ビジネスわかったランド (会社行事)

販売促進

工場公開見学会
<< 工場公開・見学会の目的 >>

(1)商品の製造工程を外部に知ってもらう
消費者や小売店、問屋等が、日常使っている商品がどのような工程で製造されているかを自分の目で確かめることによって、商品への関心がよりいっそう高まり、愛着心を向上させることがねらいである。
招待する対象者としては、次のような人が考えられる。
・消費者……自分の目で、よいものだと確かめることによって、商品に対する愛着が深まる。
・小売店……消費者にいちばん密着した立場にある。商品についての知識を深めるとともに、消費者への説明も十分にできるようになるため、販売力が強化される。
・問屋……消費者と同様、商品知識が増すので、小売店への説得力が強まる。
・その他……原料や設備、備品等の納入業者がある。自分が納入している原材料等が、どのような工程を経てどんな商品になっているのかがわかるようになる。それによって、新しい顧客の創造も期待できる。

(2)自社のPR
現場を足で歩いて得た知識というものは、強く印象に残るものである。できるだけ多くの人々に参加してもらうことによって、強烈に自社のPRを行うことができる。また、その知識が、参加者の口コミなどで、波及的に他の人々にも広がっていき、顧客層の拡大につながっていく。

(3)消費者のニーズを知る
消費者が、商品に対して抱いている感想(不平、不満を含む)を知り、さらによく売れるものへと改良・改善するための情報が得られる。また、新しい商品を開発するチャンスをつかむこともできる。
これらの情報を得るために、アンケート調査を必ず行うように準備しておくことが必要である。

(4)記念行事の一環などとする
創立記念日、創立○周年記念等の記念行事を行うとき、そのスケジュールの1つとして、工場公開を組み入れることも効果的である。創業時からの自社の成長過程を振り返るとともに、さらに次の新しい、より大きな目標へと向かって社員の意欲を高揚させることができる。

<< 事前準備 >>

(1)準備委員会の設置
イ.関係各部門から、適当な人を選んで工場公開・見学会のプロジェクト・チームを結成する。メンバーは、会社の規模や、取り扱う商品と催事の規模によっても違ってくるが、関係部門としては製造部、技術部、販売部、総務部および経理部等が考えられる。
ロ.催事を行うに当たっては、企画力があるかどうかが大きく影響する。また十分な準備をすることが重要である。プロジェクト・チームのリーダーとメンバーの選定に当たっては、この点について十分な配慮が望まれる。

(2)規模、内容の検討と決定
イ.招待客の決定
消費者、小売店および問屋等のなかから対象をどこに絞り込むかによって、スケジュールや準備の内容も違ってくる。
・消費者……消費者が相手であれば、商品のよさ、他社の類似品と比較して優れた点および生活に対してどのような満足度を与えているのかを重点的にPRする。
・小売業者等……小売業者等、商品を売る側の人に対しては、直接販促手段となるような内容にする。商品知識を豊富にして、消費者に対して十分納得のいく説明のできるような内容が望ましい。
ロ.見学コースモデルの設定
工場の工程は、おおむね次のような流れになる。この流れに従って、見学コースを設定することになる。
一般的な工場の工程

この工程すべてを公開する必要はない。実際、時間がかかり効率も悪くなるので、このなかから見学者に合わせて、見学場所を絞り込むことが必要である。
見学者にも対応できるコースは、原料払出し → 第1工程 → 第2工程 →製品 → 検品の工程と、技術部門の一部の見学であろう。これによって、商品の原料構成、主な製造方法、品質および安全性などを知ることができる。
ハ.機密保持についての注意
どのような工場にも、外部の人に知られてはならない秘密の部分がある。ここには立ち入られたくないという場所があれば、矢印で巡路を迂回させたり、ロープ等を張って入れないことを示したりする。また、要所要所に社員を配置したり「同業者の方はご遠慮ください」という看板を出したりするのも1つの方法である。

