ビジネスわかったランド (会社行事)
販売促進
新製品発表会
<< 新製品発表会の目的 >>
(1)社内的な意味
イ.新しい製品を開発、発売することは企業発展の根幹であり、社員に対しても活気ある会社との意識づけがなされ、モラール(士気)向上につながる。
ロ.新製品がこれまでの事業分野と異なっていれば、新事業への進出につながると評価され、会社発展の可能性がある。
ハ.営業部門では新製品を商材に、新しいルートの開拓、これまでの取引先への商談の拡大など、転機になる。
ニ.技術部門ではその製品の開発努力と技術力が対外的に評価され、その自信が次の製品開発の意欲になる。
(2)社外的な意味
イ.同業他社に対して技術力、商品開発力を誇示することができ、業界内での地位があがる。
ロ.代理店、販売店に対して、新しい商材を提供することで販売チャンスの拡大が図られ、代理店、販売店の売上に貢献することができる。
ハ.一般社会に、技術水準、開発能力を評価してもらえるチャンスとなる。
ニ.定期採用、中途採用等の人材確保に関して、有効な訴求材料となり、人事面にもプラスになる。
(3)行事の実施形態
新製品の発表は会社独自のものであるから、その企業独自で行えばよいことではあるが、参加者レベルで考えると次のような形態が考えられる。どれを選ぶかは来場者の範囲と開催時期によって異なってくる。
新製品発表会の形態
<< 事前準備 >>
(1)準備委員会の設置
イ.委員会設置時期
新製品を発表できる時期は、社内ではおおよそ見当がついている。この行事の最大のポイントは、代理店、販売店に新製品を強力に紹介するとともに販売の見込みをつけることにある。発表会の折に代理店、販売店が有力見込客を同行して来場してくれるようにもっていくと、より効果的である。
発表会の実施に当たっては、会場の設定が大きなテーマとなる。参加しやすい場所、展示する商品によっては天井の高さ、搬入する方法などをチェック項目に加えなければならない。このような制約条件をクリアして場所を仮予約するためには、1年ぐらいの余裕がほしい。場所の仮予約ができていれば、委員会は6か月ぐらい前に結成すれば十分である。
ロ.委員会のメンバー構成とメンバー数
新製品発表会は単なるデモンストレーションの場合もあるが、そのほとんどは、それを機会に販売攻勢をかけるものであるから「売り」に結びつくような行事にしたい。そのためには、販売部門のメンバーが主力になるとよい。営業から4~5名、総務から1名、宣伝から1名、技術から2名ぐらいの8~9名で構成したい。
ここで注意することは、営業以外の部門からは、営業と対等に話のできるメンバーを選ぶことである。そうでないと営業部門の独断で進められ、他部門は雑事応援係になりかねない。
ハ.委員会のリーダー
営業中心の行事であるから営業のメンバーがリーダーになるとよい。だが、リーダーには営業からの委員のうちナンバー2の者がなり、サブリーダーは営業以外のメンバーがなると委員会の運営も円滑になり、片寄った内容決定にはならない。
ニ.委員会の社内的位置づけ
発表会を計画するほどの新製品は、会社として重点商品に育成しようという商品である。できれば1日でも早く稼ぎ頭の商品になってほしい製品であるので、発表会の準備委員会は、当日の実行の主力であるばかりでなく、以後の販売促進委員会に移行するぐらいの重要な位置づけで運営したい。
(2)規模・内容・案内先の検討と決定
規模は、独自で実施する場合、全国対象の1か所か、地域ブロック別かによって異なるが、来場見込者数の目算で決めるとよい。しかし、まったく新しい試みなら類似事例のない場合もあるので注意する。
一方、新聞社主催、あるいは関係協会が実施するフェア、ショーに出展参加し、これを機会に新製品を発表する場合、同業他社の小間数より20%ぐらい大きなスペースで参加するとよい。同業他社よりも小間数が少ないことは、表面的に企業格差に映ることもあるので留意したい。
内容は当該商品のPRであるから、それを主に展示し、説明することに傾注すべきであるが、技術的な説明誇示でなく、主力ターゲットや、販売支援方法なども具体的に説明できるものを考える。
発売記念キャンペーン(発表会もキャンペーンの一環だが)の企画立案もしてある場合、その概要を告知すれば、来場者が帰途、自分の販売目標、有力見込客などを頭のなかで組み立てられ、初期販売はスムーズに行くはずである。
