ビジネスわかったランド (会社行事)

定例行事

役員会
<< 役員会の目的 >>

(1)役員会とは
会社における役員会とは、一般に取締役会のことである。取締役会は、株式会社においては必要な機関であり、法律上の区別ではないが、定時取締役会と臨時取締役会とがある。
なお、有限会社においては、取締役会の制度は法律上必要とされていない。しかし、決議の慎重を期すために、事実上取締役会を設けることは可能であり、その場合には以下の説明を適宜当てはめればよい。
イ.定時取締役会
定時取締役会とは、あらかじめ一定の時期に開催されることが予定されている取締役会である。取締役は、3か月に1回以上、業務の執行状況を取締役会に報告しなければならないから、少なくとも、年に4回の定時取締役会を開催する必要がある。多くの会社では、毎月1回決められた日時(たとえば毎月第1火曜日というように)に定時取締役会を開催している。
ロ.臨時取締役会 
臨時取締役会とは、必要に応じて臨時に開催されるものであり、招集権者によって行われるものと、他の取締役が法定の要件のもとに招集するものとがある。この臨時取締役会は、会社を取り巻く環境の変化に即座に応じることができるように開催されるものである。
このように、定時取締役会と臨時取締役会とでは、その開催される場合を異にするが、その招集の手続き、権限、構成、決議事項等は同一である。
したがって、以下では両者を一括して説明することとする。

(2)代表取締役と取締役会
従来、株主総会の権限は、万能で絶対的なものであった。しかし、個々の株主はこれらの権限を十分に行使しなかったため、法は、その権限を株主にとってとくに重要で基本的なものに限定した。その結果、従来、株主総会の権限とされていたものは、業務執行機関の権限に移されることになった。
そこで、この権限ができるだけ慎重かつ適正に行使されるようにするため、法は、取締役会と代表取締役という2つの機関に分化させた。
すなわち、業務執行に関する会社の意思を決定するのに、取締役相互の公正な協議によって真に妥当な結論に到達すべきことを期待したのである。そして、こうして決定された業務執行に関する会社の意思を、代表取締役が具体的に実行するのである。
取締役会には代表取締役の選任・解任権があり、これによって代表取締役を監督する。

<< 役員会の権限と決議事項のチェックポイント >>

(1)役員会の権限
取締役会は取締役の全員によって構成され、その決議によって業務執行に関する会社の意思を決定する必要機関である。その権限は、会社の基礎的な事項、その他法令または定款によって株主総会の権限とされている事項には及ばない。しかし、取締役会で決定すべきものと法律上決められている事項は、必ず取締役会で決定しなければならず、定款をもってしても、その決定を代表取締役に委ねることはできない。
このように、取締役会の権限とされている事項は、法により、かなり厳格に規定されているが、前述したように、定款に定めることにより株主総会の権限として留保することができる。
その意味では、たとえ取締役会の権限が増大したとしても、株主総会の最高機関性は否定されないのである。 

(2)決議事項のチェックポイント
(商法により取締役会の権限とされているもの)
イ.株式譲渡の承認、不承認のときの相手方の指定
ロ.額面株式・無額面株式の転換
ハ.株主総会の招集
ニ.多額の借財
ホ.重要財産の処分・譲受
ヘ.支配人その他の重要な使用人の選任・解任
ト.支店その他の重要な組織の設置・変更・廃止
チ.代表取締役の選任・解任および共同代表の決定
リ.取締役の競業取引の承認および介入権の行使
ヌ.会社と取締役の利益相反取引の承認
ル.新株の発行
ヲ.計算書類等の承認
ワ.法定準備金の資本組入および株式の無償交付
カ.券面額を超える資本組入額による株式の無償交付
ヨ.株式の分割
タ.中間配当
レ.社債の発行
ソ.転換社債の発行
ツ.新株引受権付社債の発行
ネ.上記以外の重要な業務執行
(商法特例法により取締役会の権限とされているもの)
イ.資本金1億円以下の株式会社と取締役間の訴訟における会社代表者の決定
ロ.資本金5億円以上または負債の合計金額が200億円以上の会社における決算の確定

<< 役員会の招集手続き >>

(1)招集権者の招集決定
招集権は原則として各取締役が有する。定款または取締役会の決議によって、特定の取締役(たとえば取締役社長)を招集権者と定めることはできるが、たとえこのような定めがあっても、他の取締役は一定の要件のもとに、取締役会を招集することができる。
また、監査役には、取締役が不正行為をした場合等には、取締役会の招集を請求することが認められている。

(2)招集通知
招集通知は、会日の1週間前に各取締役(資本金1億円超の企業は監査役にも)に発する必要がある。
ここで1週間というのは、会日と招集通知を発した翌日との間の期間が1週間なければならないということである。
したがって、たとえば3月15日に取締役会を開催するのであれば3月7日までに招集の通知を発しなければならない。この期間は定款で短縮することができ、実際多くの会社ではこれを短縮している。

