。このときの招集は会の会長名で行う。
ハ.参加範囲
全国の代理店・特約店を一堂に集めて行う会議と、ブロック単位、支店担当地域内の代理店・特約店を集めて行う会議に分けられる。会議の目的や討論の有無などで参加人員を考えることになる。

<< 事前準備 >>

(1)準備委員会の設置
たとえ年1回、あるいは半年に1回の開催である場合であっても、これを日常業務のなかで処理するのはむずかしい。しかも全国の代理店・特約店を集めた会議を運営するとなれば、簡単に自社の会議室や、隣接ビルの貸会議室で実施するのも考えものである。やはり、規模の大小にかかわらず、スムーズな会議運営を重視して、しかるべき施設を利用したうえで、準備委員会を組織して対応したほうがよい。
準備委員会は4か月ぐらい前に結成する。とくに、会場のリザーブは早い時期に手を打っておかないとふさわしい会場の選定がむずかしくなるので、会議日程が何月のいつ頃と決まった時点で、仮予約しておく。
イ.準備委員会のメンバー構成
営業の部課長クラスを1~2名、営業部から3~4名、総務関係から2~3名の選抜で、7~8名で委員会を構成するとよい。
リーダーは営業部のトップの役職者が担当し、進行に当たっては営業担当役員をはじめ、役員会と密にコミュニケーションをとること。
ロ.委員会の社内的位置づけ
この会議は主として自社の営業方針、施策等を代理店・特約店に理解してもらい、協力願うことに徹するものである。営業部としては、この目的達成の如何が販売成果に直結していることを認識して、会議運営を大きなテーマ解決の重要業務ととらえて対応すべきである。
したがって、委員会担当者の役割は重要であり、その間の日常業務は委員以外の社員で処理させるぐらいの配慮が必要である。

(2)規模、内容、出席者の検討と決定
全国の代理店・特約店を対象にする場合であろうと、地域単位で行うにしても、それぞれの取引額の多寡で参加店を選定しがちであるが、同列で考えるべきであろう。案内しても欠席するだろうからと、対象数から減らして会議の規模を考えずに、できるだけ出席してもらうことに努力する。
出席する代理店・特約店が20社以上になると、討議を目的とする会議運営はむずかしい。通常はワンウェイの伝達会議として、時間は4時間が限度と考え、進行内容を組む。閉会後は懇親会(立食パーティーが適切)を併催することを考えたい。出席者は、代理店・特約店の社長、または営業担当役員としたい。
発表内容についてはかなり機密性の高いものもあるので、発表方針と代理店等の方針を組み合わせることができるレベルの方々に参加してもらう。代理店・特約店を継続しているが、その役割を果たしていないとか、自社の方針に反した活動をしている企業は、参加対象からはずすことも検討項目にする。

(3)スケジュール表の作成と業務分担
イ.スケジュール表の作成ポイント
スケジュールは、大別して、当日を中心に、準備段階のスケジュールと、終了後のスケジュールの3つになる。当日のスケジュールは、議題をもとに細かく設定しなければ時間どおりの運営ができないので、別に表を作成する必要がある。
会議のスケジュールモデル


ロ.会場の予約
準備委員会の結成前の重要業務として、前述のとおり会場予約がある。会議室のリザーブは早めのほうがよく、できればダブルでリザーブしておき、決定後一方をキャンセルする。キャンセルチャージがかからない日限を確認しておくこと。

(4)予算設定のポイントと予算書
会社から予算枠をもらう前に委員会で予算要求額を設定する。予算要求案はA、B案で進めたい。1級ランクの宿泊、交通費の計算と準1級の予算で組み上げる。
なお、年に1~2回、代理店・特約店の代表的立場の方々に参集いただくのであるから、会社としては、わずかなことでケチった印象を与えないように予算設定したい。
予算金額の大小は懇親会があるか否かで違ってくるので、この関係の確認をしたうえで、宿泊費、交通費と参加者数などをチェックすること。
予算項目別の留意点としては、次のようなものが考えられる。
・会場費……会議会場と懇親会場の費用
・交通費……代理店・特約店の所在地から開催地までの往復料金。JRはグリーン車の使用をどうするかがポイント。飛行機は、空港間と空港までの交通費込みで実計算をして予算設定をする(後日、精算用紙に書き込んでもよい)
・宿泊費……ホテルはシングル室を用意(朝食も含んで予算化)
・懇親会費……1人当り飲み物込みで予算化
・印刷費……案内状、資料の印刷費。総枠からみれば小さな数字だが予算化しておく
・予備費……総額の10%程度を見込むこと
上記のうち、交際費になるものについては、課税比率を加味しておく。内容については、経理と十分相談すること。