案内先は販売機会をより広げる意味から、現取引先を優先するが、新製品発売を機に新しい取引先を開拓することもできるので、新規取引見込先にも案内をする。この場合はできれば先方に直接訪問するなり、事前に電話連絡をしたうえで、案内状が届くように配慮すること。
報道関係も新製品発表を記事、ニュースとして取り上げてもらえそうな向きに案内して、新製品の紹介チャンスを拡大するように努力する。
(3)スケジュールの設定
他が主催するフェア等への参加は、その日時に従って展示するのは当然であるが、独自に実施する場合、1日で終了するのか、2~3日かけるのかが問題となる。この決定は場所、来場者数、展示内容によって決めなければならない。
会社の施設で実施する場合は1日でもよいが、借用展示場所で実施する場合、最低2日はかけたい。搬入・搬出にかかる時間、費用を考えるとわずか1日では大変な労力であり、また少なくとも2日かけて客先との接触の機会を多くもちたいからである。時間は午前10時~午後5時が一般的であるが、搬入・搬出の都合もあり、初日は正午から、最終日は午後4時までという具合に設定してもよい。
商品、季節によっては午後8時まで実施することも考えたい。日常業務の一環として来場できる人はよいが、業務時間には参加できないが見学したいといった人の利便性を考慮した時間設定である。
時期については、独自で実施する場合でも、関係するイベントのスケジュールとオーバーラップさせるか否かは、来場者に別の意味で参加しやすい条件を与えるかどうかになる。
シーズン性のある商品(たとえば冷暖房機器、水着等のファッション製品)の発表時期は、業界のトップを切るか、他社が実施した後にするかということがむずかしい問題になるが、できればトップを切るぐらいの時期に実施したい。なぜならこれらの発表会は、いつ、どの企業が実施するかつかめないのが普通であり、つかんでからの準備では遅いからである。
また、こうした性格のものは、同一時期に重なることを予想しておく。ぶつかった場合には、自社の有力取引先には必ず来場してもらうよう努力する。そのためにも1日だけの開催では融通がつけられないわけである。
比較して他社製品の長短、自社製品の長短を認知してもらうのも、製品と販売政策に自信があれば、逆の面からプラスになる。
なお、スケジュールのモデルとしては、次のようなものが考えられる。
新製品発表会のスケジュールモデル
スケジュールの作成と合わせて、次のような項目をチェックし、準備にモレがないか点検しておく。
□会場の予約は済ませてあるか
□会場のレイアウト・飾付け方法は決まっているか
□使用機器類(マイク、VTRなど)は正しく作動しているか
□講卓回りの小物類は用意されているか
□照明、冷暖房は適切か
□配付資料の内容、数量は発注どおりか
□記念品の数、手渡し方法は決まっているか
□受付、誘導係の位置、人員は適切か
□クローク、手荷物預かりは大丈夫か
□場内禁煙の場合、喫煙場所、待合室は設けてあるか
□感謝状の準備はできているか
□アトラクション、ゲームの準備は完了しているか
□VIP(来賓)の接待は大丈夫か
□料理、飲み物のチェックは終わっているか
□写真、VTRの撮影方法と位置は決めているか
□名札、胸章の数の確認はしたか
□報道関係、外部ブレーンの応対方法と人員は適切か
□展示商品、パネル、配付物の積込みはされているか
□全体の雰囲気、バランスは想定していたとおりであるか
□受付などの表示物の掲示、位置はよいか
□会場内の清掃は行き届いているか
□商品、展示機材は正しく作動するか
□説明担当者のローテーションは決まっているか
□説明範囲の確認と質問に対する応答範囲の確認をしたか
□商談の進め方の確認はできているか
□取引条件の提示範囲の確認はされたか
□社員等のネームプレート、ワッペンの数量は足りているか
□女性社員のユニフォームは統一されているか
□ショーに参加する場合、資料配付の方法は決めてあるか
□新規顧客との商談手順は決まっているか
□当日、やむを得ず欠席者が出た場合の対処策は決まっているか
□終了時間と最終入場時間は取り決めてあるか
(4)予算設定のポイントと予算案
新製品発表会は、独自で実施する場合と○○フェア等に参加する場合で予算設定も当然異なってくる。目的からいえば新製品を十分納得してもらえるように進められればよいが、会社の行事として行うには他人からみてあまり粗末な内容でも困るし、フェア等へ参加する場合は同業他社とのバランスも配慮しておく必要がある。
