ビジネスわかったランド (会社行事)

弔事

社葬
<< 社葬の目的 >>

自社の創業および発展に対して、とくに大きな貢献のあった現・前・元の役員や現職の社員が死去した場合に、会社を挙げて葬儀を執り行うことを社葬という。故人の徳を偲び、生前の故人の業績に感謝し、それらの徳や遺志、業績、経験を役員や社員が引き継ぐ儀式であるとともに、対外的にも印象づける儀式である。
したがって、その葬儀の良否が会社の印象や評価につながる恐れがあるので、こまやかで十分な配慮が要求される。

<< 事前準備 >>

(1)社葬にするかどうかの決定基準
慣例や内規に照らして社葬にすることが問題なく決められる場合はよいが、慣例や内規がない場合や初めての事例のときなどは、決定について慎重にする必要がある。また、同じ社葬でも故人の地位により、葬儀費用の負担が違ってくる。一応の基準として下に「社葬のタイプと取扱い基準モデル」を示した。
しかし、これはあくまで基準であるので、会社の規模や経済力によって、社葬にするかどうか、どのタイプにするかは異なってくる。

(2)喪家との打合せ
取締役会等で社葬とすることが決定したら、まず、喪家に会社の意思を伝達し、社葬を行うことの了承を得なければならない。
会社としては、まずはじめに、総務部長クラスの人が喪家に花束を持って訪れ、お悔みを述べる。このときは、部下を2~3人連れて行くとよい。その後に、葬儀委員長が、社葬を行うことを伝えに喪家を訪れる。
社葬を行うのは、会社の故人に対する感謝の気持ちの現れであることを伝える。もし、遺族側から社葬を辞退するとの返事があったときは、遺族側の気持ちを大切にすること。
遺族の了承を得て、社葬を行うことが決定したら、宗派、菩提寺、密葬・本葬の行い方、葬儀の日程、式場、スケジュール、喪家と会社の連絡方法を打ち合わせる。会社側からも連絡等のために、担当者氏名、所属部(課)、電話番号等を正確に伝えておくこと。


(3)葬儀委員長等の選定・依頼、弔辞の依頼
イ.葬儀委員長等の選定・依頼
社葬を行うことが決定されると、葬儀の最高責任者としての葬儀委員長、それを補佐し、実質的な実行の中心となる副委員長、そのほか葬儀委員などを選んで、委嘱する。 
葬儀委員長には、社長以外の要人の葬儀の場合には社長が選ばれ、社長の葬儀には会長、副社長、専務が選ばれることが多い。しかし、会社の事情によっては故人と縁故の深い友人や他社の社長、地元選出の政治家など外部の人に委嘱する場合もあるので、委員長の選定には役員や大株主、委員長候補の人などの意向を確かめたうえで進行する必要がある。また、人選においては、今後の人間関係や業務への影響を十分配慮すること。
葬儀委員は、役員や部長クラスの人がなることが多い。
ロ.弔辞の依頼
弔辞の奉呈を依頼するときは、礼を失しないように注意し、各種団体、関係会社等の中からバランスを考慮してお願いすること。依頼の際は、会社の代表格の者が通知状を持参してお願いに行く。
通常1時間の葬儀式に入る弔辞数は3~5本。弔辞の長さは3~4分くらい(字数で 1,000~1,500字ぐらい)で収まるように頼むこと。

