ビジネスわかったランド (会社行事)

定例行事

賀詞交換会
<< 賀詞交換会の目的 >>

「賀詞」とは、文字通り、祝いの言葉である。そして「交換会」とは、人々が寄り集まって賀詞を交換し、交流を深め合うことである。
「賀詞交換会」とは、祝事をともに寄り集まって楽しむ集会なので、いつ行われてもおかしくない集会だが、一般的には新年に行われる集会のことをいい、実際は名刺の交換会である。

(1)社内的な意味
社員同士が新年を祝い、賀詞交換会を行う場合もなくはないが、一般的にはむしろ得意先や関連企業など外部の人たちとの会合を賀詞交換会という。

(2)社外的な意味
社外関係者(得意先や関連企業の担当者など)を来賓として招いて行う賀詞交換会は、「新年名刺交換会」ともいわれる。祝宴を設けて、参会者が積極的に年始の挨拶を交わし、親睦を深める。

(3)ねらいと効果
年始めに得意先や関連企業などが、個別に新年の挨拶にくると、応対がうまくいかなかったり、時間が短いために非礼をしてしまうことにもなりかねない。そこで、関係者が一堂に会し、まとめて賀詞の交換を図ることにねらいがある。
大勢の人が一堂に集まり、賀詞交換会を行ったほうが、華やかさとにぎわいが出て、新年らしくてよい。また、短時間で、できるだけ多くの関係者と挨拶を交わしたり、話をすることができるので、効率的といえる。
その他の効果としては、いままで知合いではなかった人ともビジネスの話を交えながら会話をもつことができ、仕事上での新しい付合いを始めることも可能となることである。
以上の趣旨から、賀詞交換会のプログラムには、あまりアトラクションや余興を入れない。また、参加者が自由に動き回って名刺交換ができるように、立食パーティーの形態をとる場合が多い。

<< 事前準備 >>

賀詞交換会は、新年会とは違う。どちらかというと、同じ業種の連合会や、横のつながりを中心とした集会なので、まとめ役ともなる主催会社をはっきり決め、担当事務局を設けて準備を進めるとよい。
また、個別の会社が関係者を招待して行う場合は、総務部が中心となって準備を進めるのがよい。営業部や経理部などの他の部署も大いに協力すべきであるし、各部からそれぞれ担当者を決めて、準備委員会に参加させる。

(1)準備委員会の設置
まず主催会社、主催部署を決定する。
イ.当番制
関連業種間のグループや連合会の中で当番を決め、その順番に従って毎年持回り制にする。
ロ.中心企業制
関連業種間のグループや連合会の中での中心的な企業が担当する。
なお、自社内の賀詞交換会は、総務部が運営するのが通常である。主催会社、主催部署内で準備委員会を設置する。自社内での準備委員会には主催部署のみではなく、他の部署からも1名ずつ参加させると各部署に連絡が行き届く。

(2)内容の検討と決定
自社の内規や慣習を調べたうえで、検討し決定する。
イ.スケジュールの決定
自社のスケジュールや業界の慣例を調整しながら、日時を決定する。
●日程の決定は、早めに
新年1月は、とにかく忙しい。会社の新年会をはじめとして、種々のグループの新年会や賀詞交換会など「会」と名の付く催しが連日のように続く。そのため、年末ぎりぎりになって賀詞交換会の通知を送っても、予定がすでにふさがっていて多くの参加を望めないこともある。したがって、12月初旬には日程を決定し、通知や出欠確認の連絡をしておくほうが無難である。
●1月中旬をめどに決める
仕事始めの1月4日~7日あたりは避け、1月中旬に日時を設定する。1月下旬になると新年の気分も薄れ、座がしらけることもあり得る。
ロ.会場の決定・予約
自社内で開催する場合には、どのスペースを使うか、また、社外で開催する場合には、どこを借りるかを、参加者の人数を考慮に入れながら決定する。
●会社内でする場合
社内の大会議室などを会場とする場合でも、賀詞交換会以外の催しで大会議室を使うことのないよう、社内に予定表を配付し連絡をしておく。
●社外の会場を借りる場合
祝事の催しのため、できるだけ華やかで、なおかつ交通の便がよい場所を選ぶべきである。ホテルの宴会場や公の会館などにすると、飲み物や料理の手配の点からも便利である。
●社外の会場を使う場合は、早めに予約を入れる
スケジュールさえ決まれば、少しでも早く予約する。1月中の大安吉日というのは、日数が限られており、そのうえ、これらの日には新年会や結婚式などの祝事の予約が殺到するので、うっかりすると希望の会場が予約できないことにもなりかねないからである。
ハ.来賓の決定
・まず招待する範囲を決める……たとえば、社長のみか、取締役は何人までかなどの一定のレベルを決める。それに従って会社間で招待する範囲を統一し、ほぼ同じ範囲の招待客に絞る。
・通常の例……社長、役員、支社長、支店長などのトップグループのみに絞る場合が多い。
ニ.式次第の決定
運営内容を決めれば、それが式次第となる。例年使用しているものがあれば、内容を確認のうえ使用する。
ホ.予算の決定
どのくらいの規模で行うか、社内で実施するのか社外で実施するのか等により、予算を決める。
ヘ.スタッフの選定
受付係、会場係など、担当するスタッフを決定する。
ト.案内状の作成
チ.パーティー形式の決定
・立食形式か
・着席形式か
リ.料理・飲み物の決定
・料理は和食か洋食か中華か
・人数からみて、どのくらいの量が必要か
・飲み物はどのくらい用意すればよいか(アルコール類、ソフトドリンク)
ヌ.余興・アトラクションの内容と担当者決定
賀詞交換会は名刺交換が目的なので、アトラクションはあまり行われないが、新年なので、福引などは場を盛り上げることになり喜ばれる。
ル.必要な用具の決定
社内で行う場合は、準備委員会で何が必要かを細かく検討し、手配は年内に済ませておくとあわてなくてよい。
社外、たとえばホテルの宴会場などで行う場合は、会場の担当者に準備委員会で決定した内容を伝えておけば、万事マニュアルに沿って準備を整えてくれる。その点からいって、ホテルや会館を借りたほうが、準備の手間が省けるといえる。

