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弔事

物故社員の追悼式、合同慰霊祭
<< 物故社員の追悼式、合同慰霊祭の目的 >>

会社の業績とは、各社員の業績の積重ねである。追悼式、合同慰霊祭には殉職した社員、物故社員の霊を敬い、社を挙げてその霊を弔うことで、結束を高め、社員全体に社業への意識を再認識させる意義がある。
通常、年に1回、春や秋のお彼岸の前後に行われる。
災害、事故などでの殉職の場合は、その周忌に合わせ事故、災害が起こった日の前後に行われる。なお、弔事の場合は若干の日程繰上げが可能である。
式典はそれぞれの物故者の宗教の違いなどから、なるべく宗教色を排除した形で行うのが通例である。
全国的規模のものでは、政府主催の全国戦没者追悼式があるが、一般の会社の場合その規模を小さくしたものだと考えればよい。
また、創立記念式典など、他の社の行事のなかで、物故社員慰霊の報告と黙とうを行うケースもある。その場合は、通例、式典の性格上、事前に幹部社員だけで追悼慰霊を済ませておき、当日は報告と黙とうだけを行う。

<< 事前準備 >>

(1)準備委員会の設置
例年の社内行事として催す場合には、年度初めにその他の重要行事と重ならないよう開催日を決定する。弔事の開催日は通例、土・日・祭日、友引の日は避ける。併せて準備委員会の活動開始時期を確定する。祭儀委員長は社長、実行委員長はある程度決定権のある部長クラスから選任するが、通常、総務部長が担当する。
災害、事故などでの突発的な実施の場合、殉職者の各葬儀の後、社主催の合同慰霊祭を行う形をとるため、準備委員会の迅速な設置が必要。式の規模などによっても違うが、会場の設定、遺族への手配などで社葬と同じ程度時間がかかると考えるべきである。年中行事、あるいは5年ごとなど定期的に行う場合にも、最低1か月前から準備を進める必要がある。

(2)規模、出席者の範囲等の決定
開催日時の決定の後、式典の意味合いにあわせて規模を決定する。出席者の範囲は、遺族、来賓、社内参加者の順に決める。出席者数の大枠を決めた後、開催場所の決定を行う。
会場の選択としては、自社近くのセレモニーホール、自社内の講堂や体育館、専門葬場などがあげられる。
また、簡単な式の場合には墓前で行うケースもある。

(3)スケジュール表の作成と業務担当
出席者数など式の規模が把握できた時点で、開催日までの準備スケジュールを作成する。
実際的には、葬祭業者など専門業者に依頼するほうが、迅速かつ効率的である。
社内での業務分担は、
・受付・案内係
・会場係
・遺族係
・駐車場係
・総務係
・司会・進行係
などに振り分ける。

(4)関係者への連絡等
式典の日程等の概要が決定した後、次のような関係者への通知を行う。
・遺族への案内
・来賓への案内
・社内への通知
案内状は告別式の案内と同じ形でよい。社内への通知に関しては、遺族への案内、来賓への案内に先立って社内報、社内通達で徹底を図り、社外からの問合せに対応できるようにする。




(5)予算設定のポイント
専門業者との打合せにより見積りを早めに設定する。それをもとに、リースするもの、社の備品として新たに購入すべきものなどを確定する。備品購入に際しては、購入指定店からの伝票購入に徹し、会計の効率化を図る。
設定に当たっては、遺族、来賓の交通費など、見積りとは別立ての予算項目に注意する。
なお、合同慰霊祭では、供花、供物、香典、玉串料などはもらわないのが通例である。
●ワンポイントアドバイス
服装
遺族、来賓、自社の幹部、式典担当係員、追悼の辞を述べる代表社員等は、正装が通例。一般社員などの参列者は平服で黒無地ネクタイ、喪章着用。
式典の時間
弔事は、一般的に午後に実施するものとされている。また、所要時間は、規模によって違うが、通常は1時間から1時間半程度である。したがって、午後1時から2時(あるいは2時半)までというのが常識的な線であろう。