(4)葬儀実行委員会と業務分担
社葬の公的な執行責任は葬儀委員長や葬儀委員にあるが、実際に葬儀の立案、実行の準備から事後処理までの実質的な処理は葬儀実行委員会が行う。まず実行委員長を決め、実行委員長が各担当者の人選をする。
葬儀の運営の一切を取り仕切る総司令官ともいうべき実行委員長には、総務部長か次長、秘書室長クラスの人がよいだろう。実行委員会のメンバーもやはり総務・庶務関係の人が中心になる。
イ.葬儀本部(2~3名)
葬儀の一切を取り仕切って、事務打合せ、各部への連絡・統率、対外的な付合い上の折衝・交渉(弔辞の依頼など)等、仕事内容も社葬全体にわたり、決断力と実行力が要求される。葬儀委員長は総監督として、この部門を担当する。
また、式場における位置は電話のある部屋とし、会社の留守番との連絡も行う。
ロ.進行係(2~3名)
社葬儀式の進行、演出を担当する。葬儀本部の決定に基づいて、密葬から社葬終了までの企画表作成、日程の設定や式場の選定、司会者との交渉、葬儀に要する時間割表の作成を行う。葬儀委員長、喪主、遺族、会社の意向を確認し、その趣旨を生かした企画を立てることが大切である。また、式場における着席順・焼香順、弔辞・弔電、供花配列の順序を決め、本部を通じて各部門担当に依頼する。その他、車両の手配や受付、携帯品、会葬礼状の渡し場所等の選定などの計画・管理も担当する。
司会者もこの部門に属する。司会者はたいへん重要なポストなので、人選には注意し、事前にシナリオ等を作成しておくとよい。
ハ.会計係(2~3名)
香典整理、現金管理、諸経費出納などを扱う。一般的に会社の経理担当が当たっている例が多いが、取引銀行へ依頼すれば行員を手伝いに出してくれる場合もある。この係は社葬終了後の諸支払いにも責任があるので、遺族の手伝いも併せて行うようにする。
ニ.調達係(2~3名)
通夜用飲食物の発注、弔問客・会葬者に対する引出物、遺族・親族をはじめとする関係者の食事、各種胸章・腕章など各部からの調達要請を受け、発注する。
時間に間に合うように納品させるとか、需要に応じた供給が受けられるように配慮し、とくに食物類は内容を吟味して、鮮度が落ちないように気をつけること。料理・弁当などは人数等を確認し、発注・配分するようにするが、式場の社員や警察官、ガードマン等の分も含めて、多少多めに発注するとよい。
会計係とよく連絡をとって、伝票による処理をすることが大切である。
ホ.僧侶(神主、神父)係(1~2名)
僧侶の送迎時刻、車両の配車時刻、出席する僧侶の人数、料理の数量等を確認し、式場到着から出発まで一切の行動の誘導を行ったり、控室での接待を務める。
寺院を選定する場合もあり、遺族と密接な連絡をとることが大切。役割柄、担当は年配の管理職が向いている。
ヘ.文書係(2~3名)
通知状・礼状・新聞広告等の文案作成・発注、日程表、看板類、式次第、パンフレット、プログラム、供花や弔電に対する礼状等の作成・管理・配付など、文書に関係した一切を受けもつ。文章作成のときは、とくに氏名や会社名、肩書き等の誤字、脱字に注意すること。
また、会葬者に礼状を手渡したり、弔電整理も行う。
ト.記録係(2~5名)
弔辞・弔電の記録、式の録音、スナップ写真、ビデオの撮影などを行い、社葬の一切の記録を作成する係。また、故人の経歴や各種文書等の保管も行い、故人の残した功績がいかなるものであったかを記録する。
チ.式場係(3~5名)
式場の着席位置の割出し、控室への案内、式場内への案内等、式場に関する一切の運営管理を行う。案内する式場係には、営業担当の人のように列席者の顔がある程度わかる人が適している。
リ.営繕係(2~3名)
通夜の照明、祭壇室の張出し、天幕を張る場合の交番・派出所等への届出、供花の飾付け場所の設定、花輪の管理、飾付け位置の指示、受付の机や椅子の用意等を行う。実際の飾付け等は担当の葬儀社が行うが、各係からの注文や指示連絡はこの係が担当する。
ヌ.連絡係(3~4名)
葬儀本部と式場内部、各係間の連絡を行う。葬儀本部に2~3名、司会者脇に1名くらいを配置する。この係は、葬儀が済むとほとんど仕事がなくなるので、葬儀終了後は、適宜多忙な係を応援する形をとるとよい。
ル.受付係(10~15名)
通夜・社葬当日の受付、会葬者芳名録の整理、香典の受付・整理、香典帳の作成等を担当する。会葬者が多い場合は、業界関係、取引先関係、親族または友人関係、その他一般など、各部に分けて受け付けると、あとの整理に便利である。各部ごとに顔の広い人を、1名ずつ配置するとよい。また、香典を一切受けない場合、名刺のみを預かるケースがあるが、その際は、盆、筆記具、名刺ケース等を用意する。
ヲ.携帯品係(5~15名)
携帯品や履物、コート、雨具類の預かり、整理などを担当。式の終了時には、一時に多数の人が帰るので、預かったものを番号順に整理しておくと渡しやすくなる。
ワ.供花係(2~3名)
供物、供花を受け取る際の受付・整理、名札の順列・位置の確認や、供花類の一括受注・支払い事務などを行う。通夜の場合は昼過ぎから、社葬の場合は他の実行委員よりも多少早めに式場に行き、名札や順列の確認や配置替えをする。
供物、供花を受けない場合は、辞退の意を示す役目を担当する。
カ.接待係(10~20名)
親族、参列者、会葬者、弔問客、僧侶その他の人に対する接待を受けもつ。ほとんどの場合、茶菓子の接待と弁当等の配付程度が主な仕事となるが、自宅の場合は遺族とよく相談して、手伝う程度にする。
事前に、湯飲みや茶托、盆等の数量を確認し、社葬当日にあわてないようにする。担当には、女子社員を当てるのがよい。
ヨ.配車係(10~20名)
車の手配、駐車場の管理など屋外の仕事が主となり、かなりハードな労務が要求される。また、所轄警察署に警官の応援依頼をしたり、駐車場の車両位置の設定も行う。必要なものとしては、車両誘導灯、小型無線機、車両呼出し用放送機材、白手袋、雨天用雨傘・カッパなど。
最近では、車両の誘導整理に、ガードマンや専門の駐車場整理員を手配するケースも多い。
タ.予備係(適宜)
先に述べた係が忙しいときに、随時手伝いをする係。各係がどんな仕事をするのかよく知っておく必要があるので、本部に所属したほうがよい。若手社員が余ったときは、ここに待機させておく。

