ビジネスわかったランド (会社行事)

定例行事

忘年会
<< 忘年会の目的 >>

忘年会は、わが国ではもはや社会全体で恒例化されており、あえてその目的を問うまでもない。しかし、強いて考えるならば、恒例化された背景には次のような理由があると思われる。
イ.1年間の労をねぎらう
ロ.1年を振り返り反省する
ハ.1年の区切りをつけ、気持ちを刷新し、新年に備える
ニ.親睦を深める

<< 事前準備 >>

(1)準備委員会の設置
会社全体で行う大規模なものであれば準備委員会を設置するが、部課単位の小規模のものであれば幹事を選任することから始まる。
選任方法は各会社で慣例化されていると思われるが、持回りの方法、互選による方法等が考えられる。いずれの方法をとるにせよ、平等かつ民主的なものであることが望ましい。
また、この種の宴会は男性中心となる傾向にある。そこで、女性の少ない会社(部課)でも、女性の支持を得られる宴会にする必要がある。そのための方策として、女性にも幹事になってもらうことを考える。
なお、準備委員会の人数は参加予定者の人数の1割くらいまでが妥当である。

(2)内容の検討と決定
イ.忘年会の種類の検討
忘年会は参加者の範囲や会場、業務との関係などによっていろいろな方法がある。そのいずれを選択するのか、まず決定しなければならない。
考えられるものをあげると次のようになる。
・社内の人だけでやるのか、外部の人も招待するのか……外部の人を招く場合は営業政策的な色彩が強まり、労をねぎらったり、親睦を深めるための通常の忘年会とはかなり趣が違ってくる。
・会社全体でやるのか、部署別にやるのか……これにより、参加者数が異なるため、会場の選択等に違いが生ずる。
・会議室など自社の施設を利用するのか、料亭等の外部の施設を利用するのか……これにより、会場予約の要・不要、参加費の額が違ってくる。
・業務の一環として行うのか、業務とは離れた個人参加で行うのか……これによって、参加強制の度合い、費用負担(会社か個人か)などが異なる。
●ワンポイントアドバイス
参加者を増やすためには?
1年を振り返り、親睦を深めるという忘年会の趣旨からみて、対象者全員が参加できる形態を選ぶ必要がある。そのためには、費用の個人負担をできるだけ少なくする(できれば全額会社負担)こと、会の雰囲気を全員がなじみやすいものにすることが必要である。
ロ.具体的な細目の検討と決定
大筋が決まったら次に細目の検討と決定に移る。検討すべき事項はおおむね次のとおりである。
a.総予算の検討と決定
費用の全額を会社負担とすることが望ましい。会社の経理責任者と相談して、会社の負担し得る費用額から総予算額を決定する。
やむを得ず個人に負担させる場合には、大きな負担とならないように配慮しなければならない。寄付を募ることなども個人負担を軽減するための一方法であろう。また、自社の施設を利用したり、自社にきた歳暮品等を賞品にするなどの工夫も考えられる。
b.期日と時間の決定
期日は、仕事納めの日に大掃除に引き続いて行うという方法と、それとは別の日に行う方法が考えられる。前者が1年の労をねぎらうという忘年会の趣旨に最も合致するとはいえ、あまり年が押し詰まってからでは、参加者の私生活に支障をきたすことにもなりかねない。そこで、そのようなことのない日を選択する。また、宴会後は疲労が残るものであるから、翌日が休日となるような日を選択する。時間は、業務終了の時刻と会場への移動時間を考慮して決定する。
c.会場の種類と具体的会場の検討と決定
会場の種類とは、和室、洋室、立食パーティー形式の会場等のうちいずれにするかということである。この決定に基づき、具体的な会場を決定する。この場合、会場への移動が全員にとってできるだけ容易であるような場所を選定することが必要である。
また、2次会の場所もあらかじめ用意しておく。2次会は自由参加の度合いが強くなるので、費用は全額個人もち、会社が負担するとしても、その割合は少なくてよい。
d.宴会の形式の検討と決定
会次第の検討と決定ということである。忘年会の趣旨から考えて、あまり堅苦しいものはどうかと思われるが、それでも、人数が多くなる場合には秩序を保つため、最低限の式次第を決めておくことが必要となる。