イ.予算の組み方
予算は2つの面から組み上げて、その調整をし、いかに効果的に金をかけるかの検討を基本作業とする。
1つは積上げ予算で、発表会の行事にかかわる費用を項目別に予算計上して総予算を算出する。この方式では、各担当が予算の1~2割をアローワンスとして上乗せして多めに計上するケースが多く、どうしても予想以上の数字となる。もう1つは、会社から総枠でいくらぐらいで実行せよと命令的に出てくる予算である。総枠は行事費として考えられる数字と、新製品の売上予測の販促費として支出されるものの組合せでありたい。いずれにしても、「積上げ予算>指示予算」のケースが多く、これをどのぐらいに調整するかがポイントである。
調整する場合、予算を減少できる項目と減少できない費用項目がある。カットしにくい費用としては会場費、搬入・搬出費などがある。限られた時間に限られた条件で業者に依頼するものは、予算内で他を探すのが大変だからであり、またその探す費用を考えたら、他の項目で調整したほうが合理的である。
ロ.予算書(予算配分)
予算は、社内の人々が自分の担当部門の特別予算がどれぐらいか、また超過する場合どの程度までが許容範囲か、を把握するための資料でなければならない。
項目別に組む場合、細部の予算は担当部門に委ねる形でもよい。想定される項目別に設定のポイントを記すと、次のようになる。
・会場費……借用する会場の費用。○○ショーでは1小間当りで算出
・装飾費……会場の飾付けに関する費用。後日使用できるものにはそれなりに耐久性を、終了後に廃棄するものは表面のみ吟味
・搬入・搬出費……費用がかかっても展示する製品を安全に運んでくれる業者を選定すること。重量物はとくに注意する
・記念品代……コストコントロールの容易な費用である。数量、単価の組合せで考える
・配付資料費……カタログ、その他営業資料など後日も使うものは予算の扱いに注意する(通常の宣伝費、広告費との配分)
・飲食費……特定の重要取引先の接待は別予算として、この行事では茶菓、弁当程度とする
・諸雑費……細かい経費分として予算化する。総枠の5~8%程度
・予備費……調整分の予算として総枠の10%を設定
(5)関係者への連絡とモデル案内文
新製品発表会の関係者は、大別して、社内、既取引先、新規取引見込先、有力見込客、報道関係、外部ブレーンである。
発表会に式典を行うか否か、記念講演等、一定時間に一堂に参集してもらったうえで何か行事があるのかなどによって、いつ自社幹部、有力取引先幹部へ案内するかが異なる。後日、内容が決定した段階ですぐに連絡するにしても、とりあえず日時が決定したら、略式でよいから特定の相手には一報しておく。
式典や特別講演がない場合は、通常の案内状を送付し、面談、電話でフォローをする。出欠のチェックはいらないが、何日の何時頃に来場してもらえるのかを聞いておくと、担当者としては接待についてあらかじめ準備できる。準備というのは、自社幹部で挨拶してもらうべき人に連絡することを意味する。
開催時間内は随時入退場できるため、有力見込客が入っても目立たない。したがって、取引先を通じ、有力見込客に同行してもらうよう働きかける。取引先も自分の見込客に商品を紹介する有効なチャンスであり、会場で現物をチェックしておいてもらえば後日の商談も進めやすくなる。
報道関係には来場してもらうのがベターだが、資料を渡して記事にしてもらうことを主に考えて、案内方法を考える。外部ブレーンとしては、新製品開発に関与した人を中心に案内する。
案内状は横書きで仕上げる。日時、場所を明確にし、駐車設備の有無等を付記すると親切である。
<< 当日の運営 >>
(1)式次第と宴席の進行
イ.式次第(最長でも2時間30分程度とする)
・開会の辞(司会進行は営業部次長または総務部長)
・社長挨拶(営業担当役員がしてもよい)
・記念講演(実施の場合は講演は1時間半ぐらい)
・感謝状贈呈(開発にとくに寄与した外部ブレーンに対して)
・販売方針説明(営業部長)
・閉会の辞(司会者)
ロ.宴席の進行(立食パーティー方式とする)
・開会の言葉(営業マネジャークラスが進行係を務める)
・社長挨拶(営業担当役員代行も可)
・来賓祝辞(協会等の理事長クラスの方)
・乾杯(参加販売店の長老、日本最南(北)端所在の販売店など業績に関係なく指名する)
・アトラクションまたはゲーム
・閉会の言葉
(2)発表会場のレイアウト
