ビジネスわかったランド (会社行事)

販売促進

代理店・特約店内見会
<< 内見会の目的 >>

(1)社内的な意味
イ.内見会は定例的に行う商品のPRの場であり、得意先の反応をみながら、商品戦略、あるいは生産・仕入戦略の軌道修正を進める。
ロ.後方部門も含めた全社員と代理店・特約店との直接接触により、全社員が得意先への親近感を深める機会となる。
ハ.商品の変化の流れと季節商品の再確認のチャンスとする。とくに営業部門では日常の活動で商品を見直すことを忘れがちであることを補正する。

(2)社外的な意味
イ.この行事を通じて、会社の動き、商品構成の変化などを代理店・特約店に認知してもらう。
ロ.代理店・特約店営業部門に対するPRと販売活動推進のチャンスとする。
ハ.代理店・特約店が抱く商品に対する評価や販売情報を把握する好機。

(3)行事の位置づけ
イ.内見会は定期的に行うのが一般的であり、新製品やオリジナルギフト品などを発表、案内する行事とする。
ロ.内見会は代理店・特約店の代表に開催案内するが、営業担当に見てもらうほうが直接的な効果を期待できるから、営業実務レベル対象の社外的行事にする。
ハ.営業担当が集まるとなると、全国1か所だけでは参集しにくくなるので、支店がある場合は代表的な支店でも実施するように考える。
ニ.開催時期は最需要期の3か月前ぐらいが、小売店、末端ユーザーへの商品流通面からみて適期である。

<< 事前準備 >>

(1)準備委員会の設置
イ.委員会設置の時期
内見会の準備委員会設置の時期については、アトラクションに何を選ぶかによって期間の長短が決まる。有名な、あるいは売れっ子のタレントをアトラクションの中心にするとすれば、6か月以上前からスケジュールを確認しておかなければならない。これを別にすれば、委員会は4か月ぐらい前に結成して、当日までの準備を進めればよい。
ロ.委員会のメンバー構成と人数
内見会は営業部門が中心になって実施する行事であるから、営業部門を主体に準備委員会を結成すればよい。営業部門で過半数を占め、その他に総務、広報、宣伝から1~2名ずつ参加してもらい合計10名ぐらいで構成する。
営業部門以外の委員には、会場手配、アトラクションの交渉、印刷物の製作などの部分について意見を出してもらったり、担当をしてもらう。
ハ.委員会のリーダー
委員会のリーダーには営業部門の委員を当てるとよい。内見会は営業的行事であり、内見会で営業的展開が進めやすいようにもっていくために、営業部門にイニシアチブをとってもらうわけである。
ニ.委員会の社内的位置づけ
どの企業でも代理店・特約店は自社の業績を左右する重要な組織であるが、すべてが自社の専売代理店・特約店とは限らない。有力代理店・特約店ならば、同業他社、異業種との接触もあり、内見会とはいえ比較されやすいので、会社としてもそれなりの配慮をすべきである。業種によっては内見会で売上目標の半分以上を達成することもあるので、委員会は優先してこの業務に主力を置き、他部門も積極的な協力体制をとらねばならない。

(2)規模、内容、出席者の検討と決定
規模は、全国の代理店・特約店を対象に1か所で実施するか、支店単位で実施するかによって差が出る。交通の利便性から札幌、東京、大阪、福岡ぐらいで実施し、来場予定者に合わせて規模を検討する。
内容は、単に商品だけを売り込むにとどまらず、陳列やコーディネートの方法などといった売りのノウハウを同時に提供するなど、商談を強力に進めるお膳立てを考えておく必要がある。
出席者は、内見会の目的達成の観点からすれば、代理店・特約店の仕入担当者と責任者はもちろんのこと、営業担当役員と中堅幹部にも必ず参加してもらうように働きかける。

(3)スケジュール表の作成と業務分担
イ.スケジュール表の作成ポイント
スケジュールは、大別して、事前準備、当日、後始末に分けて考える。当日を中心に前後をどのようにすれば、総合的によい結果が得られるかに焦点を合わせるべきである。
ロ.スケジュールと業務分担
本来であれば、準備委員会が結成された後に、その委員会がすべての業務を進めていくわけだが、前述したように、有名タレントによるアトラクションを組み込むことを考えている場合は、委員会結成よりも前の段階で、主体となるべき営業部門が、タレントのスケジュール把握と仮予約(仮予約がむずかしい場合は複数のタレントと接触しておく)を行っておくこと。
また、シーズンともなれば同様の内見会等が重なることは目に見えているから、会場の仮手配もしておくのがベターであろう。
内見会のスケジュールモデル


