ビジネスわかったランド (会社行事)

販売促進

販売店・代理店研修会
<< 販売店・代理店研修会の目的 >>

(1)社内的な意味
イ.社内の研修システム・内容を再確認し、系統的な教育活動の展開に結びつける。
ロ.販売店等のレベルを認知し、研修カリキュラムを再確認する。
ハ.会社以外の組織に対する指導、教育的役割の重要性と自社の指導方針、研修レベルの再確認をする。
ニ.ユーザーに近い位置にいる販売店等から情報を収集する場とする。

(2)社外的な意味
イ.自社の営業方針や技術水準を理解してもらい、販売面、サービス面の協力を依頼する。
ロ.外部企業に対する指導システム、研修レベルを評価する機会とする。
ハ.販売店等相互のコミュニケーションの場とし、アイデア交換の場とする。
ニ.販売技術、管理技能、技術力等を標準化するとともにさらにレベルアップを図る。
ホ.販売店等では実施困難な研修機会を提供し、人材教育、管理面のサポートをする。

(3)研修会の内容による区分
研修会の参加メンバーは、レベル、業務内容に差がないほうがよい。指導する側も、焦点を絞った内容で進められ、より具体的な内容によって研修することができる。また、年代の差が広がると思考に差が生じ、受講者間の接触だけでなく、指導者の対応も大変になる。
この2点で内容・対象を決めると、次のように区分できる。
イ.業務的区分
・営業担当者
・技術サービス担当者
・営業管理者・経営者
・経理・総務担当者
・事務機器担当者
ロ.レベル区分
・新入社員レベル
・主任クラスレベル
・中堅幹部レベル(部課長)
・経営管理者レベル(役員)

<< 事前準備 >>

(1)準備委員会の設置
イ.研修会の種別
研修会には、定期的に実施するものと、臨時に実施するものとがある。
・定期的に実施するものは、スケジュールに若干の変更はあるとしても、概要は決まっており、準備体制もパターン化できる。
・臨時のもの、たとえば新製品発売に伴う営業研修会や、技術サービス研修会はその目的によってスケジュールが確定する。
いずれにしても、目的と内容を合致させた形で推進することを念頭において準備委員会を設置する。
ロ.準備委員会のメンバー
社内に研修・教育を担当する部署、あるいは担当する人がいるはずである。このメンバーを主力に準備委員会を結成するとよい。主力メンバー以外には、その研修が技術的内容なら技術部から2~3名、営業、総務から各1名を加え、全員で6~7名ぐらいがよい。営業的内容なら営業部より2~3名、総務から1~2名を加え、やはり6~7名で構成する。
ハ.委員の役割
・研修関係担当者……カリキュラム内容・教材の検討、スケジュール立案等、研修内容を重点に担当
・営業のメンバー……販売店との連絡、折衝等、営業的業務を担当
・総務部門……運営全般のコントロールとサポート的役割を担当
ニ.委員会設置時期
規模、内容によっても異なるが、実施3か月前に委員会を設置するのが一般的である。手配に当たってとくに留意すべきは、会場と社外講師であるが、仮予約するか、あらかじめ代案を用意しておく。

(2)規模、内容、出席者の検討と決定
イ.規模
30人ぐらいが1つの集団として望ましい。多数集まって行うと、各人のレベルがばらつき、目的が達成できない。また、5人以下になるとマンツーマン教育になり、研修会としては適さない。
ロ.内容
終了後に平常業務に役立つ内容を具体的に研修する。講義のみではなく、ディスカッションや実習を組み込むと効果的。
ハ.出席者
人数、開催場所を考慮したうえで、対象者を選定する。会社の販促に結びつく販売店を主体に選ぶ。