発表会場のレイアウトは、下図および次ページの図を参照。
・展示コーナーは、新製品以外の商品または新製品関係のパネルや、オプション品
・新製品Aは陳列のみ、Bは作動しての説明用
・商談コーナーを必ず設置、2か所の場合は間に1.2mくらいの高さの仕切り
・場内に観葉植物などを置いて、全体のやわらかみを出す
新製品発表会レイアウトモデル(独自開催の場合)
新製品発表会レイアウトモデル(○○ショー参加の場合)
<< 後始末とフォローアップ >>
イ.会場の整理と精算
会場は借用した時点の状態に清掃、整理すべきである。自社に持ち帰るもの、その場で廃棄するものとに区別して、撤去する。
会場費、小間代等は別精算になるが、什器、鉢物等の借用代、その他食券等利用の軽飲食代は当日に精算すれば、後日の支払手続きを省くことができる。この場合、レシートを必ずもらうこと。
ロ.来場のお礼
礼状を届けるか電話等でお礼を述べる。○○ショー等の場合は、礼状とカタログ等資料を改めて送る(来場者が資料について未整理、あるいは捨てたなどで資料が手元にない場合がある)。
ハ.案内して来場しなかった販売店へのフォロー
来場しなかった販売店に対して、できるだけビジュアルな資料を添えたカタログ、取引条件などを届けて取扱いの依頼をする。
ニ.商談内容を主体としたフォローと書類保管
商談の結果に基づき営業担当がフォローをする。新規取引先や大口ユーザーに対しては、相応の担当者を指名してフォローに当たる。書類は次回の参考資料として保管し、委員長のコメントをつけておくとよい。
<< 支出費用の経理処理と税務取扱い >>
イ.支出費用の整理と予算チェック
支払済みのもの、未払いの分を整理して、予算と比較して項目別に実績を確認する。全体の予算が超過しているか否かをチェックし、超過の場合はその原因を明確にするとともに、通常の経費がまぎれ込んでいないかも調査して、委員会として使途を明らかにしておく。
ロ.税務取扱い
社外の人が寄ったときには、そこに交際費支出が伴うのが常である。飲食関係の費用は交際費なので、税務上は課税対象額となる。しかし、1人当り3,000円程度で、商談や会議の内容が伴っていれば、会議費の扱いで処理することができるから、営業部門の人々が気をつけるか否かで、相応の節約になる。
新製品発表会では、宴席を準備する場合はその予算で対処すればよい。常日頃接待チャンスがなければ、これを機会に飲食することも重要だが、そこで商談が進むとは限らないので、その場合は後日に改めてその機会をもつように努力する。
<< 新製品発表会をより効果的な販促策とするポイント >>
イ.発表会を中心に
発表会での予約を含めたオーダーに対する特典の提供をする。たとえばオプションツールのサービスや、試供品無料券などをつけてオーダーをとる。
発表会を機に、新製品の次のようなキャンペーンを実施する。
・ユーザー向けキャンペーン
・販売チャネル向けのキャンペーン
これらを組み合わせて、新製品の販売の立上がりをバックアップする。
ロ.発表会後のフォロー
代理店、販売店からリストをもらって見込みユーザーに対するDMを発送し、後のフォローを販売活動にのせる。
高額商品の場合、既顧客リストがあれば、商品の紹介DMと紹介依頼を進める。営業所単位、代理店レベルの発表会ができる体制の場合はその推進も計画する。
ハ.発表会での留意点
新製品の試用に際して技術的トラブルが発生した場合、2台のうち1台のみを試用する。万一、展示中のトラブルを見学者に目撃された場合、単なる操作ミス以外は、後日その当人にトラブルの原因を説明する。
説明によく外部の女性(コンパニオン)を使うが、これはショー的位置づけと割り切って、指示した以外のことはさせない。質問についての答えは社員がする体制をとっておくこと。
接待も主として営業担当が当たる。自分の主力担当販売店の来場について、あらかじめデータを集めておくこと。
このような会の場合、式典、宴会を併用すると招待的イメージを与えるので、交通費は開催企業で負担すべきであるが、展示発表会の場合は交通費をどうするかが問題となる。遠方からどうしても来てもらいたい業者には、人数限定で当方負担とすればよい。この負担旅費は研修費で処理することができる。
報道関係に対する接遇は、主として広告・広報部門の担当とし、的確な資料を渡して、パブリシティに取り上げてもらうように働きかける。
著者
橋口 寿人(経営評論家)