<< 当日の運営 >>

(1)式次第
一般的な式次第は以下のようなものである。ここでは、これをもとにして順次説明していくことにする。
・開会の辞
・黙とう
・式辞
・追悼の辞
・献花または焼香
・閉会の辞

(2)進行・運営
イ.開会の辞
・司会・進行は、通常、総務課長などが行う。
・無宗教の祭儀として行う場合、司会者は用語に注意する。
(例)
司会者 「お待たせいたしました。ただいまより、○○株式会社第○回殉職社員合同慰霊祭を執り行います」
ロ.黙とう
・黙とうの指揮は部長職以上のものが執る。通常は、総務部長あるいは人事部長などが行う。
・黙とうの時間は1分間が適当である。
(例)
司会者 「それでは黙とうの指揮を総務部長にお執りいただきたいと思います。総務部長よろしくお願いいたします」
○○総務部長 「諸霊のご冥福を祈り1分間の黙とうをお願いいたします」
(1分間経過)
○○総務部長 「黙とうを終わります。ありがとうございました」
ハ.式辞
・式辞は主催者である当日の祭儀委員長が行う。通例では、その会社の社長が行う。
(例)
司会者 「それでは式辞といたしまして、社長からのご挨拶があります。社長、よろしくお願いいたします」
○○社長 「社長の○○でございます。本日は、みなさま方ご多忙の折、本慰霊祭にご出席いただきまして誠にありがとうございます。当社は創業以来35年、社員のみなさまのご努力、関係各位のお力添えをいただきまして、社業の発展を遂げてまいりました。しかし、わたくしどもが会社の歴史を振り返るとき、そこに尊い命の犠牲があったことを決して忘れてはならないと思います。研究室で、あるいは現場で常に第一線で活躍されてきた社員の方々の並々ならぬ努力と社業に対する果敢な取組みが現在の当社の隆盛を支えているといっても過言ではありません。
事故でお亡くなりになられた社員の方々のご冥福をお祈りするとともに、今後の事故の廃絶、そして社業のますますの発展をここに期したいと思います。それが、志なかばで命を亡くされた社員の方々の御霊に応えることだと思う次第であります。
以上簡単ではありますが、式辞に代えさせていただきます」
司会者 「社長の挨拶でございました。ありがとうございました」
ニ.追悼の辞
・追悼の辞は、式典の意味合いにあわせ、来賓が行う場合、社員代表が行う場合、遺族代表が行う場合がある。
・社内的な式の場合には、通常は、社員代表として、厚生課長など中堅社員が行うことが多い。
(例)
司会者 「それでは次に社員を代表いたしまして、○○厚生課長に追悼の辞をお願いしたいと思います」
○○厚生課長 「本日ここに殉職社員の合同慰霊祭が執り行われるに当たり、謹んで追悼の意を表します。諸霊は生前、各分野に、その能力を発揮され、社業の発展に多大な貢献をされてきました。当社のめざましい業績もいまは亡き諸先輩方のご尽力の賜物でありましょう。
また、ご遺族の皆様におかれましてはまだ悲しみ癒えぬ日々をお送りのことと思います。そのご心痛は察するにあまりあるものがありましょう。謹んでお悔み申し上げます。
諸先輩方をご顕彰いたしますとともにその陰で支えてこられた遺族の方々の多大なご苦労に深く敬意を表わす次第であります。後に残されたわれわれとしましては、諸先輩方の志を継ぎ、よりいっそうの社業の発展に努力する決意をここにお誓いするばかりです。
ここに諸霊のご冥福とご遺族各位のご健勝をお祈りいたしまして、哀悼の言葉といたします。平成○年○月○日 社員代表○○○○」
ホ.献花または焼香
・献花の花は、通常、白菊を使用。1輪ずつ祭壇に捧げ、合掌。
・献花、焼香の順番は、遺族の各家の喪主を筆頭に、遺族、遺族の親族、来賓、自社役員、社員の順で行う。
・献花の際には、奏楽のうちに呼名献花する場合、鎮魂の音楽を流す場合、殉職者の名前を読み上げる場合などがある。
(例)
司会者 (献花の場合)「それではここで、献花に移らせていただきます。参列者の皆様、白菊を1輪ずつお受け取りになり、祭壇に献花してくださいますようお願いいたします」
司会者 (焼香の場合)「それではここで、ご焼香に移らせていただきます。参列者の皆様、焼香台を3つ用意してございます。お近くの焼香台にお進みくださいますようお願いいたします」
ヘ.閉会の辞
(例)
司会者 「それではこれをもちまして、○○株式会社第○回殉職社員合同慰霊祭を終わらせていただきます。参列者の皆様、どうもありがとうございました」