(5)通夜の扱い
社葬を行う場合、密葬と一緒に執り行う場合と別々に執り行う場合の2つがあるが、最近では、密葬と社葬を分けて執り行う場合、社葬の通夜はほとんど行われなくなっている。
イ.密葬の通夜
密葬の通夜は、たいていの場合故人の自宅で行われるが、近所の人や友人などの弔問客でかなり忙しい。会社としては、施主側と十分相談し、手の足りない面を応援することになる。接待などの手伝いとして、テキパキとした女子社員を2~3名手伝いに出し、また最寄りの駅からの道案内札、テーブル、座布団などを動かしたりする男手として、若手の男子社員を行かせると喜ばれる。
また会社からの弔問は、とくに主だった人、数名にとどめたほうがよい。
ロ.社葬の通夜
社葬における通夜の場合、密葬通夜と違い、弔問客も故人の個人的な友人関係よりも、社会人としての付合い、対会社間の付合いの人たちが多くなるので、受付の準備にも十分な対応が必要になる。

(6)葬儀社の選定
社葬ともなると相当の規模が予想されるので、葬儀社の選定には十分な配慮と見極めが必要となる。葬儀社は、霊棺の準備、祭壇等の設営だけではなく、最近では車の手配から礼状印刷などもやってくれるが、それ以外の細かいサービスは業者によってかなり違う。葬儀の式次第の作成から司会・運営、僧侶・神主・神父などの紹介や葬儀場の交渉、警察への連絡などまで相談にのってくれたり、指示してくれるところもあるし、引き受けたことしかやってくれないところもある。
社葬の経験や関連サービス処理能力のある業者を選ぶことが大切だが、日ごろからつながりのある業者のある場合はともかく、まったく業者とのつながりのない場合は、病院出入りの業者や寺院の紹介による業者、または葬儀組合に入っている業者に依頼するほうが無難である。葬儀業者の組合に問い合わせて「社葬を行いたいのだが…」と頼めば、まず間違いのないところを紹介してくれる。また、以前に社葬を行ったところに聞いてみるのも一法である。

(7)社葬の形式・式場の選定
イ.社葬の形式
故人が生前信仰した宗旨によって決定されるが、故人が宗旨をもたなかったり、不明であった場合には喪家の宗旨によるのが一般的である。しかし、故人の遺言や喪家、主催する企業・団体等の意向により、宗旨による葬儀を行わず無宗教で執り行う場合もある。
葬儀の形式は、仏式、神式、キリスト教式(カトリック・プロテスタント)、無宗教式の4つに分けられ、どの形式にするかによって式場となる葬儀場の選定の方針が決まってくる。
ロ.式場の選定
式場を選定する場合は、次のことに注意したい。
・会社、喪家、葬儀委員長のスケジュール
・宗派
・葬儀の参加予定者数(参列者、会葬者)
・式場の立地や各施設、駐車場の収容力
社葬ともなれば、多数の参列者が予想されるので、式場の広さや駐車場設備、交通の便利な場所にあることなど種々の条件にあった式場を選定することが大切である。
また、宗旨により利用できない式場もあるので注意したい。

(8)日程の決定
通常、社葬は、遺族や近親者による密葬の後に、改めて日取りや段取りを決め、関係者に通知のうえで執行する。一般的には、密葬から1か月以内に行うが、故人の交友関係が広いうえに、社会的な地位も高く、会社としての関係先も広範囲な場合は1か月以上日をおくこともある。
日程は、遺族や会葬者にあまり迷惑のかからないように配慮し、とくに日曜・祭日の社葬は控え、また、年未年始に重なる場合は、松の内が過ぎてからにする。時間は、ほとんどの場合午後に行われるが、これらの日時の決定には式場とともに葬儀社の意見も十分に聞いて参考にするとよい。
日程が決まったら、葬儀日程表を作成し、貼り出しておくと親戚や弔問の人に親切であるし、社内に掲示したり、電話のそばにおいておくと非常に便利である。