(5)資料作成と配付
イ.資料作成
方針などの重要資料と補足資料とに分けられる。議題の内容説明は、できるだけ箇条書きにすることがポイントである。併売代理店も参加するのであるから、部外秘扱い的内容をどの程度明らかにするかも内部で検討しておくこと。資料の原稿は、その議題の説明者が最終決定者となって作成のこと。
補足資料については、すでに公的に発表されたもののコピーは出典を明確にする。自社の過去のものはどうしても説明に必要なものについてのみ配付する。
ロ.資料の配布
資料を当日配付にすると、その内容を読むほうに意識がいき、説明の聴取が不十分になる可能性もある。現在進行中の議題を収録した資料に目を奪われることもあるので、事前に配付し、当日持参してもらうようにするとよい。
多分、多忙な職務の人たちだから目を通すのは移動中になると思うが、そのほうが鮮明に意識されてよい。配付する資料に、移動中、あるいは前泊のホテルで一読いただきたい旨を添えるのも一法である。
なお、(秘)扱いなど要注意資料は、当日配付する。内容によっては、会議終了後に回収することも考える。

(6)関係者への連絡等とモデル案内文
代理店・特約店会議への出席方を案内した人には、必ず出席してもらうように努力すべきである。当日になって欠席の場合は、代理の方でもよいから出席してもらうようにお願いしておくことも考えたい。
この会議に欠席者が多いことは、会議を軽視されたことになり、次回の運営にも支障をきたすからである。また参加したメンバーが無理して出席したのに欠席者が多いというのでは、次回は欠席してもよいと判断されがちになる。
したがって、日程が決まったら直ちに連絡して、スケジュールのなかに組み込んでもらうようにする。連絡はFAX等で、「後日議題も併せて正式案内いたしますが」ととりあえず日程連絡をする。FAX等の宛名は社長か営業担当役員としておき、参加していただきたい方宛に発信しておく。
FAX等の発信から正式案内までに期間がある場合は、電話、口頭などでメッセージを入れておく。その時点で出席が危ぶまれる人には責任者からプッシュしてもらう。


<< 当日の運営 >>

(1)得意先の応対ポイント
会議に出席する得意先に対して、会議前後や懇親会でどう応対するか、さらに、前日宿泊、当日宿泊の伴う得意先をどのように接待するかがポイント。
イ.前日宿泊得意先の応対
前日宿泊する得意先が期間中、どのようなスケジュールで滞在するかによって、その応対を考えなければならない。会議前日は、自社側としてはそれなりの準備と明日への心構え、体調を整えることに傾注すべきであり、前日の接待はある程度の範囲にとどめても失礼にならない状況にある。
前日宿泊する得意先が当日も宿泊するのであれば、前日は到着の確認と「お疲れさまでした」の挨拶で失礼したほうがよい。当地への到着場所へ出迎え、ホテルまで案内し、食事の案内までするということでよい。もちろん、食事代は当方で負担すべきであろう。失礼する場合、「9時頃までなら社にご連絡ください」と用件のある場合の連絡先を告げておくこと。
ロ.当日の応対
会場へは直接行ってもらうことにしたい。ただ、会場へ行く前に会社に来てもらう用件があれば、ホテルに迎えに行くようにする。
会議中は統一的な応対で済むが、懇親会から2次会への応対にはとくに気を配ること。2次会への誘いはグループ別にするように考え、1グループ4~5人程度に社員1~2名で行動をすること。
懇親会から一緒に動き出すのでなく、事前に行先の店を案内しておくか、ロビー等で待ち合わせ、なるべく他のメンバーに2次会に行く状況を知られないようにする。
ハ.翌朝の応対
前日ホテルへ送るか、近くで別れた折に、「明朝はお送りできませんので、お気をつけてお帰りください」とはっきり告げてあれば、翌朝は応対の必要はないが、そうでない場合や、観光等で夕方に帰途につく相手の場合は放置はできない。営業担当や、その代行者がホテルへ行き、食事を済ませたのを確認するか、共に朝食をとって、適当な場所へ送ることで応対の締めくくりとしたい。
得意先のお世話=感謝も、度が過ぎると逆に迷惑になる場合もある。得意先のプライベートな時間と思われるときは介入しないほうがよい。あらかじめ前後のスケジュールを聞き、お手伝いすべきこと、接待すべき時間を予定化し、担当まで決めておくとスムーズに事が運ぶものである。
人によっては、言葉ではっきり意思表示をしない場合もあるが、相手の態度や言動で察知するのも応対術の1つであろう。下戸に酒を無理強いするようなことは、相手の気分を害する始まりと心得たい。