(1)社内的な意味
イ.新しい製品を開発、発売することは企業発展の根幹であり、社員に対しても活気ある会社との意識づけがなされ、モラール(士気)向上につながる。
ロ.新製品がこれまでの事業分野と異なっていれば、新事業への進出につながると評価され、会社発展の可能性がある。
ハ.営業部門では新製品を商材に、新しいルートの開拓、これまでの取引先への商談の拡大など、転機になる。
ニ.技術部門ではその製品の開発努力と技術力が対外的に評価され、その自信が次の製品開発の意欲になる。
(2)社外的な意味
イ.同業他社に対して技術力、商品開発力を誇示することができ、業界内での地位があがる。
ロ.代理店、販売店に対して、新しい商材を提供することで販売チャンスの拡大が図られ、代理店、販売店の売上に貢献することができる。
ハ.一般社会に、技術水準、開発能力を評価してもらえるチャンスとなる。
ニ.定期採用、中途採用等の人材確保に関して、有効な訴求材料となり、人事面にもプラスになる。
(3)行事の実施形態
新製品の発表は会社独自のものであるから、その企業独自で行えばよいことではあるが、参加者レベルで考えると次のような形態が考えられる。どれを選ぶかは来場者の範囲と開催時期によって異なってくる。
新製品発表会の形態
<< 事前準備 >>
(1)準備委員会の設置
イ.委員会設置時期
新製品を発表できる時期は、社内ではおおよそ見当がついている。この行事の最大のポイントは、代理店、販売店に新製品を強力に紹介するとともに販売の見込みをつけることにある。発表会の折に代理店、販売店が有力見込客を同行して来場してくれるようにもっていくと、より効果的である。
発表会の実施に当たっては、会場の設定が大きなテーマとなる。参加しやすい場所、展示する商品によっては天井の高さ、搬入する方法などをチェック項目に加えなければならない。このような制約条件をクリアして場所を仮予約するためには、1年ぐらいの余裕がほしい。場所の仮予約ができていれば、委員会は6か月ぐらい前に結成すれば十分である。
ロ.委員会のメンバー構成とメンバー数
新製品発表会は単なるデモンストレーションの場合もあるが、そのほとんどは、それを機会に販売攻勢をかけるものであるから「売り」に結びつくような行事にしたい。そのためには、販売部門のメンバーが主力になるとよい。営業から4~5名、総務から1名、宣伝から1名、技術から2名ぐらいの8~9名で構成したい。
ここで注意することは、営業以外の部門からは、営業と対等に話のできるメンバーを選ぶことである。そうでないと営業部門の独断で進められ、他部門は雑事応援係になりかねない。
ハ.委員会のリーダー
営業中心の行事であるから営業のメンバーがリーダーになるとよい。だが、リーダーには営業からの委員のうちナンバー2の者がなり、サブリーダーは営業以外のメンバーがなると委員会の運営も円滑になり、片寄った内容決定にはならない。
ニ.委員会の社内的位置づけ
発表会を計画するほどの新製品は、会社として重点商品に育成しようという商品である。できれば1日でも早く稼ぎ頭の商品になってほしい製品であるので、発表会の準備委員会は、当日の実行の主力であるばかりでなく、以後の販売促進委員会に移行するぐらいの重要な位置づけで運営したい。
(2)規模・内容・案内先の検討と決定
規模は、独自で実施する場合、全国対象の1か所か、地域ブロック別かによって異なるが、来場見込者数の目算で決めるとよい。しかし、まったく新しい試みなら類似事例のない場合もあるので注意する。
一方、新聞社主催、あるいは関係協会が実施するフェア、ショーに出展参加し、これを機会に新製品を発表する場合、同業他社の小間数より20%ぐらい大きなスペースで参加するとよい。同業他社よりも小間数が少ないことは、表面的に企業格差に映ることもあるので留意したい。
内容は当該商品のPRであるから、それを主に展示し、説明することに傾注すべきであるが、技術的な説明誇示でなく、主力ターゲットや、販売支援方法なども具体的に説明できるものを考える。
発売記念キャンペーン(発表会もキャンペーンの一環だが)の企画立案もしてある場合、その概要を告知すれば、来場者が帰途、自分の販売目標、有力見込客などを頭のなかで組み立てられ、初期販売はスムーズに行くはずである。
案内先は販売機会をより広げる意味から、現取引先を優先するが、新製品発売を機に新しい取引先を開拓することもできるので、新規取引見込先にも案内をする。この場合はできれば先方に直接訪問するなり、事前に電話連絡をしたうえで、案内状が届くように配慮すること。