(3)会場レイアウト
・祭壇など会場の設営は、葬儀に比べ簡略なものにする。祭壇には故人の写真や霊璽板などを飾り、その後ろに白菊などを飾る。
・合同慰霊の性格上、飾付けでは宗教色をなるべく排す。
・会社によって、黙とうの後に、僧侶による読経、神主による神事などを行う場合がある。
・事故、災害等の直後の場合は、黙とうの後、遭難者の名前を書いた芳名帳を祭壇に捧げる場合がある。
・一般社員の場合、会場に参加せず、業務中職場において黙とうなどを行うケースも考えられる。
会場レイアウトモデル


<< 後始末とフォローアップ >>

前述のとおり合同慰霊祭の場合、基本的には香典、供花、供物、玉串料などは辞退する。香典等を受け取った場合、遺族会に直ちに渡す。一度会社側の雑収入として処理をした場合、遺族への贈与の形になるので注意する。社葬の際のような会葬礼状は必要ないが、その祭儀の性格、規模等によって、参列者に礼状の送付を考慮する。
また式後、実施記録の作成をすることも必要。慰霊者に関する記録、祭儀委員長、実行委員長、各係等の氏名、式次第、必要経費の出納記録、終了後の反省会の記録などをまとめ、その概要を社内広報誌などで社員に告示する。

<< 支出費用の経理処理と税務取扱い >>

合同慰霊祭の費用は、税法上、一般的には会社の福利厚生費として損金に落とすことができる。が、同族会社の場合は非同族会社の場合とは異なり、種々の問題が出てくるケースがあるので注意する。
また、会社経費として計上する際には、取締役会の議事録をはじめ内部規則を事前に設定しておく必要がある。
ただし、会社の経営規模、その祭儀の必要性などの点で、妥当と認められる範囲においてのみ損金となるので注意する。慰霊祭の場合、税務上社葬とは取扱いが違うので、事前に税理士に相談する必要がある。
物故社員合同慰霊祭の運営チェックリスト

香典に関する知識
イ.表書き
香典は、通夜に参列したときか、葬儀の当日に持参すればよい。表書きは、宗教別に次のようにする。
・仏式の場合……「御香典」「御仏前」「御香料」
・神式の場合……「御神前」「御玉串料」「御神饌料」
・キリスト教……「御花料(プロテスタント)」「御ミサ料(カトリック)」
なお、「御霊前」は、宗教がわからないときに使える。
姓名を書く位置は、表書きの中央下段。肩書をつける場合は、名前の右上にやや小さく配する。中身の金額は裏面の左隅に、中包みをするときはその表に書く。水引きの色は、黒白もしくは銀1色が普通である。
ロ.水引きのかけ方
水引きの結び方には、蝶結びと詰切り(結切り)があるが、弔事では、将来2度とないようにという意味で、詰切りを用いる。
ハ.現金の包み方
中包みの折り方は、包みの隅に三角形が1つできるように折る。外包みは、表からみて折り込む側が左、開くほうが右になるように折る。
香典袋は、むき出しのまま持ち歩かず、不祝儀用の袱紗(ふくさ)に包む。袱紗がない場合は、地味な色のハンカチなどでもよい。
香典の包み方 


著者
橋口 寿人(経営評論家)