(4)予算設定のポイントと予算表
イ.予算の組み方
代理店・特約店対象の内見会は、一定量の見込みオーダーをとれる行事であるから、経費予算も組みやすいものである。というのは、売上目標に対してどのぐらいの比率で販促費を支出するかという線はどこの会社でもある程度設定しており、それをベースに当該内見会の売上目標に合わせた販促費総枠を決めることができるからである。
そして、その額を使途項目別に割り振り、各々与えられた予算額のなかで、見積りをとって決めるようにもっていくわけである。各項目別に割り振った額でどんな内容のことができるか、また予算内でユニークな行事になるかは担当者の腕の見せどころになる。
もっとも、内見会は、会社としての戦略展開の場でもある。したがって、年間のトータル販促費の枠内ではあるが、当該内見会に積極的な予算をつけて内容の充実したものを開催することを目標に、予算内で実施できることと、もう1ランク上の予算であればどの程度のものが実施できるのかを示した2案くらいを設定して予算調整をするとよい。
ロ.予算配分 
参加者の交通費は、行事の性格からみて負担すべきである。最近は車利用での参加も多いが、公的交通機関利用を基準とする。参加各社が同一人数の参加であれば問題ないが、1人参加であれ4人参加であれ、参加者すべてを負担するとなると、不公平が生じる。1社2人分まで当方負担というようにして、案内時にその旨伝える。したがって、交通費予算は別枠とし、その他の予算は次のように配分する。
・会場費用……10~20%(会場の借用、飾り物も含む)
・配付資料費……20%(配付物のうち、後日使用するものがある場合は、その分を考慮して増減し振り分ける)
・記念品代……20%(予算の都合で適切なものがないときは、自社製品を充当する)
・飲食費……20%(特別の宴席を設ける場合は別予算。通常は喫茶、軽食程度を見込む)
・搬入・搬出費……5~10%(外部会場の場合の費用。距離、量による)
・諸雑費……5%(小物の購入や、連絡費、打合せ費など)
・予備費……10%(総予算の調整費として計上する)
以上の項目は一般的なものであり、配分比は目安としてみたい。各項目に重要度の差はなく、バランスを崩すことのないように心掛けたい。参加者1人に対してどれぐらいの費用がかかるかを見積もり、前回等との比較で極端な出入りがないかどうかも検討しなければならない。

(5)関係者への連絡とモデル案内文
この行事は、自社営業と一心同体のように動いてもらいたい組織に対して働きかけるものであるから、その対象者、とくに営業担当には参加してもらいたいものである。商品を目の前にして、末端販売店の評価や、営業担当の生の意見を聞けるチャンスであり、セールスポイント、販売施策を代理店・特約店の担当者に説明することができる機会である。
この点から考えて、案内状を届ける前に案内先企業の営業・仕入責任者に一報を入れ、スケジュールを調整してもらう。一報はファクシミリ、電話でもよいが、後日、商談に出向いたときに再確認しておく。ファクシミリによる場合は当人に届いているか否かのチェックの意味で、電話による場合は聞き流されていないかのチェックの意味で、2回ぐらい口頭で念押ししておくとよい。
次に内見会の案内状モデルを示しておく。