報道関係も新製品発表を記事、ニュースとして取り上げてもらえそうな向きに案内して、新製品の紹介チャンスを拡大するように努力する。
(3)スケジュールの設定
他が主催するフェア等への参加は、その日時に従って展示するのは当然であるが、独自に実施する場合、1日で終了するのか、2~3日かけるのかが問題となる。この決定は場所、来場者数、展示内容によって決めなければならない。
会社の施設で実施する場合は1日でもよいが、借用展示場所で実施する場合、最低2日はかけたい。搬入・搬出にかかる時間、費用を考えるとわずか1日では大変な労力であり、また少なくとも2日かけて客先との接触の機会を多くもちたいからである。時間は午前10時~午後5時が一般的であるが、搬入・搬出の都合もあり、初日は正午から、最終日は午後4時までという具合に設定してもよい。
商品、季節によっては午後8時まで実施することも考えたい。日常業務の一環として来場できる人はよいが、業務時間には参加できないが見学したいといった人の利便性を考慮した時間設定である。
時期については、独自で実施する場合でも、関係するイベントのスケジュールとオーバーラップさせるか否かは、来場者に別の意味で参加しやすい条件を与えるかどうかになる。
シーズン性のある商品(たとえば冷暖房機器、水着等のファッション製品)の発表時期は、業界のトップを切るか、他社が実施した後にするかということがむずかしい問題になるが、できればトップを切るぐらいの時期に実施したい。なぜならこれらの発表会は、いつ、どの企業が実施するかつかめないのが普通であり、つかんでからの準備では遅いからである。
また、こうした性格のものは、同一時期に重なることを予想しておく。ぶつかった場合には、自社の有力取引先には必ず来場してもらうよう努力する。そのためにも1日だけの開催では融通がつけられないわけである。
比較して他社製品の長短、自社製品の長短を認知してもらうのも、製品と販売政策に自信があれば、逆の面からプラスになる。
なお、スケジュールのモデルとしては、次のようなものが考えられる。
新製品発表会のスケジュールモデル
スケジュールの作成と合わせて、次のような項目をチェックし、準備にモレがないか点検しておく。
□会場の予約は済ませてあるか
□会場のレイアウト・飾付け方法は決まっているか
□使用機器類(マイク、VTRなど)は正しく作動しているか
□講卓回りの小物類は用意されているか
□照明、冷暖房は適切か
□配付資料の内容、数量は発注どおりか
□記念品の数、手渡し方法は決まっているか
□受付、誘導係の位置、人員は適切か
□クローク、手荷物預かりは大丈夫か
□場内禁煙の場合、喫煙場所、待合室は設けてあるか
□感謝状の準備はできているか
□アトラクション、ゲームの準備は完了しているか
□VIP(来賓)の接待は大丈夫か
□料理、飲み物のチェックは終わっているか
□写真、VTRの撮影方法と位置は決めているか
□名札、胸章の数の確認はしたか
□報道関係、外部ブレーンの応対方法と人員は適切か
□展示商品、パネル、配付物の積込みはされているか
□全体の雰囲気、バランスは想定していたとおりであるか
□受付などの表示物の掲示、位置はよいか
□会場内の清掃は行き届いているか
□商品、展示機材は正しく作動するか
□説明担当者のローテーションは決まっているか
□説明範囲の確認と質問に対する応答範囲の確認をしたか
□商談の進め方の確認はできているか
□取引条件の提示範囲の確認はされたか
□社員等のネームプレート、ワッペンの数量は足りているか
□女性社員のユニフォームは統一されているか
□ショーに参加する場合、資料配付の方法は決めてあるか
□新規顧客との商談手順は決まっているか
□当日、やむを得ず欠席者が出た場合の対処策は決まっているか
□終了時間と最終入場時間は取り決めてあるか
(4)予算設定のポイントと予算案
新製品発表会は、独自で実施する場合と○○フェア等に参加する場合で予算設定も当然異なってくる。目的からいえば新製品を十分納得してもらえるように進められればよいが、会社の行事として行うには他人からみてあまり粗末な内容でも困るし、フェア等へ参加する場合は同業他社とのバランスも配慮しておく必要がある。
イ.予算の組み方