(3)スケジュール表の作成と業務分担
宴会をスムーズに実施するためには、様々な業務が必要となる。これらを列挙すると、おおむね次のとおりである。
・幹事会議を開催して、検討と決定をする
・決定事項を関係者に連絡する
・会場を予約する
・出欠の回答を回収する
・会場に確定人数を連絡する
・挨拶をする人、乾杯の音頭をとる人と打ち合わせる
・余興の状況について予測し、対策をたてる
これらを計画的かつ能率よく処理していくためには、業務分担とスケジュールを一覧表にしておくと便利である。
スケジュール表モデル



(4)予算設定のポイントと予算表
宴会においては、飲み物等が予定を超えることが多いから、予備費等を設け余裕をもった予算設定をしておくこと。そのうえで店の担当者とよく打ち合わせて、予備費の範囲内で、どの程度追加できるのかをあらかじめつかんでおく必要がある。
そして、収入と支出の関係を明確に把握し、かつ支出の書き漏らしがないように表を作成しておくと便利である。

(5)関係者への連絡等と案内文
当日になってあわてることがないように、連絡などはできるだけ密にしておくことが必要である。とくに、会場となった店に対しては、宴会当日の2、3日前に、もう一度確認しておくくらいの慎重さが必要である。
また、すでに述べたことであるが、宴会で挨拶する者、乾杯の音頭をとる者、中締めをする者などにはその旨を前もって連絡しておかなければならない。
さらに、余興をすることがあらかじめわかっている者に対しては、重ねて確認しておく。予定日までに出欠の回答がない者に対しては、忘れている場合もあるから、個別に問い合わせる。

<< 当日の運営 >>

(1)宴席の席順
社外の会場を使う場合、当日の宴席の配置などを会場側任せにすることが多い。しかし、幹事側としては要望どおりになっているかをチェックするとともに、席順に気を配らなければならない。
この場合、親睦を図るという忘年会の趣旨から、男同士、女同士、その他特定のグループ同士のみが固まってしまうというようなことがないようにしたい。そのために、上司の席だけはあらかじめ決めておいて、他は男女が交互になるように抽選で決めるというような方法をとるのもおもしろい。

(2)当日の会次第
忘年会会次第モデルは、次のとおり。
・開宴の挨拶(司会)
・社長挨拶
・乾杯(専務等ナンバー2の者)
・飲食
・余興
・中締め(乾杯と同格の者)
・閉宴の挨拶(司会)
・2次会の連絡(幹事)

(3)宴会の運営とチェックリスト
忘年会は1年の締めくくりであるから、幹事は誰もが楽しめる、和やかな雰囲気づくりに配慮しなければならない。
この点を含め、宴会運営上のチェック項目は、おおむね以下のとおりである。
□上司に挨拶等を長々とさせない(あらかじめ時間を決めてお願いしておく)
□幹事も挨拶は短く
□余興は決して強制しないこと
□孤立している人に配慮する(仕事から離れた話題をもちかけ、何かと気分を盛りたてる等)
□予定時間内に終わるようにする
幹事は挨拶するに当たって、次のことに注意する。
イ.飲食を前に長々としゃべらない
とくに上司が多少営業成績とか業務内容に関する話をするだろうから、幹事たるもの、会社内のことなど言う必要はない。それより、この店をなぜ忘年会の会場に選んだのかとか、「この店は○○がうまいから後で楽しみに」とでも言っておくほうがずっと気がきいていてスマートである。
ロ.差入れの紹介
取引先から差入れその他のお祝いの物品が届けられた場合は、幹事が挨拶のなかで、それに触れておく。

<< 後始末とフォローアップ >>

(1)後片付け
自社内での忘年会であればもちろん後片付けは自分たちでしなければならないが、社外の会場を利用した場合でも、あまりにも汚し放題にしたまま帰ったのでは、常識、ひいては会社の品位を疑われる。したがって、適度な片付けは必要である。
アルコールが入っているため、忘れ物や、靴、傘の取違えなども生じやすい。幹事はこの点にも配慮したい。

(2)欠席者への対応
欠席した事情にもよるが、やむを得ない事情があった場合には、会費は返すのが筋であろう。

<< 支出費用の経理処理と税務取扱い >>

イ.忘年会の費用については、従業員に対して社内において供与される通常の飲食費を会社が負担した場合は福利厚生費となる。
ロ.これらの社内行事のあと、一部の者のみが社外において宴会を行った費用を会社が負担した場合は、その宴会の費用は交際費となる。
ハ.主として取引先等の社員を招待して、宴会をした費用を会社が支出した場合は、その頭割分は接待・交際費となる。

著者
橋口 寿人(経営評論家)