ビジネスわかったランド (会社行事)

販売促進

○○商品○台突破記念行事
<< 目標販売台数突破記念行事の目的 >>

(1)社内的な意味
イ.企業にとって販売業務は最も重要な役割を担っている。まして主力商品の販売は、その成果が自社の盛衰に直結する。主力商品の販売目標達成を記念行事とすることで、社員の士気を高める。
ロ.販売目標達成は、販売業務に携わる人々の努力によるところが大だが、その商品がユーザーの支持を受けたことの証明であり、開発・製造部門など販売に直接タッチしない社員に市場における商品評価を再認識させる。
ハ.目標達成は当初の目標のゴールであるとともに、次の目標のスタートでもある。次の目標へ向けてさらに販売量を増加させる意欲を喚起する。

(2)社外的な意味
イ.販売目標達成に寄与した代理店、販売店に対して感謝を形にすることで1つの区切りとし、次の目標への推進役として活躍を願う機会とする。
ロ.ユーザーの支持によって達成された目標であるから、そのユーザーのほとんどは商品について満足感をもっていると考えられる。この満足感を未利用者に伝えることで、さらなる販促のチャンスとする。

(3)行事内容を社外のどこまで広げるか
販売目標達成記念行事を行うことは、その商品について社内はもちろん、販売店、同業他社も注目しているはずである。また、ユーザーも満足し、その商品の推移について関心ありと考えてよい。そこで、その形態は商品の性質によって異なるが、記念行事は一堂に会して行うものと、媒体を通して行うものに区分して、基本的に次のように整理することができる。


<< 事前準備 >>

(1)準備委員会の設置
イ.委員会設置期間
この行事は、販売目標達成後、速やかに実施するほうが、当事者、参加者ともに、目標達成を実感として捉えることができベストである。そこで、目標達成日はあらかじめ予測しておかなければならない。それまでの販売状況を基本データとして、仮の達成日を設定する。
社外的行事は、場所の予約、その他準備を考えると1年前から準備するとよいが、実務的には、1~2名の特命委員に6か月以上前から予約手配する必要のあるものを担当させ、6か月前に委員会を設置するとよい。
ロ.委員会のメンバー数
委員会はあまり人数が多いと統制がとれなくなるから、7~10名ぐらいとし、すでに特命を受けているメンバーを最低でも2人は加える。
ハ.委員会のメンバー構成
この行事は営業が中心となる行事である。そこで、営業担当者を2~3名必ず加え、そのほかには、総務、宣伝、広報、製造部門などから加えて、各部門の役割を担当させるとよい。
ニ.委員会の社内的位置づけ
自社の行事であるから、当然業務である。しかし、各委員は日常業務も併せて遂行しなければならない。上司は、委員の日常業務は他のメンバーがフォローするように配慮し、場合によっては日常業務を軽減することも必要である。委員会の運営についても、最終段階まで進んだ討議項目が会社から否決され、再度検討するといったロスタイムを避けるよう、関係責任者にそのつど出席してもらうとよい。

(2)規模、内容、出席者の検討と決定
会社の歴史が古く、過去に事例があればそれを参考に決定する。事例がない場合は、このような行事に招待されたことのある社員、あるいは社外の懇意な代理店、取引業者、出入りのマスコミ関係者等から情報をもらって参考資料とする。
検討項目は、次のとおりである。
イ.出席者の数
メーンになる招待客数を基準とする。これに社内の役員クラスを加え、その他の社員の出席は全体のバランスを考えて決定する。外部を主とした場合は、内部からの出席者数を全体の10%程度にとどめる。
ロ.内容
この行事は、式典と宴会から成っている。一般ユーザー向けは、広告、記事等で達成を告知する。事前に達成日の懸賞を組み込んでもよい。