予算は2つの面から組み上げて、その調整をし、いかに効果的に金をかけるかの検討を基本作業とする。
1つは積上げ予算で、発表会の行事にかかわる費用を項目別に予算計上して総予算を算出する。この方式では、各担当が予算の1~2割をアローワンスとして上乗せして多めに計上するケースが多く、どうしても予想以上の数字となる。もう1つは、会社から総枠でいくらぐらいで実行せよと命令的に出てくる予算である。総枠は行事費として考えられる数字と、新製品の売上予測の販促費として支出されるものの組合せでありたい。いずれにしても、「積上げ予算>指示予算」のケースが多く、これをどのぐらいに調整するかがポイントである。
調整する場合、予算を減少できる項目と減少できない費用項目がある。カットしにくい費用としては会場費、搬入・搬出費などがある。限られた時間に限られた条件で業者に依頼するものは、予算内で他を探すのが大変だからであり、またその探す費用を考えたら、他の項目で調整したほうが合理的である。
ロ.予算書(予算配分)
予算は、社内の人々が自分の担当部門の特別予算がどれぐらいか、また超過する場合どの程度までが許容範囲か、を把握するための資料でなければならない。
項目別に組む場合、細部の予算は担当部門に委ねる形でもよい。想定される項目別に設定のポイントを記すと、次のようになる。
・会場費……借用する会場の費用。○○ショーでは1小間当りで算出
・装飾費……会場の飾付けに関する費用。後日使用できるものにはそれなりに耐久性を、終了後に廃棄するものは表面のみ吟味
・搬入・搬出費……費用がかかっても展示する製品を安全に運んでくれる業者を選定すること。重量物はとくに注意する
・記念品代……コストコントロールの容易な費用である。数量、単価の組合せで考える
・配付資料費……カタログ、その他営業資料など後日も使うものは予算の扱いに注意する(通常の宣伝費、広告費との配分)
・飲食費……特定の重要取引先の接待は別予算として、この行事では茶菓、弁当程度とする
・諸雑費……細かい経費分として予算化する。総枠の5~8%程度
・予備費……調整分の予算として総枠の10%を設定
(5)関係者への連絡とモデル案内文
新製品発表会の関係者は、大別して、社内、既取引先、新規取引見込先、有力見込客、報道関係、外部ブレーンである。
発表会に式典を行うか否か、記念講演等、一定時間に一堂に参集してもらったうえで何か行事があるのかなどによって、いつ自社幹部、有力取引先幹部へ案内するかが異なる。後日、内容が決定した段階ですぐに連絡するにしても、とりあえず日時が決定したら、略式でよいから特定の相手には一報しておく。
式典や特別講演がない場合は、通常の案内状を送付し、面談、電話でフォローをする。出欠のチェックはいらないが、何日の何時頃に来場してもらえるのかを聞いておくと、担当者としては接待についてあらかじめ準備できる。準備というのは、自社幹部で挨拶してもらうべき人に連絡することを意味する。
開催時間内は随時入退場できるため、有力見込客が入っても目立たない。したがって、取引先を通じ、有力見込客に同行してもらうよう働きかける。取引先も自分の見込客に商品を紹介する有効なチャンスであり、会場で現物をチェックしておいてもらえば後日の商談も進めやすくなる。
報道関係には来場してもらうのがベターだが、資料を渡して記事にしてもらうことを主に考えて、案内方法を考える。外部ブレーンとしては、新製品開発に関与した人を中心に案内する。
案内状は横書きで仕上げる。日時、場所を明確にし、駐車設備の有無等を付記すると親切である。
<< 当日の運営 >>
(1)式次第と宴席の進行
イ.式次第(最長でも2時間30分程度とする)
・開会の辞(司会進行は営業部次長または総務部長)
・社長挨拶(営業担当役員がしてもよい)
・記念講演(実施の場合は講演は1時間半ぐらい)
・感謝状贈呈(開発にとくに寄与した外部ブレーンに対して)
・販売方針説明(営業部長)
・閉会の辞(司会者)
ロ.宴席の進行(立食パーティー方式とする)
・開会の言葉(営業マネジャークラスが進行係を務める)
・社長挨拶(営業担当役員代行も可)
・来賓祝辞(協会等の理事長クラスの方)
・乾杯(参加販売店の長老、日本最南(北)端所在の販売店など業績に関係なく指名する)
・アトラクションまたはゲーム
・閉会の言葉
(2)発表会場のレイアウト
発表会場のレイアウトは、下図および次ページの図を参照。
・展示コーナーは、新製品以外の商品または新製品関係のパネルや、オプション品
