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得意先家族招待観劇会
<< 得意先家族招待観劇会の目的 >>

得意先の社員を支える家族も、得意先と同じくらい大切である。得意先だけではなく、ときにはその家族も接待して、感謝の意を伝えたい。とくに休日も接待ゴルフなどに夫を送り出す夫人に対しては、日頃のお詫びの意味も兼ねて心のこもった接待をする。
毎年、定期的に行うようにすると、観劇の好きな人には喜ばれる。また、すばらしい演劇を鑑賞する機会を設けることによって、得意先、さらにはその家族に対しても自社のイメージ・アップを図ることができる。

<< 事前準備 >>

(1)準備委員会の設置
人気の高い公演のチケットは手に入りにくい。招待観劇会を行うに当たっては、企画立案、チケットの手配等早くから準備することが必要である。各部署から適任者を出してもらい、準備委員会を設置する。委員会のメンバーには、演劇に造詣の深い者を入れるように配慮する。

(2)規模、内容の検討と決定
得意先の家族を招待する場合には、予算の枠等も考慮して、1社あるいは1家族につき何人と招待客の範囲を限定することが必要である。営業・販売などの部署から招待予定者のリストを提出してもらい、招待客の範囲、人数を決定する。観劇の場合は、招待客の関心や嗜好に合ったジャンル、演目を選ぶことが大きなポイントになるので、家族構成や好きなジャンルなど、事前に綿密な調査をして内容を決める。歌舞伎、能、新派、新劇、ミュージカルなどが一般的だが、若い人に人気のある小劇団の公演や子供向けの演劇などもよい。もちろん、高価なチケットや手に入りにくいチケットなどを用意すると喜ばれる。
とくに希望がないときは、ジャンルや劇場などの格にこだわらず、評判を呼んだ公演や話題になっている劇団の公演などを選ぶ。
計画書を提出するときは、ジャンルや劇団などの選定理由を明記し、その劇団や公演を取り上げた雑誌や新聞の記事などを資料として添付すると理解してもらいやすくなる。

(3)スケジュールの作成と業務分担
業界の多忙時はまず避けたうえで、調査結果を参考にして対象となる公演を決め、公演日に合わせてスケジュールを立てる。
観劇会スケジュールフローチャートモデル

続いて、次のような係を決めて業務を分担する。
・統括責任者……家族招待観劇会の計画、立案、実行の総責任者として招待者の人選、計画全体の進行を担当する。
・進行係……チケットの手配、劇場との打合せ、当日の進行などを担当する。
・会計係……現金の管理、諸経費の出納などを担当する。
・文書係……招待客名簿や招待状、観劇のための資料などを作成する。宛名書きも担当するので、書道に堪能な者が適任である。
・接待係……当日、劇場での受付、参加者の手荷物の管理、案内、食事やお茶の手配などに当たる。得意先の社員やその家族と面識のある営業・販売関係の責任者が担当する。
・記録係……当日の記念写真の手配などを行う。
・記念品係……観劇の記念品の選定、調達などを担当する。
・配車係……参加者の送迎のための車を手配する。
●ワンポイントアドバイス
・チケットを予約するときの注意点は?
最近は、S席とA席の比率が大きくなっていて、A席といっても、必ずしも見やすい席とは限らない。座席表で確認し、事前に下見しておくことが必要。
・観劇を楽しんでもらうためのアイデアは?
歌舞伎や能は初めてだと言葉がわかりにくく、筋がつかめない。劇場のプログラムにストーリーなどが載っていないときは、ストーリーやポイントなどを説明した簡単なパンフレットなどを用意するとよい。また、参加者が当日の出演者のファンであるときは、劇場の担当者などに頼んでその出演者と話をしたり、サインをもらえるようセッティングしておくと喜んでもらえる。
・ぜいたくな気分を味わってもらうためには?
劇場の近くのホテルのディナー券を用意して、終演後に使ってもらうようにする。歌舞伎座などでは劇場内の食堂で幕間に食事ができるので、趣向を凝らした弁当などを予約しておくとよい。休憩時間には茶菓などを用意する。