(3)対象者別研修課題のモデルリスト
研修課題には、幅広い知識・技術の分野と専門分野とがある。対象者のレベルと必要性で課題を決定すべきである。
定期的研修パターンであれば、課題内容を段階的に組むことができる。
イ.対象別課題モデル
a.新入社員対象
・実社会での役割と心構え
・日常業務遂行について(指示、遂行、報告)
・対外的応対(挨拶、電話、ファクシミリ、文書)
・社内の人間関係(業務上、業務外)
・自己研修(生活のなかでの勉強)
・資格へのチャレンジ(販売・技術資格等)
b.主任クラス対象
・指導者的立場の心構え
・業務遂行改善努力(より効率的な仕事)
・稼ぎ手としての自己目標と達成方法
・事例研究(参加者から発表)
c.中間管理職対象
・組織の活性化と業務分担
・業界の展望と基本対応策
・異業種交流の考え方と業務への反映
・得意先管理とその活用
d.経営者対象
・人事管理と人材確保
・経営ビジョンの設計と発表
・後継者教育と相続対策
・異業種提携の事例研究
・情報管理システムの活用
ロ.課題の選定方法
課題の選定は研修会主催者側が一方的に決めるのでなく、ふだんから販売店の意見を聞いたり、事前のアンケート調査等により、対象者が勉強したいテーマは何かを把握しておく。事業に直接役立つ内容の研修課題を選定すれば、参加率も高くなる。
職務別に対象を絞った内容のときは、より具体的な課題を選び、即実践に役立つ内容の研修とする。以下にその一例を示す。
・DM発信とフォローの仕方(DM作成から訪問活動まで)……営業部門
・アフターサービスの件数とユーザー教育(使い方の指導、保守の工夫案内によって、サービス件数を減少させる)……技術サービス部門
・事務機器のリース契約のポイント……事務管理部門

(4)スケジュール表の作成
スケジュールは、研修期間を中心に準備期間、後始末の3つに分けて組み立てる。期間中のスケジュールは起床から消灯まで時間を区切って作成する。
準備委員会設置以前の業務には、会場の仮予約、外部講師の選定がある。定例的に研究会が実施される場合や、会社の施設を使う場合は仮予約は容易であるが、それ以外の場合は留意しておく。外部講師も2案ぐらい考えておく。
研修会のスケジュールモデル


(5)予算設定のポイント
研修会は多額の予算をかけず、常識的な範囲で予算化する。予算の多寡よりも内容を盛り上げる工夫がほしい。
参加する側にとっても、投入する「参加費+人件費」に対して得られる収益を考えると、多額な費用投下をしたからといって、必ずしも実効性があるとは限らない。したがって、参加者側から有益であるとの評価を受けられる内容構成が必要である。
研修会を定期的に行う場合は、あらかじめ事業予算に組み込み、その予算を配分する。会社の研修費予算は、販売店等の社員研修と自社社員の研修が含まれている。


(6)関係者への連絡と案内文モデル
研修会は、一定期間拘束され、勉強をさせられるというイメージがあり、大半の人ができれば参加したくないと考えている。
したがって、個人の自主性に任せると、主催者が参加してほしい人が研修会に不参加になることが多いので、開催が決まったら、まず先方に参加要請し、出席率を高める。
正式な案内状を出す前に、幹部対象なら本人に直接、社員対象なら直属上司に案内するとともに、当人に業務命令指示を出してもらうよう、口頭、ファクシミリで依頼しておく。


(7)資料作成と配付
資料作成に当たっては、対社外の研修であることを念頭におく。研修というと受講者はこちらの指示どおりに動かせるとの錯覚に陥りやすいが、これは大きな誤りであり、対外的に失礼になる場合もある。
イ.資料の作成
テーマと講師と研修方式の3要素から、どんな資料を作成するかを検討する。講師が外部の場合は講師と相談のうえ、どちらで準備するか決定する。外部講師の場合、レジュメで対応するケースが多い。
社内講師の場合は講師にテキスト、資料を選定してもらう。この場合も新規作成なら、その作成日数を考えて原稿を準備してもらう。外部からの購入資料については、書籍の発行年度、統計資料の年度等に留意して用いる。書籍は基本的なもの以外は2年以内、統計資料は調査年度が最新かどうかがチェック基準となる。
外部データ、文章の引用については出典を明らかにしておく。外部データを修正した場合も「××データをもとに作成」等、注釈を加えておく。
ロ.資料の配付
資料は、できれば予習をしてもらうためにあらかじめ届けておき、当日持参してもらうのが望ましいが、新入社員等は別にして、日常業務をもっている人にとってそれは容易なことでない。
そこで、前日あるいは当日、移動時間内で目を通してもらえる程度の量を届けるのがよいだろう。全部の資料を届けるのでなく、資料の要点、もしくは一部を届けるのも1つの方法である。
ハ.配付方法
資料を前送する場合、自宅に送るか、勤務先に送るかであるが、基本としては勤務先の責任者にまとめて送り、一読を依頼する付箋をつける。
当日配付分の資料は、講義テーマごとに配るほうがよい。というのは、一括して配付すると、テーマ以外の資料に気を奪われて、研修に集中できない恐れがあるからである。