・新製品Aは陳列のみ、Bは作動しての説明用
・商談コーナーを必ず設置、2か所の場合は間に1.2mくらいの高さの仕切り
・場内に観葉植物などを置いて、全体のやわらかみを出す
新製品発表会レイアウトモデル(独自開催の場合)
新製品発表会レイアウトモデル(○○ショー参加の場合)
<< 後始末とフォローアップ >>
イ.会場の整理と精算
会場は借用した時点の状態に清掃、整理すべきである。自社に持ち帰るもの、その場で廃棄するものとに区別して、撤去する。
会場費、小間代等は別精算になるが、什器、鉢物等の借用代、その他食券等利用の軽飲食代は当日に精算すれば、後日の支払手続きを省くことができる。この場合、レシートを必ずもらうこと。
ロ.来場のお礼
礼状を届けるか電話等でお礼を述べる。○○ショー等の場合は、礼状とカタログ等資料を改めて送る(来場者が資料について未整理、あるいは捨てたなどで資料が手元にない場合がある)。
ハ.案内して来場しなかった販売店へのフォロー
来場しなかった販売店に対して、できるだけビジュアルな資料を添えたカタログ、取引条件などを届けて取扱いの依頼をする。
ニ.商談内容を主体としたフォローと書類保管
商談の結果に基づき営業担当がフォローをする。新規取引先や大口ユーザーに対しては、相応の担当者を指名してフォローに当たる。書類は次回の参考資料として保管し、委員長のコメントをつけておくとよい。
<< 支出費用の経理処理と税務取扱い >>
イ.支出費用の整理と予算チェック
支払済みのもの、未払いの分を整理して、予算と比較して項目別に実績を確認する。全体の予算が超過しているか否かをチェックし、超過の場合はその原因を明確にするとともに、通常の経費がまぎれ込んでいないかも調査して、委員会として使途を明らかにしておく。
ロ.税務取扱い
社外の人が寄ったときには、そこに交際費支出が伴うのが常である。飲食関係の費用は交際費なので、税務上は課税対象額となる。しかし、1人当り3,000円程度で、商談や会議の内容が伴っていれば、会議費の扱いで処理することができるから、営業部門の人々が気をつけるか否かで、相応の節約になる。
新製品発表会では、宴席を準備する場合はその予算で対処すればよい。常日頃接待チャンスがなければ、これを機会に飲食することも重要だが、そこで商談が進むとは限らないので、その場合は後日に改めてその機会をもつように努力する。
<< 新製品発表会をより効果的な販促策とするポイント >>
イ.発表会を中心に
発表会での予約を含めたオーダーに対する特典の提供をする。たとえばオプションツールのサービスや、試供品無料券などをつけてオーダーをとる。
発表会を機に、新製品の次のようなキャンペーンを実施する。
・ユーザー向けキャンペーン
・販売チャネル向けのキャンペーン
これらを組み合わせて、新製品の販売の立上がりをバックアップする。
ロ.発表会後のフォロー
代理店、販売店からリストをもらって見込みユーザーに対するDMを発送し、後のフォローを販売活動にのせる。
高額商品の場合、既顧客リストがあれば、商品の紹介DMと紹介依頼を進める。営業所単位、代理店レベルの発表会ができる体制の場合はその推進も計画する。
ハ.発表会での留意点
新製品の試用に際して技術的トラブルが発生した場合、2台のうち1台のみを試用する。万一、展示中のトラブルを見学者に目撃された場合、単なる操作ミス以外は、後日その当人にトラブルの原因を説明する。
説明によく外部の女性(コンパニオン)を使うが、これはショー的位置づけと割り切って、指示した以外のことはさせない。質問についての答えは社員がする体制をとっておくこと。
接待も主として営業担当が当たる。自分の主力担当販売店の来場について、あらかじめデータを集めておくこと。
このような会の場合、式典、宴会を併用すると招待的イメージを与えるので、交通費は開催企業で負担すべきであるが、展示発表会の場合は交通費をどうするかが問題となる。遠方からどうしても来てもらいたい業者には、人数限定で当方負担とすればよい。この負担旅費は研修費で処理することができる。
報道関係に対する接遇は、主として広告・広報部門の担当とし、的確な資料を渡して、パブリシティに取り上げてもらうように働きかける。
著者
橋口 寿人(経営評論家)
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