(4)関係者への連絡とモデル案内文
イ.関係者への連絡
・招待客が多い場合は、事前に劇場側の営業担当者に招待観劇会であることを伝え、一般客とは別の受付を設置させてもらう。
・弁当や食事の手配や注文も前日に必ず確認しておく。
ロ.招待状
・招待客名簿の作成……同じ得意先に招待状が2通届いたり、重要得意先に招待状が届かなかったりというミスを防ぐために、招待客名簿はきちんと作成する。
・文章……あまり格式ばらずに、観劇の楽しさを感じさせるような文章にする。当日の演目や出演者などにも触れる。チラシを同封するのもよい。
・招待状の用紙……歌舞伎や能の場合には、招待状の用紙を和紙にするのも気が利いていてよい。
・発送……返信用ハガキを同封し、招待客名簿と照合したうえで発送。
・返信ハガキの整理……返信ハガキを整理して、人数を確認。返事のない得意先には、営業担当者が出向いて、参加者の氏名と人数を確認する。


(5)予算設定のポイントと予算書
予算設定の場合の項目は、以下のとおり。
・芝居チケット代
・飲食代
・土産・記念品代
・交通費
・案内状・しおり等の作成費用と郵送代
・雑費
以上のことを考慮したうえで、予算書を作成する。
なお、これらの費用については、得意先に対する売上割戻しを一定額になるまで支払わないでプールしておき、一定額に達した場合にそれを使うというような方法をとっているところもある。
それらの場合は、その金額にどの程度自社が上積みするかを検討する必要がある。

(6)記念品の選定と手配
記念品は高価なものでなくてもいいから、センスのいいものを選ぶ。オペラ・グラスや当日の上演作品の原作など、観劇に直接関係のあるものにするとよい思い出になる。歌舞伎座などでは歌舞伎にちなんだ土産物を売っているので、それをうまく利用してもよい。
会社名は外箱やのし紙にのみ印刷して、記念品自体には入れないほうがスマートである。印刷するときは早めに発注しないと間に合わないこともある。記念品は不参加者の分も用意すること。

<< 当日の運営 >>

(1)受付
劇場の入口のワキに「○○株式会社得意先様招待会」と書いた立看板を置かせてもらい、専用の受付を設置する。ここで座席券やプログラム、オペラ・グラスなどを手渡し、手荷物を預かる。食事の予約などがしてある場合はその旨を伝える。帰りには記念品を渡す。

(2)接待
接待係は参加者を席まで案内する。1人で参加した人がいたら、開演前や休憩時間などは近くに控えて話し相手を務めるなど、温かいもてなしをすることが大切である。参加者が大勢の場合は、大声で話したりして他の客に迷惑をかけることのないように気を配る。

(3)食事・弁当の手配
食事の予約や弁当の手配、お茶の用意がしてあるときは、当日の朝、数や場所を確認し、時間になったら参加者を案内する。
●ワンポイントアドバイス
リラックスして楽しんでもらうためには?
特定日に観劇会を行うと団体行動になるため何かと制約が多い。そこで、個別にチケットと案内状を送付し、後は自由にしてもらうというのも1つの方法である。この場合は、主催社側担当者は同行しないが、弁当の手配もしくは観劇後の食事の予約などは怠りなくやっておくこと。

<< 後始末とフォローアップ >>

忙しいなか、参加してもらったことに対する礼状と記念写真などを発送する。不参加者には事後に挨拶状と記念品を送ると、次回は参加しようという気持ちになってもらえる。

<< 支出費用の経理処理と税務取扱い >>

得意先、その他事業に関係のある者等を旅行、観劇等に招待する費用は、典型的な交際費となる。この場合、不参加者に対してキャンセル料を支出したケースについて、そのキャンセル料を値引きまたは割戻しとみる向きもあるが、それは参加者と不参加者との均衡上観劇等にかわるものとして贈られるものであるところから、これも交際費として扱われる。
なお、売上割戻し等の支払いを積み立てた金額で観劇等に招待した場合の費用は、積み立てた年度の所得の金額の計算上損金の額に算入しないで、観劇等に招待した年度において交際費として支出したものと扱われる。

著者
橋口 寿人(経営評論家)