(6)事前最終チェック
事前準備が一応終了した時点で、次のような項目をチェックし、準備にモレがないか点検する。
□予約会場を見て、陳列・配置の基本を考えたか
□会場内で準備できるものの範囲と予算を考えたか
□アトラクション出演予定のタレント等のスケジュールは確認してあるか
□アトラクションの内容、構成は決まったか
□印刷物(パンフレット等)を手配したか
□配付物の納品日を確認したか
□記念品を具体的に選定したか
□記念品の個数、包装状態を決め、発注したか
□案内状を完成させ、印刷所に回したか
□案内状は余裕をもって届くように発送したか
□道具、陳列商品の搬入と担当者は決定しているか 
□時間は何時ごろか
□受付は誰が担当するのか
□当日の受付の人員の確認は万全か
□説明、挨拶の人間とローテーションは確認しているか
□内見会が2日以上の場合、商品の保全・施錠担当者は決めたか
□茶菓、飲物、軽食の手配はしたか
□場内の清掃、整頓は誰が行うのか
□運送業者は手配したか
□撤去作業の担当者は決定済みか
□商品は倉庫に戻すのか
□行事運営に使用した経費の精算をしたか
□仮払金と未払金の経理処理はいつまでにするのか
□経理との連絡窓口を決めてあるか
□礼状の文案を作成し、関係者に回覧したか
□礼状は日がたたないうちに発送できるようになっているか
□行事運営に要した書類の整理担当者は、決まっているか
□アンケート、人気投票を行った場合、そのとりまとめと保管はどこが担当するのか決めてあるか
□内見会で受けたオーダーの処理の進め方は決めてあるか

<< 当日の運営 >>

(1)得意先の応対ポイント
イ.得意先は様々である
内見会への来場者は、来場時間や肩書きもまちまちならば、得意先での当社に対する位置づけ、専売代理店か、併売代理店か、併売の場合はその企業が当社製品をどれぐらいのウエートづけで取り扱っているかもまちまちである。企業によっては、営業マンの担当は地域別であっても仕入担当は商品別ということもある。また、担当職務も営業と仕入関係に二分される。
いずれにしても、来場者には様々の特性があることを応対の前提にしなければならない。
ロ.得意先の応対の基本
得意先の応対には、それぞれの担当営業マンが当たるべきだが、1人1社というのは稀で、10~20社は担当しているから、1人では対応しきれない。
営業のトップ、あるいはその補佐役は全得意先に挨拶し、応対しなければならないが、それ以外の、たとえば営業部門の内勤者や女性は営業マンの補助という形にして2~3名のチームを組ませてフォローさせる。そうすれば営業マンは、説明応対中に次の来場者があった場合、「ちょっと、失礼します。後は○○が説明しますのでどうぞごゆっくりご覧ください」と一言断わることによって次の応対に移れる。
ハ.得意先の応対あれこれ
・年齢差をカバーする方法……来場者には年齢的な差がある。年配者が得意先の若年者の応対をする場合、どうしても高圧的になりやすい。20歳以上の差があれば話を聞くほうは親身に受け取るが、10歳前後の差だと反抗的になりやすい。このような問題を排除するために、年配者は、同じ年代の人か、より若い人を担当するようにすればよい。
・話題は商品を中心に……内見会は商品をよく見てもらうためのものなので、商品説明を中心にする。商品特性、出荷対応時期などをテーマに話をし、できれば商品に対する意見を引き出すとよい。
・商談は立ち話でなく腰掛けて……陳列商品を説明するには立っている状態で進めなければならないが、その商品について、あるいは全般の商品についての商談はテーブルを囲んで座って進めるようにする。
・商品の批評を受けるために……口頭で意見を聞ければよいが、なかなか的確な意見が出てこなかったり、得意先の上司の意見が来場者の意見になってしまうこともある。アンケート、人気投票などの形式を使って評価を受けることにすれば、商品をじっくり吟味してもらうことにも結びつく。もっともあまり考えて記入するものでもないから、内容を絞ることがポイントである。

(2)会場レイアウトと飾付けのポイント
イ.会場レイアウトのポイント
次のモデルのような2間続きか、長方形の会場が利用しやすい。
会場レイアウトモデル

・商品を使用する状態で展示する場合は、その部分のスペースを別にとる。
・試食、試飲できる商品は、商談コーナーを利用する。
・アンケート等は、出口のテーブルで集めるようにする。
・ハイライト品は、見せ筋商品または販売重点商品を陳列する。中央以外にも陳列場所を分散して、混雑を避ける工夫もしたい。
ロ.飾付けのポイント
・観葉植物などを利用して落ちついた雰囲気を出すようにし、シックにまとめることを念頭におく。
・アトラクションの時間、タレント名などはパネルで表示する。