●ワンポイントアドバイス
葬儀の日取りと六曜
吉凶日の選び方として、「六曜」(六輝)が俗信ながら広く通用している。葬儀は、死去の2日後か3日後に営まれることになるが、「六曜」で「友引(ともびき)」に当たる日は、「死者が友を引く」ということから全国の火葬場が休業になるほどなので、葬儀の予定が友引に当たるのであれば、1日延期しなければならない。また、「赤口(しゃっく)」の日を避けるという俗信もあるが、赤口の日に火葬場が休業することはない。

(9)関係者への連絡・新聞広告等
イ.社内への通知
社葬の日程が決まったら、まず、社内掲示板や通達文書にして社内の各部署に配付し、社外からの問合せに対応できるようにする。
ロ.社外への通知
社外への連絡には、とくに親しい人への電話による連絡と、一般の人への通知状、新聞広告による連絡がある。
新聞広告は黒枠広告とも呼ばれ、広告代理店に依頼するのが最もよい。広告を出す場合は、どのくらいのスペースで、どのくらいの費用になるか、また社葬終了後「会葬御礼広告」を掲載するかどうかも併せて検討し、依頼する必要がある。
通知状は、個人葬の場合と同じく、黒枠の印刷物を封筒に入れて発送するのが一般的である。


(10)予算設定
社葬の範囲をどのくらいにするか、また本葬と密葬における経費負担をどのようにするかなどによって、社葬の費用はかなり違ってくるが、「香典返し」以外は、ほとんど会社負担ということになり、だいたい次のようなものが必要となる。
・通夜にかかる費用
・本葬儀にかかる費用
・お布施(戒名、読経に対する謝礼)
・葬儀場代
・火葬、収骨容器等の費用
・案内状、礼状の印刷費、郵送費等
・新聞広告費
・車両代
・接待費
・諸雑費
社葬での葬儀費用は、会社として執行するものであり、ビジネスライクに、きちんと見積りをとって取り決めたい。

<< 当日の運営 >>

(1)式次第
イ.仏式の葬儀・告別式
開式の言葉とともに、導師・僧侶の入場。奏楽、導師・僧侶による読経、焼香、合掌礼拝に続いて弔辞朗読や弔電披露が行われ、葬儀委員長、喪主、遺族、近親者、友人・会社関係者が焼香し、合掌礼拝する。
ここで僧侶がいったん退場し、小憩ののち再入場、一般会葬者のための告別式へ移る。関係の深い順に司会者が芳名を読み上げ、焼香を要請し、一巡すると葬儀委員長が謝辞を述ベ、告別式を終わる。
ロ.神式の葬場の儀・告別の儀
会葬者全員は、手水を使い着席する。神官が入場すると、修祓の儀、献饌の儀ののち、神官の祭文奏上、葬儀委員長の弔辞朗読、会葬者代表の弔辞朗読となる。
次に、神官、葬儀委員長、喪主、遺族、近親者、友人・会社代表、再び神官の順に玉串奉奠と忍び手で拝礼し、供物を下げる撤饌の儀、神霊を送る昇神の儀、神官礼拝・退場。小憩後、神官が再入場して一般会葬者の告別式へと移る。
ハ.キリスト教式の葬儀
いずれの教派も、臨終の式、納棺式、前夜祈とう式、出棺式、教会への入堂式、葬儀式、火葬式、埋葬式という一連の順序であり、すべてに全員参加が原則。
一般に、信者でない会葬者のために、式次第を当日配付することが多い。
宗教別葬儀式次第モデル



(2)式の運営
司会者は、参列者等をリードして、社葬を式次第どおりに行われるようにしなければならない。きちんとした進行要領を作成し、それに従って進めることが必要である。

(3)会場レイアウト
イ.式場をどこにするか
葬儀の式場の選定においては、専門の葬儀場を利用する場合、社屋の広いスペースに設ける場合、の2通りが考えられる。専門の葬儀場は、葬儀のための設備も整い、設営・片付けなどの手間が省け、レイアウト上のミスが起きにくいという利点がある。
ロ.席の配置
以下の点に注意する。
・遺族、近親者の席は、祭壇に向かって右側。葬儀委員長、来賓、友人代表、その他の参列者は、祭壇に向かって左側。式場係・社員の席は、祭壇から一番離れた席にする。
・告別式のときは、会葬者が祭壇に向かって中央を進む。焼香を済ませたら、左右分かれて元の席に戻る。ただし葬儀委員長は、焼香後も喪主と並んで立ったままでなければならない。
・式場とは別に、休憩場所も用意しておく。
・会葬者の流れがスムーズになるように、進入路と退出路を明示しておく。
・外部からの供花を一切辞退する場合は、供花に名札をつけない。
・一般席は、前方が空席になりやすいので、前席から順に詰めてもらうように、式場係は指示するようにする。
葬儀場のレイアウトモデル
告別式のレイアウトモデル