(3)スケジュール表の作成と業務分担
イ.スケジュール表の作成
準備委員会で決まったスケジュールを一覧表にして、そのスケジュールを追って準備が進められているかを確認する。
スケジュール表モデル

ロ.役割分担
当日までに業務内容をピックアップし、分担を決める。
係としては、会場係、クローク係、案内係、受付係、宴会係、進行係、会計係、駐車場係、車両係などがある。
係分担表モデル


(4)予算設定のポイント
予算枠があらかじめ決められている場合は、その範囲内に抑えられるよう、検討する。必要項目をピックアップし、それぞれの数量と単価を細かく調べる。必ず参加者の人数を計算に入れながら予算を設定するのがポイント。

(5)関係者への連絡等とモデル案内文
イ.電話連絡は避ける
招待客となる相手に失礼となるので、事前の下打合せのときは別として、電話での連絡は避ける。
ロ.手紙・ハガキを用いる場合
手紙(封書)で賀詞交換会の連絡と日程、出欠の確認をする場合は、送り先を記入し、返信用のハガキを必ず同封して、返答を待つ。ハガキを用いる場合は、必ず往復ハガキにする。相手方より返答のない場合には、適当な期間をおいて電話し、出欠の確認をする。相手方が失念している場合があるからである。
ハ.招待状の発送
スケジュール、会場が決まり、出欠の確認が終わると、正式に招待状を発送する。ただし、場合によってはこの招待状の発送を略し、出欠の確認をもって通知とする場合もある。


<< 当日の運営 >>

当日は、スタッフは開会2時間前には会場に集合したほうがよい。ホテルの宴会場など社外の会場を使用する場合は、サービスが行き届いているので、会場の設営をする必要はないが、それを事前に点検する必要があるからである。
なお、社内の大会議場などで行う場合は、普段の状態から宴会の会場につくりかえなければならないので、相当の時間を要する。
当日の集合時刻、準備開始時刻、準備完了時刻、来賓到着時刻、賀詞交換会開始時刻、同終了時刻、後始末完了時刻、解散時刻というタイムテーブルは、書面にして担当者等に配付する。

(1)会次第の設定
イ.会次第
開会の挨拶、主催者代表の挨拶、来賓の挨拶、乾杯、名刺交換(懇親)、余興、手締めなどである。
ロ.全内容の所要時間
1時間半から2時間程度が適当である。

●ワンポイントアドバイス
手締めは、主催者代表の挨拶を行う者の社会的地位と比べて、次順位程度の者が行うのがよい。

(2)会、宴席の運営チェックリスト
イ.宴席は自由に動き回れるよう配慮する
賀詞交換会の目的は、名刺交換をして、初対面の者同士の交流を図り、またはすでに知合いである者同士の親睦を深めることである。それだけにあまりにも席がはっきり決められすぎていて動きにくかったり、会場が狭すぎたりすると、本来の目的が果たせなくなる。
ロ.会場を華やかにする
新年の祝事でもあるので、会場が暗くては場が盛り上がらない。晴着姿のコンパニオンを配置したり、新年らしい琴のBGMを流したりする演出の工夫も必要だ。
ハ.挨拶は、1人で長くならないように注意する
賀詞交換会は、1人あるいは特定の人の話を聞きにきたわけではない。挨拶は、せいぜい5分間、長くても8分以内に抑えてもらうよう、挨拶する人にはあらかじめ依頼しておく。

ニ.余興は手短かに
余興が次から次へと登場したり、時間が長すぎると参加者同士は十分な会話をすることができず、会の目的を果たせなくなる。ちょっと気分転換になる程度のものを用意する。
ホ.終了時間は厳守すること
社外で会場を借りている場合は、時間が決められており、それがオーバーすると追加料金を請求される場合もあるので注意する。続けたい場合は、それぞれ場所をかえて2次会に移行するように促す。
会場レイアウトと飾付けモデル(立食型)


<< 後始末とフォローアップ >>

催しが終わり、来賓が帰った後、主催者側には後始末という重要な仕事がある。以下の点をチェックしながら手早く進める。

(1)会場整理
イ.設営器具の確認
会のために設営した幕、机や演台などをはずしたり移動して、元どおりに戻す。ただし、ホテルなど社外の会場を借りた場合は、それらの義務はない。自分達で持参して設営したものだけ、数や破損の有無をチェックして持ち帰る。
ロ.忘れ物の確認
来賓の忘れ物は、発見した場所を明記して責任者がチェックする。持ち主が判明しないときは、賀詞交換会の報告書や参加者に行き渡る会報などで、忘れ物の知らせを出す。

(2)受付書類の整理
イ.芳名帳で出席者の確認をする。
ロ.受けた名刺を整理し、準備委員会の責任者に引き渡す。

(3)金銭処理
イ.会費を徴収した場合は、参加人数と会費が合致するかどうか集計チェックする。
ロ.会の運営上、出費をした場合は、領収証を取りまとめ、費用の精算をする。

<< 支出費用の経理処理と税務取扱い >>

支出費用は、すべて交際費となる。会費で運営した場合は、それぞれの企業の分担額が交際費となる。

著者
橋口 寿人(経営評論家)