(2)議事次第と運営チェックリスト
イ.議事次第
会議を進行するためには議題が明確になっていなければならない。この会議は、賛否を採って議決するものでなく、伝えたいことを伝え、それに対する質問、建設的意見・提案をもって終了するように進行しなければならない。
議事進行の例としては、次のようなものが考えられる。
・開会宣言(営業部長クラスが進行係を兼ねる)
・社長挨拶
・議題(各議題について質問、意見を求める)
a.新製品発表キャンペーンについて(営業担当役員)
b.消費者窓口開設について(広報部長)
(開始1時間30分~2時間後に、コーヒータイム10分)
c.合同求人システムについて(人事部長、営業部長)
d.その他
・総括質問
・議題内容の決定事項内容の再確認
・業務連絡
・閉会宣言(営業部長)
ロ.運営チェックリスト
会議中は、次の2点に注意することが肝要である。
・自社の社員は、後部余席あるいは壁側に着席していること
・場内係の2~3名が動くほかは、立ち動かないこと
運営チェックリストは次のとおり。
□受付体制……地区別に受け付けているか
□名札……誤記はないか。予備の用意はあるか
□指定席表……きちんとできているか(地区別あるいは自由にする)
□配付物……補足資料等も整っているか。忘れた人への配付分も準備してあるか
□お茶……開始前にテーブルに配れるように手配してあるか
□喫煙場所……場内禁煙の場合、喫煙可の場合とも、喫煙場所、灰皿の用意はしてあるか
□マイク類……使用可能かチェックしたか。コードの長さは十分か
□演卓回り……水、おしぼりの確認、ボードの筆記具にモレはないか
□議事次第……見やすい位置に貼りつける用意がしてあるか
□休憩タイム……議題の変わり目にl0分くらい設定するが、コーヒーまたはジュースの準備は大丈夫か
□質問・発言……進行係の進行に合わせて、ワイヤレスマイクの持運び担当者は決めているか
□写真……スナップ写真係にとるべきところの指示はしてあるか
□VTR……収録するところについて指示、確認はしてあるか
□録音……議事内容記録のために、予備の録音機等も手配してあるか

(3)会場レイアウトと飾付けモデル
会場レイアウトモデル

(注)会場のレイアウトは、慣れている会場宴会係とよく相談するとよい。

(4)アトラクション等の進め方のポイント
・アトラクション……アトラクションはカラオケに代表されるが、歌っていただく人と打合せをしておく。担当社員から得意先の方に依頼し、内諾を得たら進行係に連絡する。片寄ったり、1人で2曲も歌うことのないように、またブロックで1~2名とするようにコントロールする。
・アトラクション以外……カラオケに人気がない、あるいは歌が少ない場合はビンゴゲームを入れる。ゲームは宴の途中で開始し、最低でも1~2名がビンゴになるようにゲームを展開する。時間があればあと1~2回、同じゲームを継続する。パーティーは楽しく、お互いがリラックスできるように進行係が一定の範囲内で臨機応変に対応する。

<< 後始末とフォローアップ >>

(1)出席のお礼と補足資料の配付
出席された得意先には礼状と補足資料等を届ける。会議内容や資料についても先方の社内会議で説明していただくように依頼をする。必要なら会議に出席させてもらい、その折に説明する。

(2)欠席得意先のフォロー
都合により欠席された得意先に対しては議事内容についての説明に参上する。説明は、できれば会議の形式を採らせてもらえるようにする。

(3)決定事項の推進状況チェックフォロー
代理店・特約店といえども社内組織ではなく、まったく別の企業体である。したがって、会議で決まったこと、依頼したことが進行されているか否かのチェックをすること。この確認は、会議後1か月後ぐらいがよい。
推進されていない場合は、その原因を探り、原因除去に努力する。推進されているが、曲解されているとか、進行が遅れている場合は補正依頼や推進協力をして、代理店・特約店が歩調を合わせることに全力をあげる。

<< 支出費用の経理処理と税務取扱い >>

(1)支出費用の精算
会議が終了したら、できるだけ早い時点で支出した金額をチェックして確定する。仮払いで持ち出した現金の精算はもとより、後日請求払いについても金額は明確にしておく。

(2)予算対比
会議開催のために設定された予算総額に対しての使用額と、費用項目別の予算対比を行い、次回の参考データとする。

(3)税務の取扱い
代理店・特約店会議の費用は、その会議の内容等が会議としての実体を備えていると認められるときには、その費用の総額のうち会議に通常要すると認められる費用は、会議費として損金処理できる。なお、パーティー費は、当然、交際費扱いとなる。
その他の経費では、宿泊費、交通費が交際費になるか否かであるが、この会議の主たる目的が会議であり、逆に考えれば自社が代理店・特約店に赴き、説明しなければならない業務であるから、会議費として処理して差支えないが、交際費とならないように議事進行内容や案内、会議の場所、会議資料等で十分立証できるものを保存しておくことがポイントである。
2次会や前日宿泊者との飲食等は、当然接待・交際費になる。この行事では交通費、宿泊費の総費用に占める比率が高いので、経理・税理士と十分打合せのうえ、これらの領収書の内容を適切なものにしておく。

著者
橋口 寿人(経営評論家)