(3)スケジュールの設定
イ.日時の設定
この行事は、他の行事と異なって目標達成という実績結果によって行うものであるから、日程を決めるのにむずかしい面がある。かといってその到達時点で決めたのでは準備が整わない。達成日を推測し、その日から1か月以内の木曜日、もしくは金曜日に行事を行うのがよい。
時間については、式典は午前中、午後ならば14時30分までに終了したい。その後のパーティーと組み合わせると次のパターンが考えられる。
a.(式典)午前10時30分から約1時間 →(パーティー)正午から約2時間
b.(式典)午後1時30分から約1時間 →(パーティー)午後3時から約1時間半
bの場合、式典の後に、工場見学、外部講師の講演を組み込み、パーティーのスタートを2時間ぐらい遅らせると、パーティーの時間設定がちょうどよくなる。
いずれの場合も参加者に苦痛にならない時間配分を心掛け、スタート時間、終了時間は参加者の利用交通機関に配慮することが大切である。
ロ.スケジュールと業務
スケジュールモデルは、次のとおり。
スケジュールモデル


(4)予算設定のポイントと予算書
記念行事は印象に残るように実施したい。費用をかければかけるだけ満足のいくものができるが、企業としては使用してよい枠があり、また対外的にも適度の範囲があるから予算を組んで実行すべきである。
イ.予算の組み方
a.総枠から決める
会社として支出してよい額は、その期の利益状況から考えて妥当な額である。一般的には、行事を開催したために赤字決算になったり、前期に比して極端に利益が減少したりすることのないように予算設定すべきであるが、この行事は当該商品の販売成果を記念して実施するものである。したがって、その商品の売上額に見合った予算を組めばよい。
b.1人当りの費用とセレモニー費用の合算から決める
1人当りの費用はパーティー費、記念品代、交通費である。交通費は各人まちまちであるが、全国からの参加の場合、平均的な算出方法として、東京ならば広島往復、大阪なら仙台往復のJR運賃を当てる。遠距離からの参加者とのバランスが極端でなければ、妥当な予算となる。
セレモニーの費用は会場費、展示費用等が主なものになるが、表に出てこない経費が結構ある。たとえば資料配付用封筒、案内状発送、出欠確認等の通信費など、日常業務に使用しているものを流用する場合とか、打合せ、会場チェックの人件費、交通費等は業務内容によって一般費用から抜き出すのに手間のかかるものがある。本来ならばこれも予算として計上すべきものであるが、この扱いは会社によって異なるので自社のやり方に従うべきである。
総枠と積上げ予算との差を調整することによって予算が決まるが、調整方法としては、人数の調整を第1に、第2にセレモニー内容の調整ということになる。
ロ.予算書
予算書は、外部に出すものではないから、形式にとらわれずにそれぞれの関係者が自分の担当業務でいくらの金額が使用できるかが明確になっていることがポイント。
予算項目モデル


(5)関係者等への連絡と案内文
イ.関係者への連絡
行事は、参加すべき人が列席していないと失礼になったり、不審に思われる場合があるので、日程が決まったら、どうしても参加してほしい人にはすぐ連絡してスケジュールを調整してもらうべきである(主要招待客の日程をあらかじめ聞いて決める場合もあるが、その場合でも決定しだい連絡する)。
関係者は社内と社外に分けて考えると整理がつけやすい。
a.社内
社長、役員には、社内文書で日時の連絡と当日の役割をわかる範囲内で連絡する。行事に直接関係あるセクション(営業、技術、総務の3部門)の部長クラスには、社内文書で日時の連絡をする。その他は業務命令で指示する。
b.社外
有力代理店の社長、営業担当役員、当該商品の開発に貢献した外部ブレーン、あるいは退職技術者などセレモニーに参加してもらわないと運営上困る人々に、電話でまずスケジュールのみを連絡する。この場合、日時の確認のためFAX連絡のできる相手にはFAXも併せて発信する。電話は、受け手の格を配慮して、営業担当役員が主として担当し、リスト別に責任をもって電話し、結果の報告を受ける。
電話では、正式の案内状は当日の1か月前ぐらいに届ける旨を伝える。
ロ.案内状
案内状は横書きか、縦書きか迷うところである。会社の行事であるので格式を重んじて縦とすべき意見も社内から出ると思うが、販促行事と考えて横書きがよい。