(3)通知の方法
招集通知の方法については何ら制限がないから、必ずしも書面で行う必要はなく口頭によることもできる。しかし、口頭によった場合には、後日招集の通知が行われたか否かが問題となったときに、これを証明することが困難であるから、後日に証拠を残すという点からいえば、書面による通知をしておくことが望ましい。
なお、招集通知は、各取締役および監査役が取締役会に出席する機会を確保するために行うものであるから、あらかじめ全員が同意すれば招集手続きを省略することができる。
したがって、取締役および監査役の全員の同意で定めた定例日に取締役会を開催する場合(たとえば毎月第1月曜日に、午前10時より本社会議室において取締役会を開催する旨の定めがある場合)には、いちいち招集手続きをする必要はない。

(4)招集通知の記載事項
招集通知には、取締役会開催の日時、場所を記載する必要があるが、議題については記載を要しない。業務執行に関する諸般の事項が付議されることは、当然予期されるからである。
ただし、議題を記載した場合には、通常の業務執行に関する事項を除き、記載されないものを決議することはできない。


<< 役員会の決議の仕方と議事の進め方 >>

取締役会の議事は議長によって進められる。取締役会の議長は、通常、定款または取締役会規則によって定められているが、定めのない場合には最初に議長を選出することになる。

(1)決議の仕方
取締役会の決議は、取締役会の過半数が出席し、その出席取締役の過半数でするのが原則であるが、定款によりこの要件を加重することができる。加重とは、「取締役の過半数が出席し取締役の総数の過半数をもって決する」というような場合である。ただし、軽減は許されない。
各取締役には1人1個の議決権が認められており、個人的信頼に基づき選任された者であるから、代理人を出席させることはできない。
また、書面、電話による議決権の行使も許されず、取締役会を開催しないで単に書面による持回り決議も認められていない。
ところで、決議の公正を期すため、特別の利害関係を有する取締役は、議決権を行使することができない。決議について特別の利害関係を有するか否かは、具体的な事実ごとに判断されることになる。判例によれば、代表取締役の候補となっている取締役はその選任決議について特別の利害関係人に当たらないが、代表取締役の解任決議のときにはその代表取締役は特別利害関係人に当たり、その解任決議に参加することはできないとされている。
取締役会がこれらの要件に反して決議がなされた場合において、その決議に基づいて行われた代表取締役の行為は有効かという問題がある。取締役会の決議の瑕疵(かし)については、株主総会のように決議取消しの制度がない。したがって、取締役会の招集や決議の方法に暇疵があるときには、一般原則に戻りその決議は無効である。そして、判例によれば、その暇疵が決議の結果に影響を及ぼさないと認めるべき特段の事情がない限り、代表取締役の行為も無効になるとされている。

(2)議事の進め方の具体例
担当者 「それでは、これより○○電気株式会社の6月度定例取締役会を開催いたします。当社の取締役5名のところ、本日は取締役5名の方々の出席でございます。なお、甲野一郎監査役も出席されています」
議長 「定款の定めにより、私が議長の役を務めさせていただきます。ただいま担当者が報告いたしましたように、議案の決議に必要な定足数以上の取締役の出席がありましたので、本日の取締役会は適法かつ有効に成立いたしました。
それではこれより、議案の審議に入りたいと存じます。
第1号議案について、担当の山川三郎常務取締役より提案理由の説明をお願いいたします」
常務取締役 「それでは、第1号議案についてご説明いたします。これは… (中略)説明は以上でございますが、何かご質問はございませんか」
議長 「それでは、決議に入ります。第1号議案について、賛成の方の挙手を求めます」
取締役一同 「賛成」
(挙手)
議長 「賛成多数と認めます。よって、第1号議案は原案のとおり可決承認いたしました。次に、第2号議案の審議に入ります」
議長 「以上により、付議されたすべての議案の審議は終了いたしましたので、閉会とさせていただきます。本日はどうもありがとうございました」

<< 取締役会議事録の作成 >>

取締役会の議事については、「取締役会議事録」を作成しなければならない。議事録は、取締役会の議長が作成するのが一般的であるが、代表取締役を作成義務者とする見解もある。
議事録には、議事の経過の要領およびその結果を記載し、出席した取締役および監査役が署名または記名捺印する。捺印する印鑑には制限がなく認印でもよいが、たとえば新代表取締役を選任した場合の議事録のように、商業登記との関係で実印が必要とされる場合がある。
ここで議事の経過の要領とは、発言、討議の内容をすべて詳細に記載する必要はなく、議事の進行を簡易に示したもので十分であり、取締役会の開催の日時、場所、取締役総数、出席取締役および出席監査役、議長、開会時刻、定足数、付議事項の内容、審議の内容、決議の方法、閉会時刻等をいう。また、結果とは、付議した事項の議決の結果、可決されたのか否かということである。取締役および監査役の署名は、議決した事項についてその責任を明確にするために行われる。
議事録の記載は、議事の経過および結果について一応の証拠力をもつが、反証をあげて覆すことも可能である。
なお、議事録に記載すべき事項を記載しなかったり、不実の記載をしたときは、代表取締役は100万円以下の過料に処せられる。
議事録は、10年間会社の本店に備え置くことが義務づけられている。議事録は、裁判所の許可を得て、閲覧・謄写することができる。ただし、株主の場合は権利行使のために必要があるとき、債権者の場合は取締役、監査役の責任追及のために必要があるときに限る。


著者
橋口 寿人(経営評論家)