(3)アトラクションの進め方
アトラクションは内見会のそえ物である。単に商品だけの陳列、商談では堅苦しさが否めない。それを除去する役目と考えたい。
内見会という性質上、一定の拘束時間で運営することはむずかしく、ショーは30分ぐらいで2~3回実施するとよい。2回の場合は11時半、14時という具合に午前、午後1回とし、3回の場合は11時、13時、15時ぐらいの配分で行い、来場者に気分転換の場を提供する。内容をまったくビジネスと離れたものにするか、何か関係あるものにするかも一考を要するが、後者のほうがよいであろう。アトラクションは、2日間同じものができない場合は1日でもよいし、初日と2日目は内容が異なってもよい。
タレントのサイン色紙などを景品にしたゲーム、抽選会も楽しみを増す。

<< 後始末とフォローアップ >>

商品を見せることが内見会の目的である。とはいえ、商品を見てすばらしいと関心を誘っても、それが販売に結びつかないようでは困る。
そこで終了後は、より多くオーダーをもらうようにフォローすることがポイントになるが、専売代理店と併売代理店ではフォローの仕方が異なる。
併売代理店には、自社製品の取扱いウエートを上げてもらえるように、まず、自社商品は売れるということを実感してもらう必要がある。そのためには他社に先行して、オーダーをとり、商品納入を進め、売れる体制づくりをバックアップする。早めに消費者の目に商品を触れさせる機会をつくることが販売チャンスを拡大し、売上増につながる。予約受注、商品サンプル持参による有力店への販促などでそれを推進する。
専売代理店には販売会議に出席させてもらい、売上増大のための具体的な支援内容と応援体制を示し、代理店の業績に貢献できるよう協力をする。また、参加礼状の発送、アンケートや人気投票の結果も連絡して、次回の参加に結びつけるようにする。
交通費の負担分の精算が残っている場合は、速やかに処理しておくこと。荷物になるので資料等を後送することにした来場者についても、当人宛に速やかに送る。欠席した人や、来場者以外で渡すべき人にも早く資料を届ける。

<< 支出費用の経理処理と税務取扱い >>

イ.支出経費の整理
仮払精算をはじめ、未払額の確定をする。できるだけ予算項目別に整理をする。整理の際の注意点は、税務上の取扱いに関する飲食関係の費用、記念品代、先方への当方負担交通費などを明確に区分しておくことである。
ロ.予算対比
超過した項目の分は、得意先に満足してもらった有効な支出だったか、また全体の額として超過した分は、売上という形で補填できるのかなどをチェックする。終わったからとあきらめるのではなく、使い過ぎた予算は補填する努力がほしい。
ハ.税務の取扱い
内見会は、ホテルの会議場等を借りて実施する場合が多いが、これらを含めた会場借上費も、開催するのにふさわしい場所であれば損金処理できる。会場で出す飲食物についても、それが商談・会議に準ずる場合の茶菓サービス代、つまり3,000円程度を目安とする昼食に準ずる弁当や食事の範囲であれば、販促費として費用処理できる。特別の宴席を設定しないことが大切である。
また、最寄駅までの交通費や遠隔地からの来場者の宿泊代を会社が負担したときは、それが自社の旅費規程に準ずるような通常要する費用の範囲内であれば、損金算入が認められる。

<< より販促効果を上げるために >>

内見会は、定例的に行うため、マンネリになりやすい行事でもある。そこで、楽しく参加してもらうとともに、販売に結びつく次のような手法を検討する。
イ.人気投票
展示商品のうち10~15品を選んで人気投票をする。選んだ理由も選択できるような投票用紙をつくる。投票用紙には投票者名と選定商品番号を記入する。選択理由は項目を選んでもらう方式をとる。投票結果については発表するとともに、トップ商品選定者に抽選でその商品を進呈する(進呈した商品のモニター報告も受ける)。
ロ.ゲームでお土産
展示品を何点か選び、抽選会で当たった参加者へのお土産とする。これは記念品以外のプレミアムとする。
ハ.予約オーダー
内見会当日や限定日までにオーダーした得意先に対し、プレミアムをつける。プレミアムは値引ではなく、商品の1割サービスや、得意先が自分の客に使えるノベルティなどのほうが、通常の価格交渉でごたつかないで済む。

著者
橋口 寿人(経営評論家)