<< 当日の運営 >>

(1)式次第と宴席の進行
イ.式次第
式は、所要時間1時間程度が適当。
次に、式次第のモデルを示す。
・開会の辞(司会進行は総務部長または営業部次長)
・社長挨拶
・祝辞(有力代理店、特定ユーザー参加の場合は各1、2名以内)
・祝電披露(5~7通紹介して、他は発信者名のみ紹介)
・感謝状贈呈(参加代理店、販売店に感謝状と記念品贈呈、人数が多い場合は代表)
・謝辞(営業部門担当役員)
・閉会の辞(営業部長または技術責任者)
ロ.宴席の進行
a.立食パーティーの場合
パーティーは食事の場であると同時に懇親の場でもあり、立食パーティーがこの目的にはふさわしい。食事ができないとか、料理がなかったなどの声の出ないように模擬店を設営したり、バンケット・ホステスや社員に接客させて、サービスに配慮する。
宴席の進行は、営業の中堅幹部が担当する。
次に、宴席の進行モデルを示す。
・開会の言葉
・社長挨拶
・来賓祝辞(取引金融機関あるいは加入協会等から1名)
・乾杯(乾杯の音頭は、代理店・販売店の長老者、代理店会長、最も北 (南)からの参列者等に依頼すると、人選でトラブルを起こさない)
・アトラクション(時間の関係で省略してもよいが、楽しさを加える趣旨で代わりにビンゴゲームなどで盛り上げる)
・閉会の言葉
・万歳(代理店、販売店の有志によって自発的に起こる形にするのがスマート……先に根回しをしておく)
b.立食でないパーティーの場合
席を定めて食事をする場合は、席順の決定がむずかしい問題となる。和食は椅子席でなく、座敷を利用したくなる。座敷を使用するとなると、シティホテルではむずかしい。洋食は、マナーに不慣れな人だと、リラックスできず、不評が出やすい。中華は、テーブルに順位をつけ、各テーブルの奥を主席とすれば、席順の問題は大体解決する。油を使った料理が多いので不得手な人もあるが、大皿から自分の皿に取り分ければよいので、席決めの食事としては無難である。

(2)会場レイアウトと飾付けモデル
会場レイアウトと飾付けの留意点は、次のとおり。
・会場側は、数多くのケースを経験しているので、まず会場側の基本パターンを教授してもらう。
・基本パターンのうえに、主催者側の要望を加える。
・壁面を利用する場合、釘、接着ハンガー等は使用させてもらえないので、パネル、展示物はどのように持ち込めばよいか打ち合わせる。
・搬入、搬出についての時間、専用エレベーター、台車の有無などを聞いておく。
・依頼する看板等の原稿を作成し、原稿はFAX等を使用して書面で届ける(電話、口頭のみでは誤字等の原因となる)。
・会場側の飾付け完了予定時刻を聞き、その時をねらってチェックする。
・開会1時間くらい前に補正部分を含めて最終チェックをする。
式典会場モデル

(注1)・テーブルは不要
(注2)・出入口が後方の場合でも、会場は縦長に使用
(注3)・会場内は禁煙とする
(注4)・演台の後ろは金屏風あるいは幕
(注5)・入口にはアンドン看板を置く
宴会場モデル

(注1)・宴席は、宴会場の基本パターンを利用すると協力が得られる
(注2)・クロークの位置を確認する
(注3)・社員はトイレの位置を頭に入れておく
(注4)・演台の後ろは金屏風
(注5)・入口にはアンドン看板を置く

<< 後始末とフォローアップ >>

(1)会場の整理と精算
自社で処理すべき荷物とその場で捨てるものの区分に留意し、会場を整理して引き揚げる。
精算は、後日支払いの場合であっても、確認サインを済ませる。

(2)当日の宿泊手配
宿泊を要する参加者がある場合は、事前に予約してあるホテル等に案内する。VIPの宿泊費を自社負担する場合は、ホテル等にその旨を伝えるとともに、相手には「支払いは当方でいたします」と軽く一言断わっておく。