<< 後始末とフォローアップ >>

(1)香典の整理
香典を拝受した場合、会社の担当係員(受付係)は、香典帳を作成し、金額を確認して遺族に手渡す。
遺族はこの香典帳を元に香典返しを行うので、香典帳には、金額別に、氏名、住所、電話番号、郵便番号を記入し、不明の点は、人事課や営業担当者に調べてもらい、できる限り完全な形で渡せるようにする。

(2)香典返し
香典返しは通常、会社側では行わずに遺族側が行うが、返す件数が多い場合は、便宜上会社が代行したり、遺族の手伝いをしたりする。
時期は、仏式の場合は忌明け(七七日忌)の49日(五七日忌の35日でもよい)、神式なら30日祭、50日祭、キリスト教式の場合は忌明けがないので1~2週間後をメドに、挨拶回りを兼ねて配るか、発送する。
金額は受け取った香典の2分の1から3分の1が一般的である。ただ最近は、香典を地域団体や福祉施設に寄付し、その領収書を同封した挨拶状を送り、香典返しをしないといった傾向もみられる。

(3)供花・供物および弔電に対する礼状
供花・供物・弔電等を拝受した場合は、供花帳等に控え、香典と同様に遺族に渡す。礼状の発送も、相手先の住所等は会社側が把握している場合が多いので、作成や発送の手伝いをするとよい。
礼状の日付は社葬当日で、発送人名は会社を先に、喪家あるいは喪主名は後にする。



(4)その他のお礼
社葬に何らかの形で世話になった関係先には、社葬の翌日から3日間くらいで挨拶に回るようにする。葬儀委員長を自社以外の人に頼んだ場合は、社葬当日か翌日に挨拶に出向く。その際は、金銭または遺品などの贈り物を持参するほうがよい。

(5)記録について
葬儀委員長や各担当係の長は、社葬終了後、記録係がまとめた社葬における各種資料や実施記録等をもとに、反省会を行い、様々な点を検討する。それらを控えておくと、次に社葬を行う場合、貴重な参考資料となる。

<< 支出費用の経理処理と税務取扱い >>

(1)社葬経費について
社葬費用についてはとくに法律で定められているものはないが、会社の経費で行うとすれば税務上、何らかの制約がある。会社の経費として計上するためには、社葬にする旨を決定した取締役会の議事録を作成することが先決である。これがないと、経費としての領収証がいくらきちんと揃っていても経費として認められない。この議事録の作成も事後になることがあるが、本来は事前、死亡から葬儀の間の期間のものでなければならない。

(2)税務取扱い
社葬費用として支出されたものに関しては、a.その社葬を行うことが社会通念上相当と認められること、b.通常社葬に要すると認められる範囲の金額であること、c.社葬費として現実に支出していること、以上の条件を満たしている場合には、税務上損金として認められることになっている。
イ.損金算入できるもの
税務上損金とすることができる社葬費用は、次のようなものである。
・葬儀および埋葬、火葬、納骨、遺骨の回収などに要した費用
・食事代や、交通整理に雇ったアルバイトに払う日当などのような、社葬を行うに際して施与した金品
・新聞の死亡広告や死亡通知状、会葬礼状などのような、死亡およびその葬儀に伴って通常必要と認められるもの
ただし、あくまでも会社の経営規模や死亡した人の社会的地位・功績などからみて、妥当と認められる範囲のみ損金となるので、その点に留意する必要がある。
ロ.損金算入できないもの
香典返しのための費用、墓地・墓碑の購入費用、あるいは墓地借用料、法事や初七日に要した費用等、明らかに個人の負担と考えられるものは、法人の費用として損金とすることはできない。
過大とみなされた葬儀費用や葬儀に含まれない費用を会社が払った場合には、死亡した本人への退職金または賞与として取り扱われることもあるので、十分な配慮が必要である。

(3)香典類の処理
香典類は、会社宛、個人宛を問わずに遺族に渡す。とくに香典は、いったん会社に入金(雑収入)などの処理をしてから遺族に渡すと、贈与とみなされるので注意すること。


著者
橋口 寿人(経営評論家)