(3)スケジュール表の作成と業務分担
工場公開・見学会を実施するにはかなりの時間を必要とするので、相当の期間をおいて考えておくことが必要である。また、各業務を誰が担当するかは、仕事の内容によって各専門部門に割り当てることになる。
実施に当たって最も重要なことは、中心となるプロジェクト・チーム全員の意思統一である。1週間に1度、または10日に1度くらいの頻度で定期的に会合を開いて、調整と統合を図ることが欠かせない。
スケジュール表モデル


(4)予算設定のポイント
イ.工場公開・見学会を行うに当たっては、当然、相当の予算が必要となる。どれくらいまでの金額が許容されるのか、あらかじめ決定しておく。
ロ.経理または担当部署は、月次、年次の経費予算を作成しているのが通常である。そのなかで、このような催事について、予算として計上されている金額を確かめて、その範囲内に納まるように予算を設定する。
ハ.工場公開・見学会をどれくらいの頻度で行うのかということを計画しておくことも要求される。規模、招待客の対象等を考慮したうえで、年度計画に組み入れ、予算設定を行う。
ニ.当然のことであるが、経費となる支出であるので、予算枠をオーバーしないように慎重に決定しなければならない。PRの効果によって、売上、収益が増大するという効果はあるが、経営計画はそれを見込んだうえで立てられているということを忘れてはならない。
ホ.予算は、各費用項目ごとに算定する必要がある。また、予算と実績数値との間に差異が生じた場合には、その原因と理由とを明らかにして、今後の参考とするとともに、見積りの正確度の向上に努めなければならない。

(5)関係者への連絡とモデル案内文
イ.案内状送付
スケジュールが決定したら、招待客をリストアップし、内容と日時を知らせ、出欠の状況を確認する。社外の関係者に対しては、案内状を送付する(次ページ参照)。出欠の確認をするために、返信用ハガキ等を同封する。その際、返送期限も記入しておく。その期日までに返事がないときには、電話等で確認することも考えておいたほうがよい。
社内の関係者に対しても、同じ案内状を届けて、出欠状況を確認する。
ロ.出席者数の確認
出席者の人数は、案内状の返事等により、あらかじめ予定することができるが、多少の余裕をもって多めに決めておくことが望ましい。とくに人数が多い場合などにはこの配慮を欠かすことができない。
ハ.当日の手配
出席者数によって、当日どのような手配をすればよいのかを決定する。
・受入体制の準備……要所に配置する人員の数と担当者の選定
・会場設営……標識の準備、説明会場の決定
・説明用具……ビデオ、カタログ、パンフレット等の準備
・送迎バス等の手配……出席者数によって運行回数の調整をする


(6)記念品等の手配
出席者に対して記念品を渡すことは、大きいPRとなる。記念品をどういうものにするか、いろいろと意見の出るところであるが、プロジェクト・チームのメンバーの討議によって、次のようなポイントで決定していく。
・会社のイメージが、関係者に直接伝わるようなものであること
・もらった人が、いつもそばにおいて使えるようなものであること
・豪華なものでなくてよいが、あまり安っぽいものは避ける
・何の記念品であるか、はっきりとわかるように表示をする
(例)×××社 第○回 △△工場見学会記念品
これは、記念品本体に記入するのが最もよいが、物によっては、化粧箱等の包装材料に書くこともある。

<< 当日の運営 >>

(1)説明・応対の心得
当日の応対の手順は、以下のように行う。
イ.出迎え
最寄りの駅までバスで出迎える。なかには、車でくる人もいるので駐車場の手配もしておく。工場に到着したら、速やかに説明会場へ案内する。
ロ.ガイダンス
説明会場では、見学の手引きとなるようなガイダンスを行う。ポイントは以下のとおりである。
・工場全体および主要なところの写真を掲示する
・ビデオがあればより効果的
・工程全体のフローチャートを作成する
・工程のなかで、今日案内するのがどこであるかを明確に示し、掲示板を作成すると同時に、パンフレット等の資料を配付する
・自社製品の特長・特色を強調して、繰り返し説明する
・説明は簡潔に行う
ハ.現場への案内
・先導者が案内するが、要所に係員を配置し、必要に応じて説明する
・招待客の質問に対しては、ていねいに、かつわかりやすく説明する
ニ.控室への案内
・茶菓等を出して自由にくつろいでもらう
・食品や飲料工場等の場合、試食会、試飲会を行うと効果的なPRとなる
ホ.見送り
・バスの発車時間を前もって告知しておく
・記念品を手渡す。モレをなくすため、招待状と引換えにするとよい
ヘ.全体的な対応ポイント
・明るく、礼儀正しく応対する。「いらっしやいませ」「ありがとうございました」という言葉が、いつでも出てくるようにする
・身だしなみには十分に気をつける
・工場内を清潔にしておく