<< 当日の運営 >>

(1)参加者への応対ポイント
イ.連絡先の告知
同じ会場を何回も利用している場合はともかく、初めての場合は、途中で迷うことも考えられる。また、交通機関のアクシデントで時間までに到着不能な場合もある。よって、連絡先をあらかじめ告知しておく必要がある。
ロ.受付
受講者の名札その他、手渡すものを準備して予定時間より早めに待ち受ける。その際、「ご苦労さまです。よろしくお願いします」などと声をかけて応対する。
ハ.席の組合せ、宿泊の部屋割り
集団行動でありながら、ある面ではプライベートな所もあるので、研修場での席配置、宿泊の場合の部屋割りには十分気をつける。
席は同じ企業の場合、隣同士に配置する。受講者を何組かに分けてグループ研修をするときはなるべく別々のグループとする。部屋割りはシングルがベストだが、予約がとりにくい。2人以上の場合で他企業の人と同室になる場合は、地理的に離れた企業で組み合わせるか、同年代にするのが一般的。
ニ.バランスよく応対
企業が主催すると、どうしても取引関係の長短や深さで特定の相手に過剰なサービスをしがちだが、全体的なバランスを考慮し、わけへだてなく接することが大切である。
研修会運営チェックリスト

(注1)・当日の配慮としてある程度リラックスできる進行を心掛ける
(注2)・病気、ケガに注意し、応急用の薬品も事務局で用意しておくこと
(注3)・アルコールは適量ならば夕食時に飲むこともリラックスにつながる
(注4)・夕食後も1~2時間、座談会形式のミーティングをすることもよい
(注5)・朝はランニング等の運動を加えるとよい

(2)会場レイアウトと飾付けモデル
イ.研修会場
外部講師による場合は、学校形式がよい。
ロ.パーティー会場
・立食形式を基本とするが、テーブルごとに人数のバランスをとるようにする。
・壁面の椅子は、各テーブルに配置してもよい。
・同一研修グループが、1つのテーブルに固まらないように工夫する。


(3)アトラクション等の進め方
研修会でのアトラクションは各地方から集まったメンバーが打ちとけるチャンスであり、研修の疲れを癒す時間でもある。参加する人の年代によって支持されるものは異なるが、参加型のものがよい。たとえば、クイズゲームや、室内でも楽しめる簡単なスポーツゲームなどが適している。
イ.紅白クイズ合戦
2組に分かれて、司会者がクイズを出し、回答をしてもらう。正誤問題で○×の表示パネルで答を出す方法なども考えられる。
ロ.輪投げ
4~5組に分かれて輪投げを楽しむ。ポールは組数だけを用意し、各組の持ちポールにかかった輪の数で勝負をする。チームの勝負として個人別優劣はつけない。
ハ.パター競技
パター練習マットを利用したゲーム。これもチーム対抗とする。

<< 後始末とフォローアップ >>

(1)研修内容の活用状況フォロー
研修の内容にもよるが、参加者が習得したことを活用しているか否かのチェックをする。調査の方法としては、社長、他の役員へのアンケートが考えられる。研修課題が、各販売店で実行されているとすれば効果ありと判定できる。