(3)参加のお礼
形式的には、礼状が先方に1週間以内に届くようにする。しかし、それだけではあまりに味気ないので、電話でお礼と途中の無事の確認をとる。祝電、花、お祝いなどのお礼も忘れずに告げる。

(4)欠席者への処置
招待の案内をしたにもかかわらず先方の都合で欠席した場合は、できれば営業担当かそれ以上の役職者が訪問し、記念品等を届けるとともに無事終了した旨を報告する。終了後の2週間以内に行けない場合は品物を送り、電話で一報を入れ、改めて挨拶に出向く。

(5)反省会と関係書類の保管
精算額を計上し、会の運営、予算対比等を主なテーマとした委員会の反省会を開き、記録を保管する。できれば写真、VTR記録も残せるとよい。

<< 支出費用の経理処理と税務取扱い >>

会社で招待行事を行うと、パーティー・会食等の接待交際費の支出が伴う。交際費は経費であり、会社の損益計算上損金扱いになるが、税法上は、一定規模以下の企業で、それぞれ定められている支出交際費額の範囲以外は、損金扱いにならず課税対象になる。
行事で使用した費用は、仕訳すると交通費であったり、雑費であったり、会議費、通信費などに分けられるはずである。交際費を明確にすることで、実支払い経費を少なくすることが大切である。
これには予算等設定時に経理と打ち合わせ、交際費となるべき費用の請求を区分してもらうよう、業者に事前に依頼しておく。会場費等は混同されやすい項目なので注意が必要である。
支出の経理処理については社内ルールに従うべきであるが、まず仮払いの精算をする。精算方法は、委員のほうでは行事項目別に支出額をとらえ、後日のデータとする。一方、経理では自社の仕訳方式で区分すればよい。
決算日にまたがって行事が行われた場合には、当期経費と次期経費の区分をしておかなければならない。

<< 減点評価を避けるポイントのいろいろ >>

このような行事をする場合、100点満点はないとまず考える。より得点を多くしようと小細工するのでなく、ミスの減少を基本ポイントとする。
イ. 外部に対して
・ケガ、病気がないことを第1とする……万一、発生した場合の処置について不手際のないように注意すること。
・予測できない事情、たとえば台風、大雨等による交通機関の運休・欠航などが発生した場合の処理と連絡方法の案を設定しておく。
・VIPに対しては会社としても丁重な扱いをするが、合同運営の場合はこれをできるだけ避け、他の参集者に不快感を与えないようにする。合同のセレモニー、パーティー以外の時間は個別対応をもって接遇する。
・代理店、販売店が集まると取引条件の話が出やすいので、特別条件の取引先には前もって一般条件を認知してもらい、特別条件はタブーにしてもらうこと。
ロ. 社内に対して
・行事進行中は会社の行事であることを認識し、実行委員に協力してもらうよう事前連絡する。進行中は、上下の関係をある程度度外視しても、各責任者は仕事を命令指示する。
・表面的には××台達成の喜びであり、お祭りであるが、内面ではさらにこの数倍の販売個数を目論んでいることを忘れてはならない。したがって、次のセールスキャンペーンのスタートと考えて、これに関する話題づくりに努力する。
・準備がよければ応用も容易であるが、事前の準備を余裕をもって行い、途中の変更はできるだけ避ける。当日になっての変更は、とくに末端まで届かないのが常である。
・参加社員は、わからないことがある場合、各係の責任者あるいは上司に相談し、独断は避けること。
・営業担当者が自分の担当代理店や販売店を優遇するのは当然の行為であるが、勝手に土産を余計に渡したりはしないこと。客同士で話が出たり、本部で数不足が出たりしてトラブルの原因になる。
ハ. 総論
・印象に残るものにするよう努力する。行事全体が印象に残ることは期待せず、内容のいくつかに重点をおいてメリハリをつけたほうがよい。
・記念品や案内状に工夫を凝らす。当該商品を印刷した封筒、案内状、テレホンカード、オレンジカードなどは印象に残り、宣伝媒体ともなる。

著者
橋口 寿人(経営評論家)