(2)接待の心得
見学者が少人数であれば、食事等の接待を行うこともある。また、終了後、立食パーティーを行うケースも考えられる。
このときの心得は次のとおりである。
イ.連絡 
・あらかじめ、食事会、立食パーティー等を行うことを通知しておく
ロ.食事の場合
・会場へスムーズに案内する
・席順を決める
・食品工場、飲料工場等では、自社の製品を出す
ハ.立食パーティーの場合
・会場へスムーズに案内する
・どこに何があるか、わかるようにしておく。ときどき、マイクで説明し、注意を引きつける
・コンパニオン等を配置して、飲み物等の不備がないようにする
・社員と招待客を判別できるように、リボンなどで区別する。社員については、所属、職位および氏名を必ず書いておく
・招待客を1人にしないように気を配る。1人でいる人を見かけたら、声をかけて相手をするとともに、適当な人を紹介したりする
・場を盛り上げるために、時間を見て主催者側の挨拶、招待客代表の挨拶、アトラクションなどを行う
・会場への出迎え、見送りの際は社員を配置し、ていねいに挨拶させる
・終了時間はマイク等で通知するが、余裕をもって行う。

<< 支出費用の経理処理と税務取扱い >>

(1)経理処理
経理処理としては、会社の経理基準や、会計原則に従って処理する。各項目ごとに勘定科目を決めて、伝票発行、支払いおよび記帳を行う。
主な例をあげると次のとおりである。
・事前の打合せに関する費用…………………………会議費
・案内状の作成費用……………………………………印刷文具費
・会場の設営に関する費用……………………………備品設備費
・外部専門家との相談・打合せ費用…………………諸手数料(会議費)
・送迎バスの手配………………………………………交通費
・記念品代………………………………………………雑費
・接待パーティー等の費用……………………………交際費または会議費
・茶菓代…………………………………………………会議費
・案内状・DM・ポスター等の作成・配付費用……広告宣伝費
・案内状の発送費用……………………………………通信費
・コンパニオン等の費用………………………………外部委託費

(2)税務上の取扱い
税務申告を行うに当たって、取扱いに気をつけるべき費用は、工場公開・見学会の場合、次の2つが考えられる。
イ.交際費
交際費は税務上、基本的には損金とは認められない。したがって、交際費として認定される部分は、区分して経理処理をしなければならない。この場合、問題となりそうな項目は、記念品代、食事代、パーティー費用およびコンパニオン費用等である。
ロ.設備費等
造作・会場などの設営に関してかかる費用で、当該期間の損失として一時に計上することができない費用である。税務上、資本的支出といわれるもので、これらは固定資産として計上し、一定の期間に分けて費用として計上される。この期間は耐用年数といわれ、通常、その設備などが使用に耐え得る期間を基準として、資産ごとに税法に規定されている。
税務上は、このような制約があるので、各項目についてよく検討し、税理士などの専門家とよく相談して決めていく。税法の基本的な考えはあまり変更されることはないが、基準となる金額は変わることがあるので、毎年の税法の内容には十分注意する。

(3)管理会計上の留意点
催事全体として、どんな費用が、いくらかかったかを、全体としてまとめて把握しておくことも必要である。全体としてのコストをつかむことの意義は以下のとおりである。
・今後、同じようなことを行うときの参考となる
・かかった費用に対して、どれだけの効果があったかを測定する
また、人件費の算出も忘れてはならない。各部門から相当の人員を出しているのである。当然、コストのなかに含めるべきである。

著者
橋口 寿人(経営評論家)