(2)研修参加者の定期的フォロー
主任、新入社員クラス等対象の研修会に参加した人々に、年1回以上のコンタクトをとり、機会があればレベルアップの研修会への参加を促し、系統的な研修体系を組むとよい。

(3)販売店等への理解と協力要請
研修会に参加させることは、その分、業務時間が削減されるものであるから、販売店の本心としては好意的に思わない場合もある。そのため、研修に参加することで社員の技能がアップするとともに、企業としてもプラスになることを理解してもらうことが大切である。理解が得られれば、積極的に参加してもらえ、より充実した研修会を実施することができる。それにはまず、研修目的、実施内容と期待効果そのものが明確になっていなければならない。
単に得意先の人を集めたお祭り的な行事ではなく、組織を活性化することを基本に考え、フォローも滞りなく実施することが、いずれは自社のためになるということを認識しなければならない。

<< 支出費用の経理処理と税務取扱い >>

研修会が終了したら、いくら使用したかを明確にしなければならない。実績と予算の対比等を含めて経理処理をする。

(1)支出額の確認
仮払金精算、現金支払額、後日払金額等、予算項目に分けて支出額を確定させる。

(2)予算対比
費用総額、予算項目別に対比し、超過項目の原因をチェックする。次回の予算設定のデータベースとなるので、支出額が妥当かどうか検討する。会場のレベル、食事のレベル、宿泊のレベルが適切かどうかなど、金額の高い項目順にチェックを入れておくこと。

(3)税務取扱い
研修会行事で交際費扱いとされる恐れのあるものはパーティー費用であるが、ビール1~2本を飲んだ懇親会程度のものなら会議費でも処理できよう。
もう1つは外部講師への謝礼であるが、これは源泉徴収を必要とする。

<< 販売店支援策としての研修会 >>

(1)人事管理教育の支援
現有戦力をレベルアップすることが、企業業績を上げる最良の手段である。しかし、中小企業では、社員教育の必要性はわかっていても、社内で実施することは容易なことではない。
そこで、販売店支援策としての研修会が必要となる。単に、自社の商品、技術力の押売り研修ではなく、効率的な仕事処理能力追求の研修会とすることが双方にとって有益となる。

(2)長期的視野での海外研修
現在では、社員の慰安旅行も一定条件を満たせば福利厚生費で処理できる。社員が海外に興味をもっているならば、研修場所を海外にしてもよいであろう。物見遊山でなく、業務に若干でも関係ある地に行き、そこで座学をし、スポーツをする研修企画が仕事の意欲にも結びつくのである。
また、企業としても人材募集の一手段にもなる。

(3)研修と研究レポートとの組合せ
研修内容と結びつくテーマ、仕事に関係したテーマのレポートを受け、それを活用、紹介するルールを組み立てる。自分が勉強したことを仕事に結びつけ、より改善、合理化した内容にしたものはグループとして評価すべき価値があり、財産として共有すればその効果は上がる。
レポートを受け、反映させるルールづくりは、自己啓発になると同時に、企業にとってもプラスになる。研修会の場のみでなく常に研修の心構えをさせるように仕向ける。

(4)よい意味で各地にライバルをつくる
研修会は同じレベルと職務の人々で行われれば、そこにはよきライバルが存在するはずである。ライバル意識を各人の成長に結びつければ、研修会は大きな刺激剤としての役割を果たしたことになる。

(5)同レベル企業の情報認知
「隣の芝生は青い」という言葉があるように、実情を知らずに、他社のよい情報のみを聞いていると、自社の批判や不満のみが積もる。情報が偏るとどうしてもそうなり、また発散方法もない場合、ストレスのみが蓄積され、仕事にも影響を及ぼす。
同じレベルの社員が語り合えば、お互いの実情を知り、案外同じような問題を抱えていることを認識するだろう。自社への不満から生じたマイナス思考を問題解決のためのプラス思考にかえる転機となれば、研修そのものの効果以上に収穫があったことになる。  

著者
橋口 寿人(経営評論家)